“バルサ経由”と“地方クラブ育ち” 「大きな未来のある」17歳のJ1対決に見えたもの

同じ2001年生まれの松岡(左)と久保(右)【写真:Noriko NAGANO & 荒川祐史】

同じ2001年生まれの松岡(左)と久保(右)【写真:Noriko NAGANO & 荒川祐史】

カレーラス監督も賛辞を送る松岡、FC東京戦もポジションを変えながらフル出場

 前半途中からサガン鳥栖のルイス・カレーラス監督は、新加入のイサック・クエンカに準備を始めさせた。10日に行われたJ1リーグ第3節のFC東京とのアウェー戦、前半をスコアレスで終え「連係が得意なのでトーレス、趙東建とのコンビを期待して」交代出場を予定していたという。2トップとの連係を想定しているのだから、同じ左MFで先発した17歳の松岡大起との交代が妥当だと見る向きが多かったかもしれない。右MFでスタメン出場をしたのは金崎夢生だから、両サイドを比較すればキャリアが違い過ぎる。
 
 だがカレーラス監督がベンチに下げたのは、日本代表歴を持つ金崎のほうだった。さらに鳥栖はクエンカがピッチに立って1分後に、高橋秀人が退場処分になるが、それでも指揮官は17歳をボランチに移行させてピッチに残し、次に打った手はFWの趙に代えてボランチの福田晃斗。結局松岡は左でスタートし、中央、右と二度ポジションを移して90分間のフル出場を果たした。
 
「彼は大きな未来のある選手で、非常に信頼している。アカデミーがしっかり仕事をしてきた成果で、17歳の若さでトップリーグでプレーをしていることには、帽子を取って敬意を表したいね」
 
 試合後の指揮官は、最大限に称えた。
 
 松岡は熊本のクラブから「コーチの紹介で」鳥栖U-18に加入。これでルヴァンカップも合わせて3試合連続のスタメン出場となった。しかも、FC東京戦で同じサイドで対峙したのが、同年代で自身が「1歩2歩3歩も先を行っている」と意識する久保建英。FC東京の長谷川健太監督が「松岡と高橋義希の2人で警戒をしてきた」と振り返るように、状況に応じて下がって久保を見ながら「左サイドバックのミツくん(三丸拡)と組んで、ボックスの角を取ってクロスを狙う」役割を与えられていた。

 もちろん、カレーラス監督が松岡を90分間使い切ったのは、期待値が高いのと同時に、攻守ともに効果的なプレーを継続できていたからだ。

サガン鳥栖を率いるカレーラス監督【写真:Noriko NAGANO】

サガン鳥栖を率いるカレーラス監督【写真:Noriko NAGANO】

「若い選手をしっかり育てる。それは先進国ならどこも同じだ」

 結果的には鳥栖が10人に減り、トップ下にポジションを移した久保がダメ押しゴールのお膳立てをして、FC東京が2-0の勝利を収めた。しかし、むしろ途中まで狙いどおりの試合を進めていたのは鳥栖のほうで、エースのフェルナンド・トーレスも「今日は勝つための姿勢をしっかり見せることができた」と語っている。

 小学生時代にバルセロナへ渡り、鳴り物入りで帰国した久保が期待どおりの成長を証明する一方で、中学生まで地方のクラブで育った松岡が同じ舞台で堂々と戦う。アマチュア時代の過去から記録破りの若いデビューには話題作りの狙いも否めなかったが、2人は純粋に戦力的にも不可欠の存在と見ていい。

「若い選手をしっかり育てる。それは先進国ならどこも同じだ」(カレーラス監督)

 立ち遅れ気味だった日本の育成の裾野の広がりと進化が、少しだけ実感できた試合となった。(加部 究 / Kiwamu Kabe)

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