パラカヌー・高木裕太 競技歴3年弱でなぜ上り詰めることができたのか

力強いパドルさばきを見せる高木(日本障害者カヌー協会提供)

【Rstart パラヒーローズ その壁を乗り越えろ(5)】 伸びしろ抜群の男に注目だ。パラカヌーの高木裕太(25=インフィニオンテクノロジーズジャパン)は、日本のエースとして東京パラリンピックでの活躍が期待されている。競技生活はわずか3年弱。そんな男がなぜここまで上り詰めることができたのか。隠されたパラリンピックへの強い思いとは――。 

 交通事故に巻き込まれ、車いす生活になって約3年が経過したある日、高木の秘めていた思いがあふれ出た。2016年のリオデジャネイロ大会に出場した友人の話を聞き「自分も東京パラリンピックに出たい」と一念発起。パラカヌーを見学後、本格的に挑戦することを決意した。さらに、自らの足でアスリート雇用を認めてくれる会社を探して、競技に集中する環境を整えた。

 ところが、カヌーは初体験だったことから「船に乗るのが難しくて、一番細い試合用の船へ乗るのに時間がかかった。そこが一番苦労したというか、時間のかかった点だった」。思うようにいかない日々が続いたものの、乗れるようになった後は「これから楽しくなっていく期待感があり、やる気が増してきた」とカヌーの魅力に取りつかれた。

 すると、17年の日本選手権でいきなり優勝。18年には日本代表に選ばれた。だが、5月のW杯では1位の選手に20秒以上の差をつけられ、8位に沈んだ。世界レベルを実感し「今よりももっと速くなるためにはどうしたらいいのかといろんなことを試しましたね」。海外のライバルたちを研究しながら自身のパフォーマンスを一から見直した。

 19年の世界選手権では準決勝敗退に終わったものの、約1年間でタイムを10秒近く縮めた。それでも満足はしておらず「課題がたくさん出てきているので、それを潰していきたい」とさらなるレベルアップを目指している。

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、東京大会だけでなく、世界最終予選も延期。現在は練習すら満足にできない日々が続いていても「自分のこぎをよりよくしていくための時間が増えた」と前を向く。「自分がやれることをすべてやりたい」。無限の可能性を持つヒーロー候補は、夢舞台で最高の輝きを放ってみせる。

 ☆たかぎ・ゆうた 1994年10月12日生まれ。大阪府出身。小学校1年から野球を始め、高校時代は4番捕手として活躍した。大学1年時にバイク事故で脊髄を損傷しながらも、懸命なリハビリのかいあって、スポーツ界への復帰を果たす。1年後には車いすソフトボールの日本代表に選出されたが、パラリンピック出場を目指して、2017年からはパラカヌーに挑戦。現在は、岐阜・八百津町でカヌー漬けの日々を過ごしている。178センチ、77キロ。

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