惨劇の開幕戦は欧州とアジアの縮図。ロシアの圧勝に見る新たな世界のトレンド【ロシアW杯】

ロシアワールドカップの開幕戦となるグループリーグA組第1節、ロシア代表対サウジアラビア代表が現地時間14日に行われた。結果は開催国ロシアが5-0と圧勝。この一戦は欧州とアジアの差を明確に表すと同時に、新たな世界のトレンドを予感させる結果となった。(文:海老沢純一)

サウジアラビアに5-0と大勝を収めたロシア代表【写真:Getty Images】

ボール支配率ではサウジが圧倒も…

 ロシアワールドカップの開幕戦となるグループリーグA組第1節、ロシア代表対サウジアラビア代表が現地時間14日に行われた。結果は開催国ロシアが5-0と圧勝。この一戦は欧州とアジアの差を明確に表すと同時に、新たな世界のトレンドを予感させる結果となった。(文:海老沢純一)

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 4年の歳月を経て、再びワールドカップが幕を開けた。

7万8011人の大観衆が詰めかけたルジニキ・スタジアムでの開幕戦、ピッチに立ったのは開催国ロシアと日本とともにアジア最終予選B組を勝ち抜いたサウジアラビアだった。

 ロシアは、今大会の出場32ヶ国でFIFAランキングが最も低い70位で、サウジアラビアは2番目に低い67位となっている。ロシアは開催国のため予選を戦っていないことが響いているが、強豪国が揃う欧州ではやはり力の劣るチームである。

 その両国の一戦は、ある意味では欧州とアジアの縮図ともいえる結果となった。

 90分を通してボールを持っていたのはサウジアラビアだった。オプタによる試合後のスタッツを見ると、ボール支配率38.7%(ロシア):61.3%(サウジ)と大きな差が生まれ、ボールタッチ数は543回:754回、パス本数は343本:558本、パス成功率も73%:81%とサウジアラビアが上回っていた。

 それでも、12分にCKの流れからガジンスキーが頭で先制点を挙げると、43分には“ガラスのエース”ジャゴエフの負傷によって投入されたチェリシェフが追加点。後半にはさらに3点を追加して5-0という圧倒的なスコアでロシアが試合を制した。

 試合を見ていても、スタッツに現れている数字のようにサウジアラビアがボールを持っているという印象はなかった。むしろ、試合の立ち上がりから押し込んでいるのはロシアという印象が強く、終始ペースを握っていたのは開催国側だった。

 なぜ、このような展開となったのか。それは、より詳細なスタッツを見ると明らかになった。

ロシアが5得点圧勝を遂げた理由

 ボールを保持していた割合はサウジアラビアが勝っていたものの、両チームのプレーエリアを見ると、ロシアは自陣ゴール前が31%、ピッチ中央が29%、そしてアタッキングサードが40%だったのに対して、サウジアラビアは自陣ゴール前で54%、ピッチ中央で31%、アタッキングサードで15%と真逆の結果となった。

 つまり、サウジアラビアが多くの時間でボールを持っていたのは自陣ゴール前。持っていたのではなく、持たされていたという方が正しいだろう。

 そして、インターセプトの回数を見るとロシアの13回に対してサウジアラビアは8回。さらにドリブル突破の回数ではロシアの10回に対してサウジアラビアは7回と1対1の局面ではロシアに軍配が上がっている。

 その結果、決定的なパスの数でも12回:4回、シュート本数でも14本:6本とロシアが上回り、枠内シュートに至ってはロシアの7回に対してサウジアラビアは0本という結果となった。

 これは、両チームのプレースピードに大きな違いがあったためだろう。サウジアラビアはゆっくりとDFラインからボールを回してリズムを作ろうとしていたが、ロシアは中盤から前線でプレスを仕掛けてボールを奪えばすぐに縦や斜めにパスを入れるなど素早く攻撃に転じた。

 サウジアラビアの選手たちは自陣ゴール前でバタつくなど、ロシアの攻守の切り替えの早さに明らかについていけていなかった。開幕戦の雰囲気に呑まれたのも要因と考えられるが、プレースピードの速さにも圧倒されたはず。

 アジアでの戦いでは、じっくりとボールを回している余裕があるが、やはり欧州のチームを相手にそれは許されない。

攻守に随一の活躍を見せた22歳

 選手個人に目を向けると、背番号17番の22歳、アレクサンドル・ゴロビンの存在が際立っていた。

 左ウイングで先発し、ジャゴエフの負傷交代後はトップ下に入ったゴロビンは、4回のタックルで3度のインターセプトを成功させ、両チーム最多となる5本の決定的なパスを繰り出した。

 攻撃面では12分の先制点をアシストすると、43分の2点目でも起点となり、71分の3点目となるジューバのゴールもアシスト。さらにアディショナルタイムにはFKからチーム5点目となる得点を決めるなど、攻守にわたって随一のパフォーマンスで勝利に貢献した。

 こういった強さと巧さを兼ね備えた選手は世界基準で見れば少なくはないが、アジアではまだまだ存在しない。

 振り返れば、ヨーロッパリーグはアトレティコ・マドリーが制し、チャンピオンズリーグではローマがバルセロナを下し、マンチェスター・シティを破ったリバプールとバイエルンを破ったレアル・マドリーが決勝を戦った。いずれもクラブレベルではボール支配率を必要としないチームが勝ち上がる現象が起きている。

 毎回、ワールドカップではその後のトレンドとなるようなスタイルが注目を集めるが、「非ポゼッション」のスタイルが本格的に世界のスタンダードとなるのかもしれない。

(文:海老沢純一)

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