【エリザベス女王杯】落馬骨折一緒に乗り越えシンリョクカと木幡初也騎手初G1だ

精神面も成長して大一番に挑むシンリョクカ

◆第49回エリザベス女王杯・G1(11月10日、京都競馬場・芝2200メートル)=5日、美浦トレセン

 第49回エリザベス女王杯・G1にシンリョクカとのコンビで挑む木幡初也騎手(29)=美浦・竹内厩舎=は、前走の新潟記念で人馬ともに初タイトルを獲得。「勝つことが恩返し」とオーナーや竹内調教師への感謝を胸に、今度はG1初制覇をつかみに行く。

 必要以上に気負わないそぶりが、かえって胸に秘めた覚悟をにじませる。前走の新潟記念でシンリョクカと重賞初勝利を果たした木幡初は、デビュー11年目でG1初制覇に手が届くところまで来た。「新潟記念以上に勝つことが恩返しだと思っています。自分のリズムの競馬をさせてあげたい。全然、ノーチャンスではないと思っています」と、物静かな語り口でも言葉は熱を帯びている。

 人馬ともに初タイトルとなった前走は、牡馬相手に好位2番手から根性を発揮して押し切り、鼻差の着差以上に強い内容だった。2走前の福島牝馬Sでは、転倒し落馬競走中止。馬はキ甲、木幡初は右腕を骨折した。それでも、立て直した前走の中間ではいつもより落ち着きがあり、確かな成長の証しを見せた。「精神的な成長が一番かなと思います。レースでも調教でも安定感が増してきた。体も大人びて、ちゃんとお姉さんになったかなという感じ」と、手応えをつかんでいる。

 多くの縁に導かれて、この舞台にたどり着いた。21年6月から今の竹内厩舎に所属したきっかけは、父の初広さんが騎手時代からお世話になっていた鈴木芳夫オーナーが愛馬を預託していたことからだった。レースで乗る以外に調教も手伝うようになり、竹内調教師からのオファーを喜んで快諾した。家族ぐるみで付き合いのあった鈴木オーナーは22年12月に亡くなったが、「僕が生まれた時から孫のようにかわいがってもらっていて、そこからが始まりなので。重賞を勝ったところを芳夫さんにも見てもらいたかった。本音を言えば」と、恩人への感謝を胸に刻む。

 シンリョクカの由井健太郎オーナーとも同じく信頼関係を築き、今では自厩舎以外の愛馬のオファーももらう関係となった。「乗せ続けてくれることに感謝しかないですし、その恩に応えたいなと常日頃思っています。竹内先生やスタッフの人たちのためにも頑張りたい」。22年の阪神JFではリバティアイランドの2着に大健闘も悔しさが残った。今度こそ“忘れ物”を取りに行く。(坂本 達洋)

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