「納得いっていない」板倉滉に託されたミッションとサッカー日本代表が抱える問題【アジアカップ2023現地取材コラム】

【写真:Getty Images】

●5度目のアジア制覇に暗雲…

 サッカー日本代表は24日、AFCアジアカップカタール2023グループステージ第3節でインドネシア代表と対戦する。ここまで2試合ともに複数失点を許している守備陣は何を改善するのか。板倉滉にかかる期待は必然的に大きくなるはずだ。(取材・文:元川悦子【カタール】)
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 1992年広島大会、2000年レバノン大会、2004年中国大会、2011年カタール大会に続く5度目のアジア制覇を目指し、今大会に挑んでいる日本代表。ところがグループリーグでベトナム代表、イラク代表に1勝1敗と不本意な戦いを余儀なくされ、2戦終了時点で決勝トーナメント進出を決められなかった。

 23日にシリア代表がインド代表を下し、パレスチナ代表も香港代表を下したことで、日本代表のラウンド16入りは24日のインドネシア戦に持ち越された。ここまでの悪循環を払拭するためにも、次戦は圧勝かつクリーンシートで流れを変えたいところだ。

「明日の試合は直近の試合からいくつかのポジションは変えながら試合に向けて準備をしています。ターンオーバーという言葉を使うかは分かりませんが、我々には日本のために戦える26人の選手が揃っていますので、状況に合わせて起用していきたい」と森保一監督は前日会見で発言。いくつかのポジションで入れ替えを行っていくつもりだ。

 守備陣に関しても、イエローカードを1枚もらっている菅原由勢を下げ、毎熊晟矢をスタートから起用すると見られる。そしてイラク代表戦は後半からの出場だった冨安健洋もスタメンが確実視される。その彼とコンビを組むのは、ここまで2戦に先発してきた板倉滉ではないか。

●苦戦の理由「大会仕様に仕上げてきた印象はある」

 板倉は10月下旬に左足首の遊離軟骨の除去手術を受け、年内いっぱい公式戦から遠ざかった影響もあり、今大会はややパフォーマンスが上がり切らない印象を受けた。イラク代表戦の1失点目のシーンも、相手17番のアリ・ジャシムがペナルティエリア外側に回り込んできてクロスを上げた際、板倉の寄せがやや甘く、簡単に中にボールを入れた部分もあった。

「2試合を通して悪い時間帯に失点してしまっていることがチームを難しくさせてしまっている。試合展開と変えられるように、あの時間帯の失点をなくしていくようにいないといけないと思います。

 それによって、みんながより一層、余裕を持ってプレーできると思うし、自分たち主体の試合運びにできる。守備も自ずと行きやすくなるので、そう仕向けていかないといけない」と彼は過去2戦の反省を踏まえ、安易な失点をしないことを固く誓っていた。

 特にイラク代表戦で課題となったのが、ロングボールを蹴られた後の対応だ。

「ゴールキックやパントキックを含め、イラクは完全にセカンドボールを拾うためのロングボールを入れてきた。前線に18番(アイマン・フセイン)がいた中で、そういう戦術組んできたんですけど、サイドハーフも中に入って密集作ってセカンドボールだけを集中して狙いに来る形を取っていた。そういうのは今までなかったですし、より大会仕様に仕上げてきた印象はある」と守田も神妙な面持ちで語っていたが、板倉自身もそういった相手の出方に直面して「本当にアジアカップで勝つのは難しい」と痛感したに違いない。

●インドネシア代表戦はここまでの2戦と全く違ったものになる

 2019年1月にフローニンゲンへ赴いてから、シャルケ、ボルシアMGと渡り歩き、5年以上を欧州で過ごしている板倉。日本代表でも2019年コパ・アメリカからキャリアをスタートさせ、FIFAワールドカップカタール2022最終予選や本大会を経験。誰もが認める日本の守備陣の大黒柱と位置づけられている。

 そんな百戦錬磨の男にとっても、アジアカップ自体は初めて。特に中東での大会ということで、中東勢にとっては事実上のホーム状態。インドネシア代表にしても労働者や移民が多く、大勢のサポーターが詰めかけるだろう。そんな彼らが「日本から金星を挙げてやるんだ」と凄まじい勢いで挑んでくるのだから、一筋縄ではいかないのも当然だ。

 現実の厳しさを再認識したうえで、迎えるインドネシア代表戦はこれまでとは全く違ったものになるはず。インドネシア代表も5-4-1の守備重視のスタイルを採ってくるチームだが、最前線には185センチの長身FWラファエル・ストライクがいて、ヘディングは警戒しなければならない。両サイドもスピードには長けていて、カウンターも鋭い。イラク代表も一瞬の隙を突かれて左サイドの突破を許し、右から突っ込んできたマルセリーノ・フェルディナンに1点を奪われた。そこは要注意ポイントと言っていい。

 加えて言うと、敵将のシン・テヨン監督は日本代表に激しいライバル意識を燃やしている。あらゆる手段を使って勝ち点3を狙ってくるだろう。イラク代表がロングボール作戦で成功したのを参考に、ストライクや長身ボランチコンビに競り合いを仕掛けさせ、優位な状況に持ち込んでくることも考えられる。そういった想定を踏まえ、板倉には冨安と協力しながら綻びを作らないような対応が強く求められるのだ。

●今大会初のクリーンシートを達成するには?

「インドネシアは年齢的にも若い選手がすごく多くて、タフに戦ってくるなという印象ですね。あとは個人でゴリゴリっとスピードと勢いで突破を試みる選手が前にはすごく多いなと感じたので。そこの準備をしないといけないかなと思います。

 CKやスローインの対策も必要ですけど、まずはゴールを割らせないこと。そこが第一優先。その中でセットプレーを取られた時はより一層の集中力を持ってのぞまないといけないと思っています」

 板倉が語気を強めるように、とにかく失点しないことを最優先に考えるべき。リードされた時に巻き返す難しさは過去2戦から嫌というほど分かっているはずだ。その教訓を生かさなければ意味がない。

「今の状況に納得いっていないですけど、優勝できなくなったわけじゃない。自分たちでこういう状況に追い込んだのは間違いないですし、ここから盛り返して優勝までいきたいですし、ディテールのところを突き詰めていきたいです」

 周囲への洞察力や目配りに長け、自信を失いかけている若手に対しても声をかけられる板倉ならば、チーム全体の雰囲気を前向きにしていくことができるはず。そういう能力はむしろキャプテン・遠藤航より上かもしれない。そのキャラクターやマインドも生かしつつ、世界から注目されるトップDFの能力をいかんなく発揮してくれれば、インドネシア代表に翻弄されるケースは自ずとなくなっていくだろう。

 今こそ日本代表守備陣の底力を示し、相手を零封すべき時。日本の逆襲はここからがスタートだ。

(取材・文:元川悦子【カタール】)

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