植田辰哉氏、バレー男子はサーブレシーブ強み 52年ぶり五輪メダルへコンディショニングがカギ

必死のレシーブを見せる山本(C)volleyballworld.com

◆バレーボール ▽ネーションズリーグ男子決勝 日本 1(23―25、25―18、23―25、23―25)3 フランス(30日、ポーランド・ウッチ)

 初の決勝戦に挑んだ日本は、2021年東京五輪金メダルのフランスに1―3で敗れ、初優勝はならなかった。2位は昨年の3位を上回る最高順位で、主要国際大会では1977年W杯以来47年ぶり。主将の石川祐希(28)=ペルージャ=がチーム最多17得点でけん引。26日の開幕まで1か月を切ったパリ五輪で、72年ミュンヘン大会金メダル以来となるメダル獲得への期待が高まる好成績となった。

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 男子は「メダル」というワードが夢じゃなくて、近くに来ているな、という実感がある。石川が主将としてチームを鼓舞し、盛り上げていくムードにみんながぐいぐい引っ張られ、チーム力がさらに上がってきている。

 このネーションズリーグ(NL)を通して、パリ五輪代表選手選考に注目していたが、リベロの山本と小川智大は非常にレベルの高い競争の末、最終的に山本が選ばれた。山本は決勝のフランス戦では、相当強いジャンピングサーブに対し、フライングレシーブでもきっちりと、セッターにいいパスを返していた。これが、セッターを大きく動かしてしまうパスになってしまうと、次の攻撃に移りにくくなり、ブロックされる可能性も高くなる。山本以外にも日本は、サーブレシーブが参加チームで一番良かったと思うし、それが躍進の原動力にもなっている。

 大きな収穫となったのは大塚だ。3年ほど前は、サーブレシーブに課題があると思っていたが、準決勝のスロベニア戦でも、崩れることなく、安定していた。さらに、攻撃力も上がってきている。石川の影響を受け、急成長したように見える。サーブレシーブが悪かったら、ブラン監督も今後の起用に悩んだと思う。だが、その心配はいらなかった。逆に、決勝大会を欠場した高橋藍とタイプが違い、選手層が厚くなった形だ。大きなプラス材料だ。

 さらに高橋健のブロックが、世界レベルに上がってきた。フランス戦でも相当いいタイミングで相手のスパイクを止めているし、高さも世界に比べて全然劣っていない。両サイドへの動きも速いし、ブロックを完成させるのも速い。日本が弱いと言われてきたミドルでのレベルアップは心強い。

 チーム力が向上し、ほぼ完成したとも言える日本代表が、五輪本番に向けていかにコンディショニングを持っていくかが、今後のカギとなる。私が92年バルセロナ五輪に出場した時は、大会1か月前からフランスのモンペリエに滞在し、時差調整や体調を整え、非常にいい形で試合に臨めた。

 NLというひとつの山を越えて、五輪という山に向けて、いい状態を作っていくのは、かなり困難を伴うと思うが、みんなの力で乗り越えてほしい。五輪は独特なムードがある。1次リーグで対戦する米国、ドイツ、アルゼンチンも力以上のものを出してくるかもしれない。会場もアウエー状態かもしれない。東京五輪とは違う。早くその環境にアジャストし、うまく初戦に入っていきたい。そういう意味では、ブラン監督の地元、フランスで五輪が行われるというのは大きいと思う。(08年北京五輪男子代表監督・植田辰哉

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