“2年限定”の「Fリーグ選抜1期生」が示した可能性 日本フットサル界に希望を与えた奮闘

「Fリーグ選抜」の選手たち【写真:河合拓/Futsal X】

「Fリーグ選抜」の選手たち【写真:河合拓/Futsal X】

フットサル日本代表の強化の一環に2シーズン限定で結成されたFリーグ選抜

 Fリーグ・ディビジョン1の2018-19シーズン最終節が2月10日、11日に行われ、レギュラーシーズンの順位が確定した。すでに1位を確定させていた名古屋オーシャンズ、2位のシュライカー大阪、3位の立川・府中アスレティックFCの3クラブが、16日に始まるプレーオフに進出し、今年度のリーグ優勝を争う。また、今季から行われるF1(1部)とF2(2部)の入れ替え戦には、最下位となったアグレミーナ浜松が出場し、Fリーグ・ディビジョン2優勝のボアルース長野と対戦する。

 18-19シーズンのFリーグは、初めて2部制になるなど、そのシステムに大きな変更があった。そのなかでも注目されたのが、「Fリーグ選抜」の存在だ。17-18シーズン終了後にデウソン神戸が自主降格を申し出たことで、Fリーグ・ディビジョン1の参戦クラブが「11」になった。そこでリーグは「Fリーグ選抜」を立ち上げ、12個目のクラブとしてリーグに参戦させた。

「Fリーグ選抜」には、リーグを戦うチームの頭数を揃えること以外にも、大きな使命があった。それが「フットサル日本代表の強化」だ。とはいえ、各クラブがチームの主力である現役日本代表選手を貸してくれるはずはない。そこでリーグは、将来性がありながらも、なかなか自クラブでは出場機会を得られていない若手を集めた。

 フットサルは経験がモノをいうスポーツであり、年齢を重ねてスタミナが落ちたベテラン選手も選手交代が自由なことから、現役を続けやすい。逆に言うと、若い選手たちが台頭しにくい競技なのだ。実際にFリーグには12年前の開幕時から、今も現役でプレーする選手が多くいる。3年前、フットサル日本代表の監督に就任したブルーノ・ガルシア監督も、全体の若返りの必要性を強く訴えてきた。

 こうして19歳から24歳までの15名の若手が集まり、Fリーグ選抜として活動を開始した。しかし、日本最高峰のFリーグ・ディビジョン1は甘くなかった。開幕戦でシュライカー大阪に2-6で敗れると、続くエスポラーダ北海道戦も1-4と大敗。第3節でもバサジィ大分に1-5で敗れて3連敗。自クラブで試合に出られない若手の寄せ集めチームに、日本最高峰のリーグを戦っていくのは、難しいかと思われた。

18-19シーズンをFリーグ選抜で戦った選手たちは、ペスカドーラ町田戦がこのチームにとって最後の公式戦となった【写真:河合拓/Futsal X】

18-19シーズンをFリーグ選抜で戦った選手たちは、ペスカドーラ町田戦がこのチームにとって最後の公式戦となった【写真:河合拓/Futsal X】

最終節では町田を圧倒、優勝候補から今季2度目の勝利を挙げる

 ところが、続く第4節のアグレミーナ浜松戦で5-0の初勝利を収めると、翌5節では日本代表FP森岡薫を擁す優勝候補のペスカドーラ町田にも3-0と完勝した。さらに第8節では、それまで全勝だったFリーグの“絶対王者”である名古屋オーシャンズを相手に2-2の引き分けを演じたのだ。

 所属元のクラブで出場機会を得られなかった若い選手たちは、1日2度の練習を行い、ほぼプロ選手というフットサル漬けの日々を送ることで、どんどん成長していった。若い選手たちが懸命に戦う姿勢は、ファン・サポーターを惹きつけ、リーグ事務局にはユニフォームの販売を求める声が多数寄せられ、それに応じる形でレプリカユニフォームが販売されることにもなった。

 このFリーグ選抜は、18-19シーズンと19-20シーズンの2シーズン限定で結成されているチームであり、18-19シーズンをFリーグ選抜で戦った選手たちは、基本的に所属元のクラブへ帰ることとなる。つまり第33節のペスカドーラ町田戦は、このチームにとって最後の公式戦だった。

 ラストマッチでFリーグ選抜は、1年間の集大成と言える見事なパフォーマンスを披露した。最前線から絶え間なくプレッシングをかけ続け、町田のパスワークを封じる。日本代表FP室田祐希の個人技以外は、相手をほぼ抑え込んだ。鋭いシュートが枠に飛んだ場面でも、シーズン中に日本代表候補に選出されたGK坂桂輔がシャットアウトした。

 攻撃でもチームのキャプテンであるFP三笠貴史が正確なキックを生かして、日本代表GKイゴール・ピレスの守るゴールを前半だけで2度も破る。2点リードで迎えた後半には、FP仁井貴仁のクロスから、FP小幡貴一がフットサルでは珍しいヘディングでのゴールを決め、試合終了間際にはチームの得点源でもある日本代表候補FP新井裕生が自陣からのロングシュートで、自身の今季通算14点目を決めて、4-0で完勝した。今季の最終成績は、10勝7分16敗で12クラブ中8位。開幕前の予想を良い意味で裏切る成績を残した。

最後の試合を終え、高橋監督を胴上げする選手たち【写真:河合拓/Futsal X】

最後の試合を終え、高橋監督を胴上げする選手たち【写真:河合拓/Futsal X】

日本代表での再会を誓い、来季からはそれぞれの所属元クラブに復帰へ

 来季は、ほとんどの選手がそれぞれの所属元クラブに戻ることになっており、このチームは解散となる。最後の試合を終え、GK坂や三笠らが1年間を振り返り、感極まって涙する場面もあったが、彼らには次に目指す場所がある。

 今季、Fリーグで最下位に沈んだ浜松に戻ることが濃厚な新井は、「みんなとは『所属クラブで活躍して、U-25日本代表に選ばれよう』って話しているんです」と明かす。フットサル日本代表は4年に一度、アジア・インドアゲームズという大会に参戦しているが、この大会にはU-25日本代表で臨むことが慣例となっている。サッカーのオリンピックに臨むU-23日本代表のように、この大会に出た世代の選手たちが、次代の日本代表を担っていく流れができているのだ。

 所属クラブに戻ることで、出場機会を失う選手、戦術に戸惑う選手、練習の環境が悪くなりコンディションをキープできなくなる選手もいるかもしれない。それでも今季、彼らが日本のフットサル界に与えたインパクトは小さくない。キャプテンの三笠は「若い選手たちに自分たちもできるんじゃないか、と思ってもらうことができたと思う」と胸を張る。それぞれの今後も楽しみな“Fリーグ選抜1期生”たちは、停滞気味の日本フットサル界を盛り上げるべく、これからも走り続ける。(Futsal X・河合拓 / Taku Kawai)

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