池江璃花子 闘病生活から1年経って感じていたこと「チームメイトから『退院1周年おめでとう』というメッセージが。本当にここまでよく戻ってきた」
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【書影】大病から5年。決して平坦ではなかったパリまでの道『もう一度、泳ぐ。』(著:池江 璃花子)
“一緒にパリ五輪に行きたい”
リオ五輪の400mリレーに一緒に出場した松本弥生さんと食事する機会がありました。
弥生さんとは10歳も離れていますが、可愛がってもらっています。
2年前、弥生さんが2年ぶりに競技復帰する時には、私に初めて相談してくれ、弥生さんもそんな気持ちで頑張るなら、私も4継で決勝に残ってメダルを獲るという目標を掲げて頑張ろう、という気持ちにさせてもらったんです。
そして自分も100m自由形の女子を強くするために引っ張っていかなくちゃいけないと思いました。
その直後に病気が判明し、目標は変わってしまいましたが、この日は弥生さんに「一緒にパリ五輪に行きたいから、そこまで頑張って」と伝えました。
弥生さんは、東京五輪に私と一緒に出たいようでしたが、五輪に出るのは簡単ではありません。私も段階を踏んでいかないとなりません。
10月のインカレの後、初めてピアスを開けました。本当は高校の卒業式の日に開ける予定だったんですが、病気になってしまい、開けられなくなってしまいました。ピアスもたくさん買ってあったんです。
移植から1年経ったので先生に相談して、開けてもいいよと言われた時は嬉しかった。先日、セカンドピアスを買いに行きました。左右別々ですごく可愛いものを見つけました。
クリスチャン・リアリーファノ選手と対談
ラグビーオーストラリア代表のクリスチャン・リアリーファノ選手と対談しました。2016年に私と同じ白血病になり、その後復帰し2019年のW杯にも出場した方です。
アスリートはやはり闘病においても、メンタルは一般の人に比べると強いほうなんだと初めて分かりました。お互いアスリートとして病気の時に思っていたことは一緒でした。
リアリーファノ選手は、今もまだ病気のことを気にしながらプレーしているそうです。私も、病気はもう過去のこと、と思っていたけど、身体のことを気にするよう心掛けないといけません。
退院1周年
11月下旬から、新潟県長岡で6日間の強化合宿がありました。強度は変えずに距離を泳ぐ練習です。
退院後初めて、一度だけ長水路で5000mにチャレンジしました。次の日、筋肉痛になりました。
12月5日0時0分に、チームメイトから「退院1周年おめでとう」というメッセージが次から次へと届きました。
私が数日前コーチに「もうすぐ1年なんですよ」と言っていたのを聞いていたのかもしれません。嬉しかった。ありがとう!
1年前には想像できない自分が今います。退院してからも2㎏体重が減りました。食べてもすべて戻してしまうし、「生きていくのに食べる行為は必要なのか」と思うほどでした。
去年の12月下旬に陸上で体を動かし始めた時もまだ体調は安定していなかったんです。本当にここまでよく戻ってきた。自分を褒めたいです。
定期健診で先生からは「特になし」
12月7日に、定期検診で病院に行きました。いつも体調が良すぎて私から報告することはありません。先生からも「特になし」とのことでした。
次の試合が1月10日の東京都新春競技会に決まりました。短水路(25m)の100m自由形に出場します。インカレの後、そのための練習はしてきていますが、緊張します。でも不安はありません。
冬は強化期間。12月19日から合宿がありました。自分の限界を突破する練習をしています。追い込んで、疲れたら少し休んでまた追い込む。自分を甘やかしてばかりでは成長しません。
来年の目標は、50m自由形のランキングで1番になること。1位奪還する!
※本稿は、『もう一度、泳ぐ。』(文藝春秋)の一部を再編集したものです
09/05 12:30
婦人公論.jp