クロアチアの決勝進出が必然だった理由とは。英国を苦しめた90分間と、明暗を分けた30分間【ロシアW杯】

現地時間11日、ロシアワールドカップ準決勝クロアチア対イングランドの一戦が行われ、2-1でクロアチアが勝利し、決勝へ駒を進めた。なぜヴァトレニはファイナル進出の切符を手に入れることができたのか。それは最後の30分間に理由が隠されている。(文:小澤祐作)

決勝進出を果たしたクロアチア代表【写真:Getty Images】

先制点献上も、焦りは見られず

 現地時間11日、ロシアワールドカップ準決勝クロアチア対イングランドの一戦が行われ、2-1でクロアチアが勝利し、決勝へ駒を進めた。なぜヴァトレニはファイナル進出の切符を手に入れることができたのか。それは最後の30分間に理由が隠されている。(文:小澤祐作)

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 ズボニミール・ボバン、ダボール・スーケルを擁し1998年フランスワールドカップ3位に輝いたクロアチア代表。この成績は以降20年間、越えられることはなかった。

 しかし、歴史は変わった。ロシアワールドカップ準決勝、ヴァトレニのイレブン達はイングランド代表を2-1で下し、初の決勝進出を決めたのである。

 クロアチアはこれまでと同じく4-5-1の布陣でスタートした。メンバーは7日に行われた準々決勝ロシア戦から一人を変更。アンドレイ・クラマリッチに変えマルセロ・ブロゾビッチを先発に起用し、イバン・ラキティッチと2ボランチを組ませた。そして、ロシア戦では中盤の底に入っていたルカ・モドリッチをトップ下に配置。それ以外に大きな変更はなかった。

 対するイングランドは3-5-2のフォーメーションでスタート。メンバーは準々決勝スウェーデン戦から変更なく、両チームともベストメンバーで挑む形となった。

 試合開始早々、さっそくゲームは動く。ペナルティエリア手前でデル・アリがファウルを受け、FKを獲得。これをキーラン・トリッピアーが見事に沈めスリーライオンズがいきなり先制ゴールを奪った。イングランドはこれで計12得点のうち実に9ゴールがセットプレーから生まれたという結果に。いきなり強みを前面に押し出した。

 しかし、デンマーク戦、ロシア戦と2試合続けて先制されながらも追いつくことができたという自信があったのか、リードされている状況でもクロアチアに焦りの色は見受けられなかった。

 中盤でパスを回しながら確実に相手ゴール前まで迫っていた。イングランドは先制ゴールを奪った余裕からか最終ラインを深い位置まで下げていたため、高い位置でボールを奪取することができずにいた。カウンター時は長いパスからラヒーム・スターリングを走らせるという展開が多く見受けられ、いくつかチャンスも作ってはいたが、ペースはクロアチア、というような前半の印象であった。

守備力が光ったクロアチア

 事実、前半だけのスタッツを見ると支配率はクロアチアの52%に対しイングランドは48%。シュート数も前者の5本に対し後者は4本と押し込んでいたのはクロアチアだった。

 後半、いつ同点に追いついてもおかしくはないという雰囲気の中、時間は流れていったが、やはりクロアチアが得点を奪った。68分、右サイドからシメ・ヴルサリコがクロスを上げると、ファーサイドで待っていたイバン・ペリシッチが反応。左足で合わせネットを揺らした。

 マークについていたはずのトリッピアーはこのシーンで完全にペリシッチを見放してしまった。また、ボールウォッチャーになっていたカイル・ウォーカーも背番号4の存在には気づかず。また、サイドからサイドへの展開が多かったクロアチアがイングランドのDF陣を揺さぶったことで、左ウィングバックのアシュリー・ヤングのスライドが遅れたことも一つのポイントだ。そのため、ヴルサリコがフリーな状態でクロスを上げることに成功した。

 追いつかれたイングランドは反撃に出ようと試みるが、クロアチアのDF陣を前に効果的な攻撃を繰り出すことはできなかった。デヤン・ロヴレンドマゴイ・ヴィダの2CBは安定しており、カウンター時の対応もほぼ満点。スリーライオンズのセットプレー時はやはり脅威だったが、ハリー・ケインは影を潜めており、ジェシー・リンガードやデル・アリなどもシュートまで持ち込む場面は少なかった。

 モドリッチまでもが最終ラインに加わるクロアチアの守備はそう簡単には崩れない。ボールを保持するヴァトレニに対してスリーライオンズはカウンターしか出せる手がなく、長いボールを前線に供給しては跳ね返されるだけ。セカンドボールを拾えていたのは唯一良かった点だが、以降が続くことはなかった。90分間、イングランドは苦しめられていたと言ってもいいだろう。

クロアチアは延長戦に慣れていた

 そのまま勝負は延長戦に入ったが、立ち上がりを見てクロアチアの勝利を確信した。イングランドDF陣を目で追い続けると、完全に足が止まっており、CBとWBの距離感はバラバラだった。105分にマリオ・マンジュキッチがフリーでシュートを放ったシーンを見てみても、ジョン・ストーンズは完全に振り切られている。

 そして109分、ペリシッチが頭で反らしたボールをマンジュキッチが押し込んだ。この場面でもストーンズは完全に足が止まっており、反応が遅れていた。ペリシッチと競り合ったトリッピアーも疲れからか跳ぶこともままならず。逆に、クロアチアは延長戦でも何度かチャンスを作るなど終始タフだった。疲れを知らぬその献身性は、日本を含め各国が見習うべきだろう。

 そして試合終盤に入りトリッピアーがプレー続行困難な状況となった。すでに交代枠4枚を使い切っていたイングランドは残り5分を10人で戦うことに。追いかけているスリーライオンズにとって残された時間はわずかだったが、それでも一人少ない中で戦うという点は非常に難しかっただろう。

 クロアチアのズラトコ・ダリッチ監督は、交代カードを90分間で一度も使わなかった。延長前半開始早々にイバン・ストリニッチが負傷により交代を余儀なくされたものの、指揮官は先を見据えていたのかその他の交代を急ぐことはなかった。そして、リードした状況でヴェドラン・チョルルカミラン・バデリといった守備的な選手を一気に投入することに成功した。

 延長戦の戦い方に慣れていたのは間違いなくクロアチアだった。90分間で決着をつけられなかったイングランドの敗退は、必然だったのかもしれない。

(文:小澤祐作)

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