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“優等生監督”リー・シャオポン電撃誕生 中国代表チーム、指揮官交代の裏事情とは?

写真は中国代表【写真:Getty Images】

写真は中国代表【写真:Getty Images】

【中国サッカー考察コラム#6】中国代表のリー・シャオポン新監督はどんな人物?

 日本のサッカーファンの皆さま、こんにちは。中国サッカーメディアにて活動している久保田嶺です。今回は、中国代表の新監督に電撃就任した李霄鵬(リー・シャオポン)について書きたいと思います。来年1月27日に行われるカタール・ワールドカップ(W杯)アジア最終予選の日本対中国戦の一戦が彼の初戦となり、また日本にとっても非常に大切な試合となります。新監督のリー・シャオポンがどのような人物なのか理解することで、日本代表が勝利を掴み、何より1月の戦いがより面白いものになれば幸いです。

「なでしこジャパンに苦しめられた監督」

 リー・シャオポンは、1975年山東省青島市生まれの46歳。現役時代は94年のデビューから2005年の引退まで山東泰山でプレーし続けて200試合以上に出場、2002年の日韓W杯でも右サイドハーフとして3試合に出場した中国サッカー界レジェンドの1人です。

 30歳という若さで2005年に引退し、その後10年より中国女子サッカー代表の監督となります。しかし、ここでは、2011年のドイツ女子W杯で優勝することになる澤穂希率いるなでしこジャパン(日本女子代表)が大きく立ちはだかり、思うような結果は残せませんでした。2010年の女子アジアカップでは、日本との3位決定戦に敗れて4位。この結果により11年W杯出場権を手にできず、またロンドン五輪アジア予選でも同組の日本などに敗れ、本大会出場権を逃してしまいます。

 彼は中国女子代表監督として「アジアカップで初めてメダルを逃す」「ワールドカップ出場権を初めて逃す」「オリンピック出場権を初めて逃す」という不名誉な記録を3つ持っており、決して中国女子代表監督としては成功できたとは言えないかと思います。

 中国女子代表監督後は、故郷でもある現中国3部の青島海牛や山東泰山で指揮を取り、2021年は武漢にて監督をしておりましたが、先日の李鉄(リー・ティエ)解任に伴い新監督に就任しました。

リー・ティエ監督は豪州戦ドローと「32分間の会見」が発端で更迭

「リー・ティエ32分間の会見、選ばれたのは優等生監督」

 先日電撃解任となった前中国監督のリー・ティエですが、以前から解任の噂はあったものの、11月のW杯アジア最終予選オーストラリア戦後に一気に状況が変わり、そのまま更迭となりました。

 大きな原因として、リー・ティエのオーストラリア戦後の32分間の記者会見があります。オーストラリア戦が1-1という結果に終わり、本大会出場が非常に厳しい状態になったことに対し、「この隔離生活がどれだけ残酷かあなたたち記者には分からないだろう(中国代表はコロナウイルスの影響により、ホームゲームは第三国で開催)」「ホームでやろうと、第三国でやろうと結果は変わらないと言うファンがいるが、ヤツらは頭がおかしい。もし中国で試合ができていれば我々は勝ち点6を取っている」「誰も私より中国サッカーを理解している人間はいない。私は誰より中国サッカーを理解しており、誰よりも中国代表を理解している」といった内容を、怒りながら32分間話続けました。

 この会見の異例の長さ、そしてリー・ティエの態度や内容は瞬く間に中国メディアで批判され、後日リー・ティエは自身のSNSにて「しゃべり過ぎた」と謝罪。しかしあろうことか、その謝罪投稿には彼自身のスポンサーの商品写真があり、広告疑惑が持ち上がりさらに大炎上。結果、一気に解任となりました。

 このことから中国サッカー協会は、とにかく問題を起こさない、記者やサポーターと揉めない人物を今回は探したと言われており、そこで選ばれたのがリー・シャオポンです。

 彼はメディアや周囲の人間との関係構築力に優れていると言われ、中国メディア「東方体育日報」も彼の結婚式のエピソードを例に、「彼は周囲の人間と関係を構築する力に優れている。例えば彼が結婚式を挙げた当時、中国代表は2つの派閥に分かれていた。しかしリー・シャオポンの結婚式には当時の中国代表選手が皆喜んで参加した」と紹介しています。指導した選手からの人望も厚く、マンチェスター・ユナイテッド香川真司(現PAOK)とプレーし、2019年に彼の元でプレーしたベルギー代表MFマルアン・フェライニも「彼はとても友好的で、そして時に厳しい素晴らしい監督だ」と山東泰山チーム広報誌にて称賛しております。

 リー・ティエという個性の強いカリスマ性のある監督に替え、管理しやすい優等生監督を選んだと言われる中国サッカー協会。しかし、リー・シャオポンも18年、19年に山東泰山を率いた際、2年連続で中国スーパーリーグ最優秀監督を受賞するなど、優等生であるだけでなく、優秀な監督でもあることは間違いありません。

 給与未払いのチームが10以上あることが発覚した中国リーグ、中国一のメガクラブ広州FCも親会社広州恒大の経営危機の影響を受けるのは必須であり、またリー・ティエ監督の電撃更迭と、いい話が最近ない中国サッカーですが、この新監督就任という出来事を機に、少しでも良い方向に進んでいけることを願っております。

[著者プロフィール]
久保田嶺(くぼた・れい)/1991年生まれ、埼玉県出身。中国最大のサッカーメディア「懂球帝」にて、日本人初の公認アカウントとして活動をしている。(久保田嶺 / Rei Kubota)

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