最終トライまで大混戦と逆転に次ぐ逆転劇でパリオリンピック日本代表が決定「オリンピック予選シリーズ(OQS)」ブダペスト大会 女子スケートボードストリート種目

パリオリンピック予選大会最終戦となる「オリンピック予選シリーズ(OQS)」2戦目のブダペスト大会のスケートボード・ストリート種目の女子決勝が、大会最終日となる6月23日(日)にハンガリー・ブダペストにて開催された。

女子決勝はチェンシー・チー (中国)、中山楓奈、 ペイジ・ハイン (アメリカ合衆国)、吉沢恋、赤間凛音、伊藤美優、織田夢海、クロエ・コベル (オーストラリア)という顔ぶれに。

そして何より今大会の注目は大混戦となっている日本代表選手によるパリオリンピック出場権争いだ。今大会で決勝進出したことにより赤間がパリオリンピック出場内定を決めたことから、残り2枠を5名で争うこととなった。吉沢が一歩有利な状況だが決勝の順位次第では入れ替わる可能性はまだ十分にある。

そんな決勝は最後のトライまで順位とオリンピック出場権が入れ替わる歴史的な大混戦となった。

大会レポート

【ラン1本目】

現時点で、代表権争いにて日本人3番手につける中山楓奈は「フロントサイドクルックドグラインド」をビッグハバレッジで決めてランをスタート。「ヒールフリップフロントサイドボードスライド」、「バックサイドテールスライド」と繋いでいき「バンクトゥレールバックサイドリップスライド」のフルメイクで83.56ptのハイスコアをマークし後続にプレッシャーをかけた。

中山楓奈のライディング
Photo: OIS/Kieran Cleeves. Handout image supplied by OIS/IOC

続く吉沢恋も「バックサイドスミスグラインド」、「ビッグスピンフロントサイドボードスライド」など自身が得意とするトリックをしっかり繋ぎ、フルメイクで73.25ptをマーク。

逆転出場には優勝することが必要な伊藤美優もアールでの「フロントサイドテールスライド」、「バックサイドテールスライド」、高さのある「キックフリップ」や「バックサイドリップスライド」など力強いライディングでフルメイクして75.08ptとした。

また中山を追う織田夢海も「キックフリップフロントサイドボードスライド」といきなり高難易度トリックでスタートすると「バックサイドクルックドグラインド」、「バックサイドテールスライド」と繋ぎ、ラストトリックの「バックサイド5-0グラインド」までフルメイクすると中山を上回る85.43ptをマークし暫定首位に立った。

織田夢海のライディング
Photo: OIS/Kieran Cleeves. Handout image supplied by OIS/IOC

【ラン2本目】

スケートボード歴わずか約3年で世界トップ争いの一員となっている中国のチェンシーは「バックサイド5-0」、「フロントサイドフィーブルグラインド」、ダイナミックな「キックフリップメロングラブ」などを決めて、1本目のミスをリカバリーし72.50ptをマーク。
一方で、なんとか織田を上回ってトリックスセクションに臨みたい中山は「ヒールフリップバックサイドテールスライド」にアップデートを試みるも決めきれずスコアを伸ばせないでいた。

また有利とはいえ後続の猛追を振り切りたい吉沢はラストトリックを「バックサイドノーズスライドビッグスピンアウト」にアップデートすることに成功しスコアを大きく伸ばし84.42ptと暫定2位につけた。

吉沢恋のライディング

ランセクションを終えて、暫定首位は織田、吉沢、中山と続く形でトリックスセクションへ。なお、現状の順位だと織田と吉沢が出場権獲得できる状態だ。

【トリックス1本目】

中山は自身の代名詞的トリックである「フロントサイドクルックドグラインド」をビッグハンドレールで決め83.22ptとハイスコアをマーク。続くアメリカのペイジ・ハインは得意の逆スタンス「スイッチフロントサイドボードスライド」をビッグハンドレールで決め87.39ptをマークした。

2本目のランで流れに乗った吉沢は「キックフリップフロントサイドボードスライド」をビッグハンドレールで成功し88.16ptと非常に有利なポジションを押さえると、その後の伊藤は準決勝の時にハンドレールで決めた「フロントサイドブラントスライド」をハバレッジで決め87.19ptをマークした。

