結婚を機に、縁もゆかりもない大阪へ来て30年。はじめはきつく感じていた関西弁も、いつの間にか心地よく。今では立派な《大阪のおばちゃん》に

「今のあなたは大阪の水と空気でできているんだね」と言われて…(写真はイメージ。写真提供:photoAC)
時事問題から身のまわりのこと、『婦人公論』本誌記事への感想など、愛読者からのお手紙を紹介する「読者のひろば」。たくさんの記事が掲載される婦人公論のなかでも、人気の高いコーナーの一つです。今回ご紹介するのは大阪府の70代の方からのお便り。古い友人から、「今のあなたは大阪の水と空気でできているんだね」と言われて嬉しくなったそうで――。

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大阪のおばちゃんとして

東京で一時期生活をともにした古い友人がいる。彼女が京都に引っ越してきて、大阪のわが家を訪れた。

「京都の電車は静かだけれど、大阪に近づくにつれてだんだん賑やかになる。みんな楽しそうにしゃべっているよね」と言うので、私はこう返した。

「大阪は賑やかだよ。特に大阪のおばちゃんは、はっきりものを言うし芯が強い。こっちにきて30年、私も大阪のおばちゃんになれていたらいいな」。

すると彼女は、「今のあなたは大阪の水と空気でできているんだね」と、嬉しいことを言ってくれた。

自分でもすっかり大阪に根付いたなと思う。日常会話で話のオチを考えるようになったり、面白いことを日々の生活のなかに探したりしている自分がいる。

地元から上京して約20年間東京で暮らし、結婚を機に、縁もゆかりもない大阪へ越してきた。東京と大阪はよく正反対の土地柄として比較されるし、溶け込めるのか最初は不安だらけ。

しかし、お節介で人懐っこい隣人たちに囲まれ、次第に心がほぐれていったのだ。はじめは少しきつく感じていた大阪のことばも、いつの間にか心地よく聞こえるようになった。

時々通りかかるお地蔵さんの脇に、素敵な立札がある。

「しゃあない/しゃあないやんかあ/ほな/お大師さんに本気ですがり/みすてへんで」。

初めて見つけたとき、いかにも大阪らしいおかしみにグッときて、思わず笑ってしまった。力の抜け具合がちょうどよく、心にストンと落ちる。

私の第3の故郷であり、終の棲家となるであろう大阪。この地を愛し、その面白さを体現する大阪のおばちゃんたちとともに、日々奮闘中である。


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