【冨安健洋・分析コラム】だから冨安は重宝される。アーセナルのサッカーを成立させる難易度の高いプレーとは

【写真:Getty Images】

●冨安健洋が公式戦2試合連続アシスト

 プレミアリーグ第14節、アーセナル対ウォルバーハンプトンが現地時間2日に行われ、2-1でホームチームが勝利している。この試合で右SBとして先発出場を飾った冨安健洋は先制点をアシスト。誇らしいほどの活躍を見せているが、ミケル・アルテタ監督は冨安にさらなる成長の余白を見出している。(文:安洋一郎)

<a href="https://www.footballchannel.jp/2023/12/03/post522746/4/" target="_blank" rel="noopener">冨安健洋がアシスト!アーセナル対ウルブス ハイライト</a>

 ミッドウィークのUEFAチャンピオンズリーグ(CL)RCランス戦で2アシストの大活躍を披露した冨安健洋の活躍が止まらない。

 中2日で迎えた今節ウォルバーハンプトン(以下ウルブス)戦でも日本代表DFは右SBで先発に名を連ねると、開幕直後の6分に先制ゴールをアシスト。2-1での勝利に大きく貢献した。

 この活躍ぶりを地元メディアは高く評価。『Football London』では、10段階中チーム最高位タイの「8」、『Evening Standard』でもチーム2位タイの「7」が与えられるなど、冨安に対する信頼度と期待値は高まり続けている。

 そしてアーセナルのミケル・アルテタ監督も試合後の会見で日本代表DFを賞賛した。

 アルテタ監督が「まず注目すべきは、冨安が守備面で見せる安定感だ。非常に頼りになる」と語った通り、ウルブス戦でも冨安の守備は非常に安定感していた。

 注目したいのが相手との距離感だ。自陣の深い位置でウーゴ・ブエノとマッチアップしたシーンを筆頭に、日本代表DFは相手選手に抜かせない絶妙な間合いで対応している。

 入れ替わられないためにも、いきなり寄せることはなく、相手が自分の守備範囲に侵入してきたら一気に距離を詰めて自由を奪う。相手選手からすれば、攻撃の選択肢を徐々に減らされるこの守備対応を攻略する難易度はかなり高い。

 そして攻撃から守備への切り替えの部分でも持ち味を発揮した。

●トランジションで見せた冨安健洋の持ち味

 25分の場面では、レアンドロ・トロサールのシュートがブロックされて、そのこぼれ球がウルブスFWマテウス・クーニャに渡ったが、背後から冨安が身体を寄せたことで前を向かせず、サカと2人掛かりでボールを奪い切った。

 こうしたトランジションの部分での前からの積極的な守備はカウンターを食らわないだけでなく、二次攻撃、三次攻撃へと繋がる。ポゼッションと即時奪還の両方が強みであるアーセナルらしいアルテタ監督のサッカーを成立させるために欠かせないプレーだった。

 冨安の守備での貢献度の高さはスタッツにもハッキリと表れている。データサイト『Sofa Score』によると、チーム最多の5つのタックルを成功させた。加えてドリブルで抜かれた回数も0と、ウルブスの攻撃をほぼシャットアウトしていたと言っても過言ではない。

 対して、79分に冨安に代わって投入されたベン・ホワイトは、残りの時間で2回ドリブル突破を許した。86分にウルブスが1点を返し、その後攻撃のギアを入れたことを踏まえても、守備面での安定感に差があった。アルテタ監督が直近の試合で冨安を重宝している理由がよくわかる結果となっている。

●アルテタ監督が語る冨安健洋の伸びしろ

 冨安の守備面での貢献度の高さを絶賛していたアルテタ監督だが、攻撃面に関してはさらなる成長を期待しているようだ。

 スペイン人指揮官は「攻撃面でどんどん貢献していくのを見るのは、とても良いこと」と、賞賛をした上で「攻撃面ではまだ伸ばせる部分がある。特にクロスを上げるタイミングやポジショニング、チームメイトのためにスペースを作る動きだ」とコメントしている。

 冨安は2アシストを記録したUEFAチャンピオンズリーグ(CL)RCランス戦に続き、ウルブス戦でも抜群のポジショニングで右サイドからの攻撃を活性化させていた。

 6分の先制点のシーンでは、サカとマルティン・ウーデゴール、ガブリエウ・ジェズスが右サイドに流れていた中で、彼らが空けた中央のスペースにポジションを移して、絶妙なワンタッチパスでゴールをお膳立て。48分のシーンでは、相手の3バックとWBの間に生まれたスペースでデクラン・ライスからのパスを呼び込み、あわやゴールという絶妙なクロスをボックス内に送った。

 あくまでもアーセナルの最大の強みでもあるサカの突破力を絶大なポジショニングでサポートしつつ、自らにボールが渡ればパスやクロスでチャンスを演出する。「縁の下の力持ち」としてこれ以上ない働きをみせている。

 こうした好プレーがあった中でも「攻撃面ではまだ伸ばせる部分がある」というコメントが出たのは、アルテタ監督が冨安のポテンシャルを買っている証拠でもある。

 それだけに、79分にふくらはぎを痛めて交代となったのは気掛かりだ。12月から年明けまでアーセナルは週2試合のペースの過密日程が組まれており、適度なローテーションを組むには冨安のようなユーティリティプレイヤーが欠かせない。怪我が重くならないことを祈るばかりだ。

<a href="https://www.footballchannel.jp/2023/10/25/post518309/" target="_blank" rel="noopener">冨安健洋が解決した今季のアーセナルの課題。完全スタメン奪取は近いのか【CL分析コラム】</a>
<a href="https://www.footballchannel.jp/2023/05/10/post502215/" target="_blank" rel="noopener">給料高すぎ!? アーセナル、年俸ランキング1〜10位</a>

ジャンルで探す