日本代表に電撃合流、長谷部誠が見た“森保ジャパン” 「中から見る代表は違った」レジェンドが抱いたチームへの期待感

元日本代表MF長谷部誠が3日間森保ジャパンに合流【写真:FOOTBALL ZONE編集部】

元日本代表MF長谷部誠が3日間森保ジャパンに合流【写真:FOOTBALL ZONE編集部】

9月22日から24日の3日間に渡り森保ジャパンに帯同

 日本代表の前キャプテンであるドイツ1部フランクフルトのMF長谷部誠が、9月22日から24日の3日間に渡り、カタール・ワールドカップ(W杯)に向けて準備を進める森保ジャパンに帯同した。

 合流初日となった22日、反町康治JFA(日本サッカー協会)技術委員長は練習前に急遽、報道陣に集合をかけた。そこで説明されたのは、今回のインターナショナルウィークの期間に4日間、長谷部が所属するフランクフルトがオフになるため、その間を利用して日本代表に帯同するというものだった。

 反町技術委員長は、「これは森保一監督を含めた、我々からのリクエスト」だと明かし、数か月前からフランクフルトにオファーを出していたという。さらに「昨年はUEFAヨーロッパリーグ、今年はUEFAチャンピオンズリーグを戦っており、ワールドカップ(W杯)で世界のサッカーも熟知していて、ヨーロッパのサッカーも熟知していると、非常に我々にとって大きなプラスになる」と、代表を引退した38歳の現役選手による異例のチーム帯同の意義を説明していた。

 実際に初日の練習が始まると、長谷部はコーチングスタッフと同じ黒いジャージに身を包み、反町技術委員長と話し込む姿が見られた。23日も選手たちと同じロッカールームに入っていく姿は見られたが、報道陣の前で選手たちと積極的に関わる場面はなかった。そして最終日の24日には、田嶋幸三JFA会長と話し込む姿が見られ、練習でゴールを運ぶ際に手伝う姿も見られたが、ここでも現役の選手たちとは一線を画す形だった。

 メディアが目にする場所で、それほど選手たちと関りを持たなかった長谷部だが、舞台裏となる宿舎では、選手たちと濃密な時間を過ごしたようだ。

 普段からフランクフルトでチームメイトのMF鎌田大地は、「ハセさんのミーティングもありましたが、僕はもう聞かなかった(笑)。W杯や日本代表についての意見を話していましたが、僕が聞くのは初めてじゃない。6年一緒にいるので、喋ることはある程度、喋っているので」と言いつつも、「ハセさんと一緒にいれるのは、普通のことではないかもしれない。ほかの選手からしたらレジェンドだと思いますし、そういう人の話を聞けたり、話したりすることは貴重だと思いますが、僕はチームメイトなので当たり前のことですし。みんなにとっては良かったと思います」と、経験を還元していたことを明かす。

長谷部と初対面だった古橋「本当に1つ1つが良い言葉だった」と感慨

 フランクフルトと対戦した際にも、長谷部と会っていたMF堂安律(フライブルク)は「不思議な感覚でした。現役の選手でありながら、こうして少しスタッフの感じで来てくれているので。ビーレフェルトにいる時に同じピッチでも、フランクフルトと戦ったので、変な感覚はありました。ただ、経験値はずば抜けて高い方なので、すごく影響を受けました。『ブンデスリーガ、今こうだよね』とかフライブルクの話もしてくれました」と、振り返った。

 今回、初めて長谷部と会ったというFW古橋亨梧(セルティック)は、「すごい方だと感じましたし、あの年齢でトップでやっている方なので、ある意味刺激になりましたし、僕も何歳までサッカーできるか分かりませんが、少しでも長く現役で続けられるように頑張れたらなと思わせてもらいました」と、38歳の長谷部の存在に刺激を受けたという。

 アドバイスも受けたようだが「自分の中に留めておきたい」と前置きしつつ「でも、1つ1つの言葉が重みがあるというか、心に刺さる。本当に1つ1つが良い言葉だったので、この3日間、一緒に食事したり、話をしたりすることができて、すごく良い刺激をもらいました。日の丸を背負うことは、たくさんの人が応援してくれることで、たくさんの人が支えてくれていること。みんなのおかげでこうしてサッカーができるので、改めて感謝の気持ちを持って、1分、1秒のプレーを大切にしないといけないと思いました」と、日本代表として戦う心構えを新たにしたことを明かしている。

