レスリング代表合宿で全身不随 被害者の母が語る「協会への不信感」

 2017年9月に行なわれたレスリングの代表強化合宿。拓殖大3年生で学生王者だった谷口慧志選手(22)は社会人選手(24)とのスパーリングで、投げ技を受け負傷。頚髄損傷・神経断裂という大怪我を負い、全身不随の状態で「回復の見込みがない」と診断された。

【写真】相手は全日本3連覇の実力者(本人ツイッターより)

 そして今年3月28日、谷口選手と母親は、日本レスリング協会、強化本部長だった栄和人氏、相手選手らに対し、計2億2600万円の損害賠償を求める訴訟を起こした。

強化本部長だった栄氏 ©JMPA

 今回、谷口選手の母親が「週刊文春」の取材に応じ、レスリング協会の対応に疑問の声を上げた。事故当時、レスリング協会が選手を「スポーツ団体保険」に加入させていなかったことはすでに明らかになっている。

「最初の手術を終え、病院に支払いをした際のことです。協会が主催した合宿での事故なので、私はてっきり協会が払うものだと思っていました。しかし協会の方が栄さんに聞いたら、『お母さんに払ってもらえ』と。正直、何でだろうと思いました。これまでの治療費は全て私が支払っています」

 谷口選手親子の心情を深く傷つけたのが、協会幹部の言動だ。

「合宿の責任者だった栄さんは、一昨年の12月に一度だけ、お見舞いに来られました。『おー、俺のこと知ってるか』と息子に声をかけ、リハビリ室に入ってきました。こちらが恥ずかしくなるような態度で、『頑張れよ』とだけ言って、5分程度で帰られました。正直、来ないでくれた方が良かったと思ったくらいです」(同前)

 母親は、訴訟の理由を次のように語った。

「誰も事故の状況をきちんと説明してくれないし、おかしな対応が続いています。今の病院もいつかは出なければいけません。同じような障害の方にお話を聞く中で、途方もない金額の治療費などがかかることもわかりました。今回の裁判で責任の所在を明らかにし、きちんとした補償を受け、息子の人生が再スタートできるようにしたいと考えています」

 栄氏は、「週刊文春」の取材に「谷口君の見舞いも2,3回は行きましたし、会話もしました。手術代だって私が指示するわけないじゃないですか」と答えた。

 社会人選手が所属するALSOKは「まだ訴状が届いておりませんので、内容を確認次第、対応を検討してまいります」と回答。レスリング協会は、訴状が届いてないことを理由に、「回答は控えさせていただきます」と答えなかった。

 4月11日発売の「週刊文春」では、谷口選手の母親が事故当時の状況、谷口選手の置かれた状況、そして協会の対応について詳細に語っている。

(「週刊文春」編集部/週刊文春 2019年4月18日号)

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