最後の最後までもつれ込んだパリオリンピック代表権争い「オリンピック予選シリーズ(OQS)」ブダペスト大会 男子スケートボードパーク種目
パリオリンピック予選大会最終シリーズとなる「オリンピック予選シリーズ(OQS)」の2戦目であるブダペスト大会のスケートボード・パーク種目が、ハンガリー・ブダペストにて開催され、競技最終日の6月23日(日)に男子決勝が行われた。
本当の意味で最後となる、オリンピック予選大会最終戦となった今回は上海大会と同様にパリオリンピック予選大会全体の得点の3割以上のポイントが与えられる。このことから上海大会で結果を残した選手にとっても、結果次第で逆転されて暫定的に保持していたオリンピック出場権をも失う可能性があるため、どの選手たちにとっても油断の許されない戦いとなった。
そして実際に上海大会で結果を残していた決勝進出を逃したり、今大会を通じてオリンピック代表争いに関しても大逆転が起きたこともあり、改めてOQS大会が持つポイント配点と一戦一戦の重みがひしひしと伝わる苦しい戦いとなった。その中でも上海大会で3位入賞を果たし、ストリート種目での二刀流の実現を期待されているアメリカのジャガー・イートンが準決勝で姿を消したことにも観客に衝撃が走ったことだろう。
そんな予選と準決勝を勝ち抜いた合計8名で競われる決勝のスタートリストはヴィンセント・マテロン (フランス)、キーラン・ウーリー (オーストラリア)、ギャビン・ボットガー (アメリカ合衆国)、アウグスト・アキオ (ブラジル)、ヴィクター・ソルムンド (デンマーク)、テイト・カリュー (アメリカ合衆国)、トム・シャー (アメリカ合衆国)、キーガン・パルマー (オーストラリア) の順となった。なお今回唯一日本代表選手として出場した永原悠路はラン1本目でのミスが影響し予選敗退となり決勝進出とはならなかった。
大会レポート
【ラン1本目】
オリンピックルールにて決勝は45秒のラン3本目のうち1本のベストスコアが採用される一方で、一度トリックを失敗した時点でランを続行できなくなるフォーマット。後半でのスコアアップのために、1本目では手堅く安定したスコアを残すのが定番だがオリンピック予選大会最終戦では違った。そんな中で半分の選手が90点台の超高得点を叩き出す展開となり、最初からバチバチの戦いが火蓋を切った。
まずはオーストラリアのキーラン・ウーリーがまず自身の得意とするコーナーのコーピングでの長いグラインドトリックを元に組まれたルーティンの中に「キックフリップインディグラブ」や「フロントサイド540ノーズグラブ」を取り入れてフルメイクするランで90点台に迫ると89.16ptをマーク。
そのキーランに続き、1本目での自身最高スコアであり90点超えの高得点を残したのはギャビン・ボットガー。彼は回転技とフリップトリックをふんだんに詰め込んだルーティンでランを展開。「バックサイド540メロングラブ」をはじめ、「バリアルフリップインディグラブ」や「キックフリップインディグラブ」、「バックサイドボーンレス to リバート」そして最後は「キャバレリアルキックフリップインディグラブ」など高難度トリックを様々なセクションで決めてフルメイクでランを終えると92.10ptを叩き出した。
そんなギャビンに負けじと90点台を残すランを見せたのは上海大会優勝者のテイト・カリュー。多いトリックバリエーションとコースを大きく使うランを展開すると、「バックサイド540テールグラブ」を手はじめに、ヒップ越えの「ハードフリップインディグラブ」、「バックサイドブラントスライド」や「フロントサイドロックンロールスライド」をメイクして90.93ptをマークした。
ただ今大会のアメリカの主役はギャビンでもテイトでもなかった。バーチカルを主戦場に持つトム・シャーが強さを見せた。フェーズ1や上海大会ではいまひとつ満足いく結果を出せていなかった彼が今回見事なライディングで他選手を翻弄。ハイスピードかつハイエアーの中に「フロントサイド360ステールフィッシュグラブ」をはじめ、「ヒールフリップインディグラブ」や「バックサイド540テールグラブ」そして「キックフリップインディグラブ to フェイキー」など高難度トリックを取り入れたランをメイク。用意していたラストトリックはタイムアウト後になり加算されなかったが93.48ptを叩き出し暫定1位に躍り出た。