中山のプレッシャーを跳ね除けたい織田は「バックサイドオーバークルックドグラインド」をビッグハンドレールで挑むもミスしてしまいスコアを残せず苦しい状況に。

世界女王経験者でオーストラリアのクロエ・コベルは得意の「フロントサイド50-50グラインドキックフリップアウト」をハンドレールにて一発成功し88.06ptのハイスコアをマークした。

この時点ではまだフルマークではないが、この時点では吉沢と中山が出場圏内に入れ替わる。

クロエ・コベル
Photo: OIS/Kieran Cleeves. Handout image supplied by OIS/IOC

【トリックス2本目】

トップバッターのチェンシーはビッグステアで「キックフリップメロングラブ」に成功し86.28ptのハイスコアをマーク。 一方で早い段階でスコアをフルメイクし、精神的にも有利に運びたい中山だったが「ヒールフリップバックサイドリップスライド」をビッグハンドレールで狙うも痛恨のミス。

一気に勝負を決めたい吉沢は「フロントサイドハリケーングラインド」をビッグハンドレールで成功させると、89.75ptとスコアを合計得点を伸ばし一歩リード。すでにパリオリンピック出場を決めている赤間は「フロントサイドフィーブルグラインドフロントサイド180アウト」の高難易度トリックで92.10ptとこの時点でのハイエストスコアをマーク。

1本目を早い段階でカバーしたい織田は「バックサイドオーバークルックドグラインド」をビッグハンドレールで見事メイクしリカバリー。87.28ptとこの時点では中山を上回ることに成功し代表権争い状況としてはイーブンに戻した。

【トリックス3本目】

勝負所の3本目は全ライダーがミスしスコアマークはならず、状況はキープしたままいよいよ終盤戦へ。

【トリックス4本目】

中山は2本目からトライしている「ヒールフリップバックサイドリップスライド」に果敢に挑戦するも決められずにいる中、赤間がここで「フロントサイド270フロントサイドボードスライドリバース」をビッグハンドレールで決め93.48ptのハイスコアをマーク。

ここで勝負を動かしたのは中山や吉沢を追う立場になっている織田だ。SLSでも世界最高得点をマークした「キックフリップフロントサイドフィーブルグラインド」をビッグハンドレールで決め95.81ptと一気に状況をひっくり返した。これにより4本目を終えた時点では吉沢と織田に出場権がある状況となった。

【トリックス5本目】

もう後がない中山はビッグハンドレールで「ヒールフリップバックサイドリップスライド」をラストにして決め切ると、96.62ptとこの日のハイエストスコアをマーク。前回オリンピック経験者として土壇場での勝負強さと意地を見せた。

ベストトリックの成功に喜ぶ中山楓奈
Photo: OIS/Kieran Cleeves. Handout image supplied by OIS/IOC

しかし、織田を上回ることはできずこの時点で織田が暫定首位、中山が2位という状況。ブダペスト大会前のポイント差が44,446ポイントで中山がリードしていたが、今大会の1位と2位では獲得ポイント差が52,000ポイントあるため、ポイントランキングでは織田が逆転する状況である。

そんな状況を一変させるライディングを見せたのが吉沢。「ビッグスピンキックフリップフロントサイドボードスライド」をビッグハンドレールを決め96.12ptを叩き出した。

これにより吉沢が暫定首位となり、2位織田、3位中山という順に。なお2位と3位のポイント差は31,200ポイントとなるのでこの時点でポイントランキングでは再び中山が織田を上回る展開となった。

目まぐるしく順位が入れ替わる状況の中、織田は89.06ptを出せば逆転優勝となり、優勝すれば文句なしでパリオリンピック出場内定を獲得できる状況となった。この極限状態の中で一度は滑り出した織田だったがタイミングが合わず、セクション前でストップして仕切り直しをする。

そんな状況から見ている人達全員にひしひしと伝わるような緊張感が会場を包む。ただその状況すらを楽しんでいるようにも見えた織田は観客からの声援を要求し、自らを奮い立たせているように思えた。

