【欧州CL分析コラム】なぜアーセナルはポルトに負けたのか。まさかの枠内シュート0…。最後の最後で出た無駄な“色気”

【写真:Getty Images】

●ポルトが1stレグでアーセナルに先勝

  UEFAチャンピオンズリーグ(CL)・決勝トーナメント1回戦1stレグ、ポルト対アーセナルが現地時間21日に行われ、ホームチームが1-0の勝利を収めた。アーセナルからすれば、ホームでの2ndレグが控えているためスコアレスドロー狙いでもよかった試合で、なぜ痛恨の失点を喫して敗れたのだろうか。(文:安洋一郎)

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 ポルトがトーナメントに強い理由が凝縮された試合だった。

 昨シーズンにセルジオ・コンセイソン監督率いるチームはスーパーカップ、リーグカップ、国内カップの3つで決勝に進出。その全てで勝利を収めて、カップ戦の3冠を達成している。

 これだけ勝負強いのには理由がある。それは相手や試合の重要度に合わせて「堅守速攻」を徹底できるからである。ハードワークが前提のコンセイソン監督のチームの守備練度は極めて高い。それが功を奏して、年明けのプレミアリーグ全5試合で勝利を収め、その中で21ゴールを奪うなど絶好調のアーセナルでさえも食ってみせた。

 一方のアーセナルからすると、痛恨の敗戦となっている。ホームでの2nd レグを控えていることを踏まえれば、ポルトのホームで行われたこの試合は、負けなければ御の字だった。しかし、試合終了間際に喫した失点で完全にプランが崩れた。

 0-1という結果だけでなく、内容でも完敗で、枠内シュートはまさかのゼロ。ポルトゴールを脅かしたシーンは皆無だったと言っていいだろう。

 なぜ、今年に入ってから絶好調だったアーセナルは、1本の枠内シュートも放てずに完敗を喫したのだろうか。

●好調アーセナルがチャンスを作れなかった理由

 堅守速攻を徹底していたポルトは[4-5-1]のブロックで中盤をコンパクトにすることで、相手のパスを引っかけてからのショートカウンターを狙っていた。対するアーセナルは先述した通り、この試合はスコアレスドローでも十分な結果だった。そのため狭いスペースに楔の縦パスを通すことなく、攻撃でリスクを犯すことをしなかった。これが決定機を作れなかった最大の理由である。

 アーセナルはショートカウンターを受けないように中盤を経由することなく、外循環の形で両ワイドに展開して、WGの質的優位でチャンスを作り出そうとしていた。しかし、痛恨だったのがガブリエウ・マルティネッリとブカヨ・サカの低調なパフォーマンスだ。

 特にサカは消極的なプレーに終始し、データサイト『Sofascore』によると、成功の有無関係なしに1度しかドリブルで仕掛けていない。そんな状況でもアーセナルが得意とするコーナーキックのチャンスは10回も訪れたが、ポルトの守護神ディオゴ・コスタの安定したハイボール処理もあって決定機を作れなかった。

 中央からもサイドからも自分たちの攻撃を仕掛けられず、肝心のセットプレーのチャンスも活かせないとなれば得点の匂いはしない。ただ、何度も述べたように、この試合は「ゴールを奪うこと」よりも「ゴールを奪われること」に重きを置いているため、攻撃の停滞事態はそこまで問題ではなかった。

 それよりもゴールを決められたのが大きな問題だ。

●なぜアーセナルは失点を喫したのか

 ミケル・アルテタ監督も最大限にリスクを犯さないような采配を行っていた。

 それは選手交代の切り方からも想像できる。コンセイソン監督が4選手を途中投入した一方で、アルテタ監督はレアンドロ・トロサールを下げてジョルジーニョを投入する一度しかカードを切っていない。

 ベンチにはFWエディ・エンケティアやMFエミール・スミス=ロウ、FWリース・ネルソンらが控えていたが、攻撃的な選手を投入することはなかった。この試合だけで勝負を決する必要があるのであれば、FWガブリエウ・ジェズスの負傷に伴い、現スカッドで唯一のストライカーであるエンケティアをピッチに入れるプランもあったはずだ。

 彼を起用しなかったのは無理にカウンターを狙わないためだろう。スピードがあり、カウンターを得意とするエンケティアを途中投入した場合は、ピッチ上の選手たちが彼を活かそうと攻め急ぐ可能性が高まる。しかし、攻め急ぐとプレーが雑になってパスが引っかかり、ポルトの狙いであるショートカウンターを受けやすくなってしまう。そのため、指揮官はあえて交代カードを最低限のものにして、現状のメンバーで最も高い守備強度を維持できる人選を選んだ。

 これだけリスクを犯さなかったのにも関わらず失点を喫した。スコアが動いた90+3分は、試合終了間際だったこともあり、両チームにボールの主導権が行ったり来たりする怒涛の展開となっていた。

 この流れにアーセナルは乗ってしまい、ゴールを決めたいという欲が出てしまった。その結果、ショートカウンターを受けることだけは避けたい展開で攻め急いでしまい、ガブリエウ・マルティネッリが出した裏への一本のパスをポルトDFオターヴィオがカット。そのボールがダイレクトで左WGのガレーノに渡ると、カウンターモードで前掛かりになっていたアーセナルの守備陣形が整う前にカットインシュートを沈められた。

 最後の最後で出た色気が仇となり、痛恨の失点、そして敗戦を喫してしまった。この試合に関してはゲームプランを実行できなかったが、アーセナルには幸いにも2ndレグが残されている。それまでの期間に冨安健洋をはじめとする多くの負傷者が戻ってくる可能性が高いこともポジティブに捉えたい。

 今季ホームで絶好調のアーセナルが逆転するのか、先勝したポルトが堅守を武器に守り勝つのか。運命の2ndレグは現地時間3月12日に行われる。

(文:安洋一郎)

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