遠藤航が見たリアルな現実。サッカー日本代表ボランチ、田中碧と伊藤敦樹の現在地【現地コラム】

●遠藤航と守田英正が不在のボランチ

 サッカー日本代表は現地時間12日、キリンチャレンジカップ2023でトルコ代表と対戦し、4-2で勝利した。この試合では遠藤航と守田英正に代わり、伊藤敦樹と田中碧がボランチで先発。伊藤に代表初ゴールが生まれるなど、良さも出た一方で、遠藤らとの差も顕著に表れていた。(取材・文:元川悦子【ベルギー】)
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「中2日でのトルコ戦になりますので、ドイツ戦からは大幅にメンバー変更をして試合に臨みたいなと思います」

 日本代表の森保一監督が試合前日に公言した通り、12日のトルコ代表戦は9日のドイツ代表戦からスタメン10人を変更。全く新たなチームで挑むことになった。

 先発11人の中で、昨年のFIFAワールドカップ(W杯)で先発経験があるのは、谷口彰悟と田中碧、堂安律、久保建英の4人だけ。しかも、今月10日に25歳になったばかりの田中碧がキャプテンマークを巻くというフレッシュな陣容だ。代表経験の乏しい面々がユーロ(欧州選手権)2024予選グループCで2位につけるトルコ代表にどんな戦いを見せるのか。そこは非常に興味深かった。

 特に、注目すべき点だったのが、遠藤航と守田英正が不在のボランチ陣。今や「鉄板コンビ」となった2人が揃って不在となると、攻守両面への影響は少なくない。そこで、田中碧と伊藤敦樹の「同級生コンビ」が新たな色合いをもたらしてくれれば、日本代表の戦い方の幅も広がる。そんな期待も高まった。

 だが、序盤の日本代表はトルコ代表に押され気味だった。相手アンカーのサリフ・エズジャンらを中心とした球際や当たりの強さに苦しみ、ゲームコントロールに苦慮している印象もあった。

 それでも、15分、彼らは効果的な崩しから目の覚めるような先制弾をお見舞いする。

●田中碧と伊藤敦樹の関係性「敦樹が思い切って出ていくなら…」

 田中碧から毎熊晟矢にボールが渡り、右ペナルティエリア外側で堂安がキープ。伊藤敦樹が右外のスペースに流れてパスを受けた。次の瞬間、彼はインサイドにドリブルで運び、堂安に預けてリターンを受けると左足を一閃。豪快なミドル弾を決めたのである。

「左のゴールは多いですけど、あそこまでのミドルの形は初めて」と本人も驚き半分だった豪快弾が決まり、日本代表は早々とリードすることに成功した。

 23分の飲水タイムを経て、さらにギアを上げた彼らは28分と36分に中村敬斗が立て続けにゴール。3-0とリードを広げる。この時間帯の両ボランチは主導権を握ってボールを動かすことができていた。

「敦樹が思い切って出ていくなら、僕はそのままステイしながらで。日本の右サイド、トルコの左サイドの守備が緩いという話をしていて、実際に右から前進する回数も多かったんで、そこは(敦樹に)任せて、僕はそこまで高い位置に出ないようにしていました」

 田中碧は伊藤敦樹のよさを引き出すようなポジショニングを心がけたという。その判断が奏功していたのは確かだろう。

 ここまではある程度の収穫を得られたが、前半終了間際にリスタートから失点。日本代表は3-1で試合を折り返す。後半開始と同時にトルコ代表は温存していたハカン・チャルハノールら主力を投入。中盤の支配力を高め、よりアクションを起こしながら日本陣内に攻め込み始めた。

●両者が振り返る課題

 日本代表のダブルボランチはその変化に的確に対応し、運動量とインテンシティを引き上げる必要があった。が、デュエルの部分で負けたり、ボールを奪い切れなかったりと守備面で劣勢に立たされるケースが目立つようになってしまう。

「守備のところではフィルターになりきれなかった」と伊藤敦樹が言えば、田中碧の方も「後半になって強度が落ちた分、球際で負けたり、奪われたりした。まだまだ足りないなと感じさせられました」と反省する。2人揃って対人のところで勝てない場面も散見されたあたりは大きな課題だったと言っていい。

 中盤でボールを引っかけられ、2失点目を食らった61分の場面などは、中盤に大きなスペースが空いた典型例。右サイドでジェンギズ・ウンデルがフリーでボールを持った瞬間、伊藤洋輝の寄せが中途半端になり、左に展開され、最終的にはゴール前のベルトゥー・ユルドゥルムに決められた。こういう時こそ、田中碧と伊藤敦樹の両ボランチには未然に防ぐ動きをしてほしかった。

 守備の修正が難しいと判断した森保監督は19分に遠藤を投入して田中碧とコンビを組ませた。交代を命じられた伊藤敦樹は「航さんは守備で存在感を出して、攻撃面でもより前に出ていくことができていた。あの存在感は自分の目指すところ。今日は手ごたえもありましたけど、課題の方が多く残る試合になりました」と神妙な面持ちで語っていた。

遠藤航から見た新ボランチコンビの出来

 百戦錬磨の遠藤が出てきて悪循環を断ち切り、同じく途中出場の伊東純也がかつての本拠地で豪快なドリブル突破を見せ、PKをゲット。これを自ら決めて4-2で勝ちを引き寄せた。彼ら主力メンバーが終盤に活力を与えてくれたこともあり、日本代表は9月シリーズ2連勝。北中米W杯での成功にまた一歩近づくことができた。

 新たなトライだった田中碧・伊藤敦樹のボランチコンビに関して言えば、いい距離感で攻守の好連係が見られた時間帯とデュエルや球際で負けていた時間帯があり、悲喜こもごもの出来だったと見ていい。ただ、初めて組んだ割には息も合っていたし、サイズ感のある2人にはスケール感も見て取れた。もう少し時間重ねていけば、遠藤と守田とは違ったストロングを発揮してくれそうな前向きな予感を漂わせたのも事実だ。

「球際に行く意識はよかったんじゃないですか。敦樹はそれが良さだし、碧も守備の部分をもっと改善しなければいけないという意識は強く持っているんで。ボールの動かし方なんかはすごくスムーズな形が何回かあったし、1人1人がうまく判断していきながらやっていたので、前向きに捉えていいと思います」とキャプテン・遠藤も及第点を与えていた。

 2人が遠藤・守田の鉄板コンビと肩を並べる領域にはまだ至ってはいないものの、今後連係を深め、デュエルの部分を改善し、お互いのよさを生かし合えるようになっていけば、選手層が厚くなるし、戦い方にもバリエーションが生まれる。今回の新コンビが示した可能性を日本代表として確実に今後に生かしていくことが肝要だ。

(取材・文:元川悦子【ベルギー】)

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