そのトムを追いかける形で90点超えのスコアをマークしたのは、東京オリンピック金メダリストのキーガン・パルマー。ハイエアーの「バックサイドアーリーウープノーズボーンミュートグラブ」をエクステンションで決めると、「フロントサイドトゥウィーク・リーンエアーメロングラブ」をメイクして92.58ptをマークし、暫定2位でアメリカ人選手勢のトップ争いに食い込んだ。
【ラン2本目】
ラン2本目は1本目と異なり、ミスが続くライディングでスコアを思うように伸ばせない選手もいる中、優勝争いを繰り広げているトムとキーガンはさらに最高得点を引き上げるなど熾烈な戦いが繰り広げられた。
2本目でまず自身最高得点を残したのは、16歳のニューフェイスで「WST Dubai」では3位入賞を収めたデンマークのヴィクター・ソルムンド。人一倍速いスピードでトリックを繰り出すライディングが特徴の彼は「バックサイド540テールグラブ」を皮切りに「バックサイド540メロングラブ」や「ヒールフリップインディグラブ」などグラブ系を中心したライディングを見せて87.76ptをマークした。
ヴィクターに続いて自身のスコアを上げてきたのはテイト。2本目では少しトリック構成をアップデートし、ディープエンドでの「バックサイド540ボディバリアル」そして最後は「ノーグラブバックサイド540」を決めるなどレベルを上げたランをフルメイクでまとめ91.90ptをマークしスコアを上げていく。
しかしテイトの追い上げをものともせず、さらにスコアを上げてきたのはトム。基本的には1本目と同じトリック構成で2本目もランを進めていく。ただ今回違ったのはその完成度。そして中盤で「アーリーウープキックフリップインディグラブ」にアップデートすると、1本目ではメイクしきれなかったラストトリック「ノーグラブバックサイド360」を見事メイクし、スコアを94.46ptまで引き上げてリードを広げた。
トムの優勝が現実味を帯び始める中で、彼をさらに上回ったのはキーガン。彼もトムと同様に1本目の同じトリック構成をベースに完成度を上げながら「バックサイド540ステールフィッシュグラブ」やヒップ越えの「アーリーウープバックサイド540インディグラブ」をメイクしてトムのスコアを僅かに上回る94.94ptをマークした。
【ラン3本目】
優勝するには95点台が必須になるという今シーズン最もレベルの高い決勝となった今大会。最終ランでは各選手がトムとキーガンを追う展開となったことで苦戦を強いられた。
まずこのランで決勝一番のスコアを残したのはフランスのヴィンセント・マテロン。スライドやグラインド系を多く使う彼は、2本目で失敗したラストトリックの「バックサイドノーズグラインド to ショービットアウト」を決め切ることはできなかったものの、彼のエクセキューションポイントにジャッジは評価し、今回自身最高得点の82.02ptというスコアとなった。
そして3本目でベストスコアを更新してきたのはアウグスト・アキオ。1本目・2本目とミスが続き一度もフルメイクができていない中で迎えた3本目。ライディング前に緊張を鎮めるため行ったジャグリングがプラスに働いたのか、ランでは「キックフリップインディグラブ」を皮切りに「アーリーウープヒールフリップインディグラブ」や「ハーフキャブブラントスライドフェイキー」。最後に「バックサイド540メロングラブ」をメイクするなどバラエティ豊富なトリックをメイクし90.48ptまでスコアを伸ばした。
そんなアウグストに続いて安定してスコアアップをしてきたのがテイト。暫定4位と表彰台獲得まであと一歩のところで迎えた3本目では「バックサイド540ボディバリアル」、「アーリーウープリーンエアー」そして「ノーグラブバックサイド540」をメイクするランでベストスコアを92.65ptとし、3位までスコアを伸ばしたが暫定2位のトムを超えることはできなかった。そしてこの瞬間トムの2位以上が確定したことでパリオリンピック出場権獲得が決まった。
そして最後に注目となったのはトムとキーガンの戦い。ただどちらもランをフルメイクできずスコアアップしなかったため順位は変わらず、キーガンが優勝しトムが2位という結果となった。このことから東京オリンピック金メダリストのキーガンがパリオリンピックでの2連覇に向けて弾みをつける大会となった一方で、トムがパリオリンピック出場権を獲得したことでジャガー・イートンはアメリカの3枠に残ることができず本戦での二刀流実現とはならなかった。