 若い選手たちに欧州サッカーや世界のサッカー情勢、日本代表としての心構えを伝えたことも大きな役割を担ったと思うが、それ以上に長谷部の存在によって、リフレッシュできたのは、おそらくベテランではないだろうか。若手選手はベテラン勢に相談できる一方で、ベテラン勢にとっては、なかなか自分のことを相談できる相手もいない。過去に複数大会、W杯をともに戦った長谷部の存在は、そんな2人のベテランにとっても、心強かったはずだ。

 長谷部の合流が伝えられた22日、取材に応じていたDF長友佑都(FC東京)は、長谷部との会うのは4年前のロシアW杯の時以来であり、「最も会いたかった人」と話していた。そして24日には、再び長谷部と日本代表チームで過ごした3日間を振り返り、「僕はずっと長谷部誠にくっ付いていました。多分、めっちゃウザがっていたと思う。でも、そのくらい凄い。居るだけで精神安定剤になる。改めて、すごいパーソナリティーだなと、整ったなという感じです。サウナに入った後みたいです」と、独特の表現で長谷部効果を語った。

 23日のアメリカ戦後には、DF吉田麻也(シャルケ)も「個人的には、心強い。若手にも刺激になると思う。外から客観的にどう見えているのか、長谷部さんにしか見えないようなこともあるかもしれない。それを個別にも話して、アドバイスももらっている。貴重なオフに申し訳ないし、『自分が来ても良いものなのか』と話していたけど、個別に『ぜひ来てほしい』と伝えました。W杯で戦う相手は、総力戦が必要な相手と理解してくれている」と、長谷部の帯同を歓迎していた。

「この場に来て、自分自身のためになったかなという感じのほうが強い」

 チームに帯同した長谷部は、「基本的に、(吉田)麻也を中心に経験のある選手はたくさんいるので。そういう選手たちが、これまでの経験をチームに注入している部分はある。そのなかで若い選手、若くなくても初めてW杯を戦う選手がたくさんいるので、そういう選手たちからは、一緒にご飯を食べる時にW杯の雰囲気とか、そういうことを聞いてくれました。

 それが自分の言葉で伝えて、伝わっているか分かりませんが、彼らもW杯は特別という思いがあるなかで、今の選手たちは結果を出したいという思いをヒシヒシと感じました。多くの選手がヨーロッパで、よりプレーするようになり、彼らが普段やっていることのレベルの高さも話をしていて感じたので、それは間違いなく日本代表にプラスになっていると思うので、それぞれのチームで、それぞれのやり方でやっているものを、日本代表に少しでも還元できていけば日本代表はさらに強くなるんじゃないかなという感覚は持っています」と、チーム内で過ごして見えた印象を語った。

 そして、「この場に来て、多くのことを学べた3日間で日本代表のためになったというより、自分自身のためになったかなという感じのほうが強いです。みんなの前で話してと言われて、どういう話をすればいいかなと思いましたが、聞きたいことがある選手は質問もしてくれましたし、本当に僕自身も何かができると思ってあまり来ていない。ただこうして久しぶりに日本代表の中に入り、見えるものはたくさんありました。外から見る今の日本代表よりも、中から見る今の日本代表は違うものがあった。W杯本番に向けて、すごく期待の持てるチームだと中から見て思いました」と、カタールでの戦いへの期待を膨らませた。

 若手からベテラン、さらにはチームスタッフも含め、チームに関わるほとんどの人たちが長谷部の存在から刺激を受けたはず。吉田が語ったように、チーム内にいる者だけでなく、チーム外にいる者も含めて「総力戦」で臨まなければ、ドイツやスペインといった相手には勝つことは難しい。そうしたなかで長谷部は、3日という短期間でも新たな刺激を森保ジャパンに残していってくれたはずだ。(河合 拓 / Taku Kawai)

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