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前回の「全仏オープン」で大トレンドとなったショット、今年の効果は?

「全仏オープン」でのチチパス

昨年の「全仏オープン」では、あるショットが際立っていた。ドロップショットだ。フランス語でドロップショットは“l’amorti(ラモルティ)”。和らいだ、弱まったという意味の単語で、サッカーのトラッピングも同じ言葉を使う。新型コロナウイルス感染拡大の影響で秋開催となった前回大会では、多くの選手が決め球としてドロップショットを使用していた。米スポーツ専門局ESPNが昨年と今年のショットのトレンドについて伝えている。

昨年の大会では、決勝で対戦したラファエル・ナダル(スペイン)とノバク・ジョコビッチ(セルビア)も、ドロップショットを多用した。女子シングルスで優勝したイガ・シフィオンテク(ポーランド)も、素晴らしいドロップショットの技術を見せつけた。


当時20歳になったばかりで2回戦で西岡良仁(日本/ミキハウス)を下したユーゴ・ガストン(フランス)は、ドミニク・ティーム(オーストリア)との4回戦でなんと54回もドロップショットを放った。元世界ランキング3位のスタン・ワウリンカ(スイス)を下した3回戦でも、ガストンはほぼ同数のドロップショットを使用している。「彼のドロップショットはこの世のものとは思えないほど素晴らしい」と当時ティームは語っている。「ネットに向かって400回くらい走らされたよ」


だが2021年の「全仏オープン」は、1週間の開催延期はあったものの、通常通り初夏の開催に戻った。そして今回の大会では、8ヶ月前の前回とは異なりドロップショットがそこまで効果的ではなくなっているようだ。ドロップショットはどのサーフェスでも有効な武器だが、特にクレーでは大きな効果がある。まずクレーは柔らかく、ハードコートよりボールが弾みにくい。加えて滑りやすく、選手が方向転換するのがとても難しい。そのためボールに追いつくのが非常に困難になる。


「昨年、選手らはベースラインのかなり後ろでプレーしていた。だが彼らは、そんな後ろからでは自分のショットがそこまで効果的ではないということに気付いていなかったと思う」と過去3度「全仏オープン」で優勝し、現在Eurosport TVの解説者を務めるマッツ・ビランデル(スウェーデン)は語った。「ベースラインの後ろからでは、相手を振り切れるようなショットを打つことができなかった。だからドロップショットがあそこまで効果的だったんだ」


「ところが、今は選手たちのショットにもっと回転がかかるようになった。9月より20cmほど高く跳ね上がるボールを、さらに1メートルほど後ろから効果的なドロップショットを打つことは、ずっと難しくなる」


今年の「全仏オープン」でワイルドカード出場枠がガストンに与えられると知ったティームは、ふと微笑んだ。「いい思い出だよ。特別な試合、素晴らしい雰囲気だった。当時の僕は、身体的にもとても調子が良かった」


大会3日目にベテランのリシャール・ガスケ(フランス)と対戦したガストンは、ティームと同様1回戦で敗退してしまった。ガストンはオーソドックスなプレースタイルを心がけたようだが、ドロップショットは昨年ほど有効ではなかった。彼が放った13回のドロップショットのうち、ポイントを決められたのは2回だけだった。


8ヶ月前、ガストンがティームを相手にドロップショットを量産していた時、ボールは冷たく重いクレーの上で力を失っていた。太陽光が暖かく降り注ぐ中で行われている今年の大会では、ボールはほんの少し高くバウンドし、ドロップショットは去年よりリスクのあるショットとなってしまった。


だが、ドロップショットが忌避されているわけではない。うまく打てばポイントになり、拾われても相手の体勢を崩せれば次のショットへの布石になる。またドロップショットが来るかもしれないと相手に思わせることで、通常のショットでも不意をつける可能性が高くなる。


第5シードのステファノス・チチパス(ギリシャ)は、今年もドロップショットを使っていくつもりだと言う。「(クレーでは)良い戦略になる。少し球足が速くなり弾みやすくなっているかもしれないけど、クレーはクレーだ。ドロップショットは使い続けるよ」


オンス・ジャバー(チュニジア)は、女子選手の中で最もドロップショットを得意とする選手の一人とされる。ジャバー曰く、天候の違いは確かに差を生み出すが、それだけでは適切な時にドロップショットを使わない理由にはならないと言う。


「クレーでのドロップショットはいつも有効だと言いたいわ。ハードコートでよりも使える。でも去年は、コートが重く、ボールも重くて、天候も違っていたから、ドロップショットがはるかに使いやすかった。常にドロップショットに頼る必要はないわ。ああやってポイントを取るのは素晴らしいことだけれどね」


(テニスデイリー編集部)


※写真は「全仏オープン」でのチチパス
(Photo by Adam Pretty/Getty Images)

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