福西崇史氏が絶賛するFC東京MFの“超絶プレー”とは? 「みんなを楽しませてくれる」

FC東京MF髙萩洋次郎【写真:Getty Images】

FC東京MF髙萩洋次郎【写真:Getty Images】

10月「月間ベストアグレッシブプレーヤー」にFC東京MF髙萩洋次郎を選出

「DAZN」のパートナーメディアで構成される「DAZN Jリーグ推進委員会」では、各月ごとに各部門の表彰を実施している。「Football ZONE web」では、現役時代に強靭なフィジカルと戦術眼を武器に日本代表としても活躍した福西崇史氏に、その月に最もアグレッシブなプレーを見せた選手を選出してもらっている。

 福西氏が10月の「月間ベストアグレッシブプレーヤー」に選出したのは、FC東京の中盤で活躍を続けているMF髙萩洋次郎だ。今年8月に35歳となったベテランは、トップ下の位置で強度の高いプレーを見せながらも、効果的に遊び心のあるプレーも散りばめる。

 リーグ戦で苦しい戦いが続くFC東京だが、福西氏は自身の古巣がJ1王者となる川崎フロンターレと対戦した第31節の試合で、髙萩氏が見せたファンタジーあふれるプレーに注目した。対談で福西氏は、リーグ最少失点を誇る川崎守備陣を慌てさせたプレーが、なぜできたのか。さらに、そのプレーから、普段からどのような意図を持ってプレーしているのかを聞き出している。(取材・構成=Football ZONE web編集部)

   ◇   ◇   ◇

福西 早速ですが、今回「ベストアグレッシブプレーヤー」に選出させていただくきっかけとなった、川崎戦の前半33分のシーンを見てください。髙萩選手がアダイウトン選手からパスを受けて、2人のディフェンダーに囲まれながらも、リターンパスを通したシーンです。いつも髙萩選手のプレーは、アイデアが面白いなと思って見せてもらっているのですが、この2人が来ていた時点で、どういうことを考えていましたか?

髙萩 えっと、「どうしようかな」というのが本音です(笑)。

福西 外には、長友佑都選手が来ている状態でしたが、もちろんそこは見えていましたか?

髙萩 はい。時間を作って、長友選手に追い越してもらう考えはもちろんありましたが、この時に背中にスペースがあることも、分かっていましたが、うしろを使うイメージはありませんでした。アダイウトン選手から、声を出して呼ばれたので、「あのスペースにパスが通ればいいかな」という感じでした。

福西 すごくトリッキーというか、面白いというか、こういうアイデアのあるプレーは見ている人も好きだと思うのですが、このプレーもゴールに入っていてもおかしくないチャンスになりました。相手からすれば、取りどころまで追い込んだなかで、打開されているので心の折れ具合も大きかったと思いますが、そういうところまで意識していますか?

髙萩 基本的には、その時にひらめいたプレーを選択しています。あとは、常に「ピンチはチャンス」じゃないですけど、相手から取れるとか、奪えるとかっていう時は、逆にチャンスだとは思っています。むしろ、ボールを奪いに来てくれたほうがありがたかったです。突っ込んできてくれるから。

福西 股を抜いていると思うのですが、自信を持って出しましたか?

髙萩 パスが通るとは思っていたのですが、ただ、正直、(股抜きは)たまたまです。

福西 万が一、相手に引っかかって、ボールを取られた時、ボールを奪われた後のことも考えていますか?

髙萩 そうですね。位置的に、ここでリスクを取るのは問題ないと思っていました。むしろ相手に当たっても、マイボールのスローインになるか、長友選手のところにこぼれるかのどちらかだと思っていました。だから、マイナスな要素、ネガティブなことは考えませんでしたね。

福西 「ピンチはチャンス」という言葉がありましたが、点を取るためにリスクを取ること、勝負することは考えていますか?

髙萩 はい。そうですね。このエリアでは、攻撃側はある程度、何をしてもいいかなと思うので。ミスをして、相手ボールになっても、切り替えてそこから守備にいけば、またチャンスにもなるので、そんなにリスクを冒すことに怖さやためらいはないですね。

意表を突くプレーを意識「『そんなことがあるんだ』っていうことを考えています」

福西 いつも髙萩選手のプレーはみんなを楽しませてくれると思うのですが、こうしたプレーをすることは常に意識していますか?

