JOC山下泰裕会長が独占激白「逃げる気持ちはない」 五輪中止説も流れる中でトップの本音は…

山下会長はミライトワとソメイティを手にサムアップポーズ

【どうなる?東京五輪パラリンピック(86)】来年7月23日に開幕する東京五輪まであと1年を切った。当初は今月24日に開会式が行われ、国内はお祭りムード一色になるはずが、新型コロナウイルス禍でまさかの1年延期。東京都の新規感染者は23日に過去最多の366人に上り、終息は見通せない。開催自体も危ぶまれる中で、本紙の単独直撃に応じた日本オリンピック委員会(JOC)の山下泰裕会長(63)は、国民が待ち望んだ形での開催を熱望。「財政課題」「代替大会」「都知事選」「あの選手」など“本音”を大事にするトップが明かすスポーツ界の未来とは――。


 ――延期となった五輪まであと1年。新型コロナ禍をどう受け止めるか

 山下会長(以下山下)正直言って、まさかここまで日本も世界も深刻な状況になるとは予想できていなかった。スポーツ活動含めいろんな活動が制限されてね。

 ――ズバリ、開催できるのか

 山下 これから先が不透明なところで、無責任な発言は慎むべきだと思っている。まともな人はこういう場で発言しない(笑い)。だからある時期が来れば、それは開催のメドが立つとか、そうなってからの話。いろんなケースを想定していても、それをマスコミの前で話す人はいないかと。

 ――アスリートは限られた範囲で活動を続けている

 山下「#いまスポーツにできること」プロジェクトではJOCアスリート委員会を中心に多くの選手が、新型コロナ治療の最前線に立つ医療従事者の方々に感謝の言葉を述べ、子供たちに室内でできることを発信してくれた。これからは国民の皆さんにスポーツで勝利を届ける、何かを感じてもらうことも大事だけど、それ以外で我々ができることを気づき、実践していく。日本のスポーツ界はそうなっていかないとますます信頼が低下していくと思っている。

 ――国内競技団体(NF)は財政面でも大きなダメージを受けている

 山下 各NFと同じくらいJOCの状況は厳しく、来年は大会組織委員会に延期分で入ってくるスポンサー料からしか収入がない。それがどれくらい入ってくるかも分からないのが現状。今年はできるだけ切り詰めて、少なくとも来年の人件費、管理費といった固定費は確保しようとなっている。

 ――クラウドファンディングなどでJOCがアスリートを直接支援できないか

 山下 JOCとアスリートが直にという声も一部であったけど、結局選手の状況を一番よく把握しているのはNF。JOC独自にといっても、公なお金をおかしなことには使えないし、状況をちゃんと把握しないといけない。本当に困っていれば、NFを通してくると思う。頭越しにやるとかえってリスクもある。

 ――甲子園やインターハイで代替大会の動きがある中、来夏の五輪が開催困難となった場合に代替大会を設ける可能性は

 山下 私は国民が待ち望んだ形で来年7月23日に開会式ができるようにJOC会長として何をすべきか、これだけで動いている。今の世論調査は全然違うけど、それが変わって、世界の人たちの希望になる形でね。そういう意味で(代替大会は)私の頭にはまったくない。ただ我々にはいろんな役割分担があって、私は開催一点に集中しているけど、JOCが考えていないのとは違う。山下イコールJOC会長だけど、会長とJOCはイコールではないからね。

 ――5日に投開票があった東京都知事選挙では五輪の延期や中止を公約に掲げる候補者が見受けられた

 山下 「延期」とか「中止」とか、仮に(知事に)なったとしてもそんな権限はね…。天下取って全知全能というわけではないのでね。やっぱり(現職の)小池(百合子)さん(68)と差があるから少しでもその辺(インパクトがある公約)を出したと思うんだけど、我々がそれで一喜一憂したらおかしいでしょう。私も63年間生きてきたから。それに対してカリカリしたとかはまったくなかった。

 ――白血病から復帰を目指す競泳女子の池江璃花子(20=ルネサンス)に国民が期待している

 山下 以前(闘病前に)、ある表彰式で隣になったことがあるのよ。その当時「あんなに長い時間水に入っていたら大変じゃないの?」と聞いたら「いいえ。私たちは逆に水の中に入っているほうが楽なんです(笑い)」という話をしたね。しかし…すごい。いろんな挫折や苦痛、葛藤があったと思うが、それを受け入れて前を向いている。しかも自分より厳しい状況にいる人もいるはずだと。彼女の行動には頭が下がる。2024年の(パリ)五輪に出られるかはまだ分からないけど、そういう姿勢で生きていくと、必ず神のご加護があると思う。

 ――言動に感じるものがあった

 山下 自分のことだけではなく、五輪のことだけではない。彼女から学んで、我々が社会に対して何ができるかということも考える。そういうスポーツ団体でありたい。

 ――山下先生の任期は来年6月までで、五輪開幕を前に満了を迎える

 山下 まさか、JOC会長になるとは思っていなかったが「もう1期」となれば、逃げる気持ちはない。ただ、そこは1期2年間やった私を冷静に評価してもらって。それは私が決めることではないのでね。

☆やました・やすひろ 1957年6月1日生まれ。熊本県出身。84年ロス五輪柔道男子無差別級金メダル。世界選手権は79年から95キロ超級3連覇、81年は無差別級との2冠。85年の全日本選手権で前人未到の9連覇を果たし、203連勝のまま現役引退した。84年に国民栄誉賞受賞。男子日本代表監督などを経て、2017年6月から全日本柔道連盟会長。昨年6月、JOC会長に就任。国際柔道連盟理事や味の素ナショナルトレーニングセンターのセンター長も務める。母校の東海大では副学長。

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