遠藤航がリバプールで生き残るためには? クロップ監督から託されるミッション【EL分析コラム】

【写真:Getty Images】

●リバプールがホームで快勝

 UEFAヨーロッパリーグ(EL)・グループリーグE第5節、リバプール対LASKリンツが現地時間11月30日に行われ、4-0でホームチームが大勝した。サッカー日本代表MF遠藤航はフル出場を達成。前節トゥールーズ戦と大きく異なり、攻守で存在感を放った。そんな遠藤がチームで生き残るためには。(文:小澤祐作)

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 サプライズは起きず、試合後のアンフィールドは拍手に包まれた。

 UEFAヨーロッパリーグ(EL)・グループリーグ第5節でオーストリアの強豪LSAKリンツを迎えたリバプールは、12分にルイス・ディアスの強烈なヘディングシュートで先制点を奪うと、その3分後にコーディ・ガクポが追加点をマーク。後半に入っても攻撃の手を緩めることはなく、51分にモハメド・サラーがPKを沈め、アディショルタイムにはガクポがダメ押しの4点目を奪った。対してLASKにはGKクィービーン・ケレハーの活躍もあって得点を与えず、4-0という完璧なスコアで試合を締めている。

 同日に試合を行なっていたグループEのもう1試合で2位のトゥールーズがユニオン・サン=ジロワーズとスコアレスドローに終わったため、この時点でリバプールの首位通過が確定。過密日程が続く中、第6節で大幅なターンオーバーを採用できるのは大きく、ユルゲン・クロップ監督も「それは(首位に立っていることは)良いことであり、これから忙しくなるスケジュールをこなしていく上でとても重要なことだね」とコメントを残している。

 そんなLASK戦で、サッカー日本代表MF遠藤航は先発入り。そしてフル出場を果たした。

●最悪のトゥールーズ戦を経て…

 ELグループ第4節、トゥールーズ戦における遠藤のパフォーマンスは最悪だった。ボールを刈りにいくも簡単にかわされるなど、守備で後手を踏み続け、あわや退場という場面もあった。その結果、前半のみで交代を命じられており、試合後は現地のメディアや解説者から批判の嵐を浴びている。

 そこから4週間が経過し迎えたLASK戦。遠藤にはトゥールーズ戦のネガティブなイメージを払拭する必要があったが、見事にそのミッションをこなしてみせた。

 立ち上がりはややバタバタした印象が否めなかったが、時間が経過していくにつれ、遠藤は本来の姿を取り戻した。15分には、読みを利かせたパスカットからの丁寧なつなぎで攻撃の起点に。そこからガクポの2点目が生まれている。

 62分には自陣中央でトレント・アレクサンダー=アーノルドからのパスを収めると、ドリブルで相手2人を置き去りに。最後はそのカバーに入った選手に体を寄せられながらも奪われることなく、ハーヴェイ・エリオットにボールをつなぐなど、一気に局面を変えた。このシーンからも明らかな通り、この日の遠藤は消極的ではなく、どこか自信と余裕を持ったままプレーできている印象があった。

 それはスタッツにも表れていると言えそうだ。パス成功数61本はジャレル・クアンサーに次ぐチーム2位の成績で、インターセプト数4回とキーパス数3本はいずれもチームトップタイ。上記の場面でドリブル成功数1回も記録するなど、攻守において存在感を放っていた(スタッツはデータサイト『Who Scored』を参照)。

遠藤航がリバプールで生き残るためには

 しかし、今回の相手はリバプールから見て格下のLASKだ。遠藤のパフォーマンスは確かに良かったが、これがレギュラー奪取への大きな説得材料になるかと言えば、やはりそうではないだろう。

 日本代表の心臓はまだプレミアリーグのプレースピードに慣れているとは言い難い。加えて中盤のライバルにはプレミアレベルの強度で戦えるうえに技術と創造性も兼ね備えたアレクシス・マック・アリスター、ドミニク・ショボスライという怪物がいる。とくに遠藤には攻撃面のクオリティーが欠けており、そうなるとレギュラー争いで彼らを上回ることは難しくなる。

 しかし、クロップ監督に信頼されていないわけではない。先日のマンチェスター・シティとのビッグマッチでクローザー起用されたのは、その1つの証拠だろう。遠藤はジェレミー・ドクをタクティカルファウルで止め、終盤にはセットプレーの場面で体を張りシュートを防ぐなど、短い時間ではあったものの与えられた役割をしっかりとこなして見せた。

 プレミアリーグではクローザー、カップ戦ではスタメンとして信頼に応えていく。まるで昨季までリバプールに所属していた鉄人MFジェームズ・ミルナーのようだが、今の遠藤がチームで生き残っていくためには、まずこのミッションをしっかりと遂行していくことが大事だ。

 さきほど遠藤はプレミアリーグのプレースピードに慣れていないと記したが、まだ初挑戦から半年も経っていないと考えれば当たり前のことかもしれない。後にプレミアリーグやUEFAチャンピオンズリーグ(CL)優勝の立役者となるファビーニョも加入から適応までにかなりの時間を要していた。

 そういった意味でも、現状の遠藤の立ち位置は決して悪くない。ミルナーがこなしてきた仕事を受け継ぎながらプレミアリーグの舞台に慣れていけば、いずれ本当にリバプールの貴重なピースになるはずだ。

(文:小澤祐作)

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