大会結果
優勝 キーガン・パルマー (オーストラリア) / 94.94pt
2位 トム・シャー (アメリカ合衆国) / 94.46pt
3位 テイト・カリュー (アメリカ合衆国) / 92.65pt
4位 ギャビン・ボットガー (アメリカ合衆国) / 92.10pt
5位 アウグスト・アキオ (ブラジル) / 90.48pt
6位 キーラン・ウーリー (オーストラリア) / 89.16pt
7位 ヴィクター・ソルムンド (デンマーク) / 87.76pt
8位 ヴィンセント・マテロン (フランス) / 82.02pt
最後に
今大会での結果により、パリオリンピックへ出場する全22名が出揃った。出場権争いが激化していたアメリカは、今回トム・シャーが準優勝を果たしたことでジャガー・イートンを最後に追い抜き代表権を獲得する形となり、今大会3位のテイト・カリューと4位のギャビン・ボットガーが続いてパリオリンピック出場権を獲得。
もう一方で最後までどうなるか分からない出場権争いを繰り広げていたブラジル。今回決勝に進出したアウグスト・アキオが確実としていた中で、国内2番手につけるも今回予選敗退を喫したペドロ・バロスと、そして準決勝敗退した国内3番手のルイージ・チーニが大きくリードを保ち逃げ切ったことでこの3名がパリオリンピック出場権を獲得した。
そしてもちろん忘れてはいけないのは日本人唯一の出場選手である永原悠路。今大会では予選敗退したため不安もよぎる展開だったが、繰り上げで全体16位となりオリンピック出場権を獲得した。それ以外にはオーストラリアの強豪キーガン・パルマーとキーラン・ウーリーをはじめ、「WST Dubai」の王者であるスペインのダニー・レオン、今大会の決勝進出者を筆頭にパリオリンピック代表選手に名を連ねた。
さて長かった2年間のオリンピック予選大会が終わり、ついにパリオリンピック出場選手の面々が整った。いよいよ1ヶ月後に迎えるパリオリンピック本戦ではどんな戦いが繰り広げられるのだろうか。前回のオリンピック王者のキーガン・パルマーが2連覇なるか。一方でアメリカ代表選手たちも金メダル獲得の可能性も大いにある。ただ我々としては永原悠路がその王者の牙城に風穴を空けてくれることに大きな期待を持ちながら、夏の本戦を楽しみにしたい。
上海大会に続き、TEAM JAPANのサポートを実施
【ビクトリープロジェクトが選手サポートの一環として『パワーボール』を提供】
オリンピック予選シリーズ (OQS) ブダペスト大会では日本人選手たちが最高のコンディションで試合に臨めるように、「ビクトリープロジェクト」が帯同・サポートしている。
特に大会期間中は、「補食」を通じて選手のコンディショニングをサポート。サポート活動である「ビクトリープロジェクト」から生まれた栄養プログラムが「勝ち飯」だ。
「勝ち飯」は目的をかなえるカラダづくりに役立つ栄養プログラムで、そこで考え出された「パワーボール」には選手にとって嬉しい2つの特徴がある。
「ほんだし」入りでだしのうま味が効いている為、食欲がアップし、サイズが普通のおにぎりの約半分 で食べやすいというものだ。これによって、食欲がない状況でもエネルギーを確保することが出来る。
【ビクトリープロジェクト サポートディレクター上野祐輝氏のコメント】
パワーボールを摂る目的は、エネルギー補給です。特に試合当日はエネルギーを使う前に溜めておく、使ったらすぐ取り返してエネルギーを切らさないことが重要です。
『パワーボール』は食べやすいので、エネルギーをこまめに補給する「ちょこちょこ食べ」には最適なんです。そんな中で、「いつ、どのくらい」摂るべきかということは、選手と予め試合当日のスケジュールをイメージしながら決めていきます。
栄養補給の大切さはアスリートの方にも伝えたいですし、そのアスリートの姿を通じて一般生活者の方にも良いサイクルを生み出せればと考えています。
「勝ち飯」の栄養摂取の考え方やテクニックなどは、とても簡単で実践しやすいとのばかりです。それをより多くの人に知ってもらい、世の中みんなが健康になる。そんなサイクルが理想ですね。
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