【ボクシング不正告発】元側近が激白した“ドン”山根明会長の悪業

日大の田中理事長(左)と固い握手を交わす山根会長(澤谷氏提供)

 日本ボクシング連盟が助成金の流用や試合の判定などで不正を行っているとして、都道府県連盟の幹部や元選手ら333人が名を連ねた告発状が日本オリンピック委員会(JOC)や日本スポーツ協会などに出され、アマチュアボクシング界は大揺れだ。告発の本丸は、日本連盟を私物化しているとされるアマボクシングの“ドン”山根明会長(78)。かつて側近だった連盟元理事で、近畿大学前ボクシング部総監督の澤谷廣典氏(55)が本紙直撃に、あしき実態を激白した。

 告発状では、同連盟がアスリートの助成金の不正流用や、試合用グローブなどの不透明な独占販売、公式試合における組織的な審判不正を行っていると指摘。また、ボクシングの国体での隔年実施開催への格下げに対し、同連盟が何の対策も施していないことを訴えている。

 山根氏をそばで見てきた澤谷氏は昨年8月、週刊誌上で内情を告発していた。その後、同志を募って今回の告発では主導的な役割を担った。なぜ山根氏を訴える側に回ったのか?

 澤谷氏は昨年6月、総監督を務めていた近畿大学の暴行問題の責任を取る形で辞任した。当時、近畿大学は芦屋大学とリーグ戦で覇権を争っていた。審判不正の常態化を目にしていた澤谷氏は「山根に『辞任する。その代わり、試合で汚い手を使うなよ』って言うたら、関東からイカサマ審判を連れてきて、芦屋大学が有利になるように仕向けた」。

 さらに「僕の辞任に反発した女子生徒が敵討ちのつもりで、山根の孫娘の婿である監督をセクハラで訴えた。それで女子生徒は中退することになったんですが、普通は孫の婿がセクハラしたら、連盟会長として謝罪するでしょ? それが、孫と離婚させて『あんな男は知らん。悲しい』とか言うとる。そういう所作を見て腹をくくったんです」と振り返る。

 そんな澤谷氏は審判不正について「やりたい放題ですわ。高校が特にひどい。(山根会長が)奈良県のボクシング連盟の会長の時に奈良の選手を勝たすのは分かりますけど、今は日本の会長ですよ。いい選手を引き上げるのが仕事。奈良ばっかり。奈良の教育委員会から、まっさらなリンゴを下ろしてもらったりしてますわ。岩手の選手なんて一方的に攻めまくってるのに、奈良の選手に負けた。その選手はその試合でボクシングを辞めてる。私も監督をしてきて、たくさんの選手の恨み、涙、苦しみ、悲しみを乗せてる。何人の人生を変えてるんやと言いたい」と語った。

 不正な判定が横行する理由について、澤谷氏は「山根の私利私欲」とぶった斬る。判定だけでなく、その影響は進学やプロ入りなど選手のその後の人生にも及んでおり、2012年ロンドン五輪ミドル級金メダリストでWBA世界同級王者の村田諒太(32=帝拳)も被害者だと語る。

「村田君は自分の力で這い上がったので『会長のおかげでメダル取れました』などと言わず、高校時代の恩師の(2010年に亡くなった南京都高ボクシング部監督の)武元前川さんに感謝した。そのことに対し、山根は『そんな名前は出すな。俺の名前を出せ』と強要し、悪口も言った。村田君はその悔しい思いを秘めたままプロに行ってると思うし、今回『今すぐ辞めるべき』と言ってくれて(※)うれしいですね」

 アマチュアスポーツをめぐっては、日大アメフット部の悪質タックル騒動の迷走がまだ続いているが、山根氏は今年4月1日から日大の客員教授に就いた。

「田中理事長とはツーショットで写真撮ってるほど懇意にしている。(一連の)会見についてもアドバイスもらってるんちゃいますか? とにかく目立つのが好きなんで、いろんな人と写真撮ってますよ」

 他にも、東京五輪・パラリンピック組織委会長の森喜朗元首相や河野洋平元衆議院議長とのツーショットもあり、政界とのつながりの深さが見てとれるが「元東大ボクシング部で内閣官房副長官の西村康稔さんも、連盟に近づいてきて、自民党内でもボクシング振興議員連盟をつくった。西村さんには人を介して『こんな不正をしてる団体に内閣官房副長官ともあろう人が加勢するのは良くないですよ。いつかあなたのマイナスになるよ』と警告してるんですけどね」と話した。

 2012年に山根氏を異例の終身会長にした日本連盟。澤谷氏は今回の告発状を機に連盟がうみを出し切り、選手がボクシングを楽しめる環境になってほしいと願っている。そして「最終的には、村田君あたりが引退したら、アマチュアのボクシング連盟会長に座ってもらえばいい」と提言した。

 前代未聞の告発劇。アマチュアボクシング界の混乱は収まるのか?

 ※村田は30日までに自身のフェイスブック上で、日本連盟の対応を批判。「そろそろ潔く辞めましょう、悪しき古き人間達、もうそういう時代じゃありません。新しい世代に交代して、これ以上、自分逹の顔に泥を塗り続けることは避けるべきです」と書き込み、暗に山根会長の退陣を促した。

☆さわたに・ひろのり=近畿大学卒。近大体育会本部に勤務し、ボクシング歴はなかったが、2012年に俳優・赤井英和とともに廃部になっていた名門ボクシング部の再建に尽力。17年、暴行事件の責任を取る形で体育会ボクシング部総監督を辞任した。その後、山根会長の同連盟の私物化を週刊文春に告発した。脳梗塞を乗り越え、今回、告発状を提出した「日本ボクシングを再興する会」の結成にも奔走。元一般社団法人日本ボクシング連盟理事。

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