そこで彼女が最後に選んだトリックはビッグハンドレールでの「キックフリップバックサイドスミスグランド」。無情にもトラックはレールに掛からず逆転優勝、逆転でのオリンピック出場は叶わなかった。この瞬間、今大会の結果で吉沢と中山のパリオリンピック内定が決まった。

大会結果

Photo: OIS/Kieran Cleeves. Handout image supplied by OIS/IOC

優勝 : 吉沢 恋 (日本) 270.29pt
2位 : 織田 夢海 (日本) 268.52pt
3位 : 中山 楓奈 (日本) 263.02pt
4位 : 赤間 凛音 (日本) 266.09pt
5位 : クロエ・コベル (オーストラリア) 262.50pt
6位 : 伊藤 美優 (日本) 250.73pt
7位 : チェンシー・チー (中国) 239.91pt
8位 : ペイジ・ヘイン (アメリカ合衆国) 221.15pt

最後に

この結果から、パリオリンピックスケートボードストリート女子出場ライダーの22名が決定した。

最終予選の最終トライまで混戦だったパリオリンピック日本代表争いは、逆転に次ぐ逆転劇だった。内定ライダーは赤間凛音、吉沢恋が共にオリンピック初出場、前回オリンピック銅メダリストの中山楓奈が2大会連続出場となった。

前回オリンピック女王の西矢椛が準決勝敗退しパリオリンピック出場を逃す中で、初出場が2名、前回メダリストが3枠目に滑り込むなど日本が世界でのレベルの高さが証明された。男子同様、世界一過酷な代表争いと言っても過言ではないだろう。

東京オリンピック予選でも最後の最後で涙をのんだ織田夢海はまたしても最終戦で悲願のオリンピック初出場の夢は叶わなかった。過酷な出場権争いは幕を閉じたが、次はパリオリンピックでのメダル争いがすぐに始まる。

今大会に出場しなかった金メダル候補筆頭のブラジルのライッサ・レアウ。そして世界女王経験者で同じく優勝候補であるオーストラリアのクロエ・コベル。ここに日本人ライダーたちがどうメダル争いを繰り広げるか。また新興勢力がこの世界の牙城を崩せるか。この約2年という長い戦いの終わりは、本当の戦いの始まりの合図でもある。

パリオリンピックでのスケートボードストリート女子種目はこれまでにない歴史的なハイレベルが予想される。

上海大会に続き、TEAM JAPANのサポートを実施

【ビクトリープロジェクトが選手サポートの一環として『パワーボール』を提供】

オリンピック予選シリーズ (OQS) ブダペスト大会では日本人選手たちが最高のコンディションで試合に臨めるように、「ビクトリープロジェクト」が帯同・サポートしている。

特に大会期間中は、「補食」を通じて選手のコンディショニングをサポート。サポート活動である「ビクトリープロジェクト」から生まれた栄養プログラムが「勝ち飯」だ。

「勝ち飯」は目的をかなえるカラダづくりに役立つ栄養プログラムで、そこで考え出された「パワーボール」には選手にとって嬉しい2つの特徴がある。

「ほんだし」入りでだしのうま味が効いている為、食欲がアップし、サイズが普通のおにぎりの約半分 で食べやすいというものだ。これによって、食欲がない状況でもエネルギーを確保することが出来る。

【ビクトリープロジェクト サポートディレクター上野祐輝氏のコメント】

パワーボールを摂る目的は、エネルギー補給です。特に試合当日はエネルギーを使う前に溜めておく、使ったらすぐ取り返してエネルギーを切らさないことが重要です。

『パワーボール』は食べやすいので、エネルギーをこまめに補給する「ちょこちょこ食べ」には最適なんです。そんな中で、「いつ、どのくらい」摂るべきかということは、選手と予め試合当日のスケジュールをイメージしながら決めていきます。

栄養補給の大切さはアスリートの方にも伝えたいですし、そのアスリートの姿を通じて一般生活者の方にも良いサイクルを生み出せればと考えています。

「勝ち飯」の栄養摂取の考え方やテクニックなどは、とても簡単で実践しやすいとのばかりです。それをより多くの人に知ってもらい、世の中みんなが健康になる。そんなサイクルが理想ですね。

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