髙萩 そうですね。相手とか、周りで見ている人が意表を突かれると言うか、「そんなことがあるんだ」っていうプレーができればと考えています。それが上手くいくと、相手も「えっ」と一瞬なるので、そういうところでチャンスは生まれると思っています。

福西 こういうプレーが出ると、相手は飛び込めなくなるから、次のプレーも楽になりますよね。

髙萩 そうです。このエリアで再びボールを受けた時、今度は相手が考えなければいけなくなるので。

福西 そういうことが伝わってくるシーンだったので、どこまで考えているのかを聞きたくて、今回、対談させていただくことにしました。

髙萩 実は考えてプレーすることは、あんまりないですね(笑)。

福西 どちらかというと、ひらめきですかね。ひらめきも重要だと思いますが、こういうプレーは、ある程度、イメージができていて、スペースも見えていないとチャレンジはできませんよね。

髙萩 そうですね。アダイウトン選手にパスが通ればチャンスになるという自信がありましたし、無理やり出してもなんとかしてくれるかなということも思っていました。そこは受け手によってもプレーを変えるようにしています。

福西 非常に面白いプレーでした。アグレッシブ賞ですが、今回はアイデア賞も入っているような感じです。このプレーができる技術もありますし、みんなを楽しませてくれている面白さで、今回は選出させてもらいました。

髙萩 ありがとうございます。

常にサッカーを楽しむ意識「自分がどれだけ楽しんでプレーできるか」

福西 髙萩選手は年齢を重ねて、試合の中で守備の意識も強くなっていると感じるのですが、経験を積むことで守備を重要視してきたのでしょうか? それともFC東京で求められることに、そういう守備があるのか、どういう感じでしょうか?

髙萩 今までも、監督が必要としているプレーには、常に合わせてプレーしようと意識していました。そのなかでどんな自分の良さを出せるかは、より経験を積み、海外に行ったこともあったので、よりそこで自分勝手なプレーだけをしていると、チームのためにならないと感じました。また、海外に行っている時は助っ人として見られるので、自分の良さプラスチームのためにどれだけ戦えるかを、より意識してプレーするようになりました。

福西 すごく楽しんでいるのが伝わってきます。

髙萩 サッカーを楽しんでいますね(笑)。練習も試合も、自分がどれだけ楽しんでプレーできるかというのは意識しています。

福西 さすがですね。楽しませてもらっているので、これからも1つ、2つと「おお!」となるシーンを見せてください。

髙萩 毎試合、そういうプレーが出せればいいんですけれど(笑)。

福西 もし、そういうプレーをして怒られたら、シンさん(森下申一監督)に「福西さんにやってほしいと言われました」と、言っていいから(笑)。

髙萩 分かりました(笑)! でも、気づいてくださる方がいてこそなので、こういう機会に取り上げてもらえるのは、本当にありがたいです。

「福西さんを削ってしまって、すごく怒られたことを覚えています」

――お2人の会話が非常に軽快だったのですが、これまでにも接点はあったのですか?

福西 あいさつをしたくらいですね。一緒に遊びに行ったり、出かけたり、というのはありませんね。プレーのことについて話をしたのは、今回が初めてですね。感覚というか、サッカー観が近い感覚はありますね。

髙萩 はい。僕が印象に残っているのは、デビューして、間もない頃にジュビロ磐田と対戦して、最初のプレーで福西さんを削ってしまって、すごく怒られたことを覚えています。

福西 ははははは(笑)。

髙萩 福西さんというより、服部(年宏)さんをはじめとする周りの方がすごく怖かったです(笑)。

福西 プレッシャーをかけまくる集団でしたからね(笑)。

髙萩 17歳、18歳の頃の僕には、すごく堪えました(笑)。

福西 削ることがあるのは、当たり前ですからね。そこでプレッシャーを与えて、プロの厳しさを教えないといけませんからね。それで、ここまで成長してくれたので、良かったです!

髙萩 ははは。あと、福西さんのYouTubeチャンネルも見させてもらっています。

福西 本当? 今度、PK対決に出てください。

髙萩 いや、実はPK苦手なんで。プレー中の駆け引きは好きなんですが、PKのように対面するとダメなんですよね。

福西 試合中にあれだけ駆け引きできるんだから、PKキッカーに向いていると思いますよ。あれだけ駆け引きできるなら、あとはキックだけですが、キックも正確なので、問題ないでしょう(笑)。FC東京は、ここから来シーズンに向けて立て直すところだと思います。僕もFC東京に関わった1人として心配しながら見ているので、髙萩選手には引き続き、みんなを楽しませながら、チームを立て直してもらえたらと思います。

髙萩 はい、頑張ります。ありがとうございます。

福西 ありがとうございました!

(後編へ続く)

[プロフィール]
福西崇史(ふくにし・たかし)/1976年9月1日生まれ、愛媛県出身。95年にFWとしてジュビロ磐田に加入すると、プロ入り後にボランチへコンバートされ黄金時代を迎えたチームの中盤を支えた。J1通算349試合62得点の成績を残し、Jリーグベストイレブンも4度受賞。日本代表としても国際Aマッチ64試合7得点を記録し、2002年日韓大会、06年ドイツ大会とワールドカップに2度出場した。04年アジアカップでは優勝を経験している。(Football ZONE web編集部)

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