なぜ国立がガラガラ?新生なでしこJが韓国に4-0圧勝も集客できず
サッカーの日本女子代表なでしこジャパンが26日、東京・国立競技場で行われた国際親善試合で韓国女子代表に4-0で圧勝し、ベスト8で敗退した今夏のパリ五輪後の初陣を飾った。監督が空位のなでしこは、元世界一指揮官の佐々木則監督代行(66)のもとでMF藤野あおば(20、マンチェスター・シティ)やMF谷川萌々子(19、ローゼンゴード)らがゴールで共演したが、収容6万7750人に対して観客数はわずか1万2420人。なぜ空席ばかりが目立つ状況が生まれたのか。
告知不足とWEリーグとの重複
聖地・国立競技場のスタンドはガラガラだった。正確に表現すれば、キックオフから試合終了まで、一部を除いて終始ガラガラの状態が生じていた。
2階席と3階席はすべて無人。ゴール裏のスタンドも、アウェイチームのファン・サポーターが集う南側は人影がまばらだった。試合後半に発表された観客数は1万2420人。収容人員の6万7750人に対して、約18.33%という割合だった。
もっとも、閑古鳥が鳴いているように映る光景は、日本サッカー協会(JFA)にとっては織り込み済みだったのかもしれない。たとえばチケットの販売概要には、前売りがはじまった7月下旬からこんな但し書きがつけられていた。
「2層と3層は、販売状況により使用の有無を判断します」
実際に集客に苦戦を強いられてきたなかで、早々に判断が下されていたのだろう。4-0で圧勝した試合後に取材に応じた、JFAの宮本恒靖会長(47)は「そこ(2層と3層)は開けない、という前提でやっていました」と明らかにしている。
対戦国の韓国も男子とは対照的に、女子W杯の最高位が2015年カナダ大会のベスト16で、五輪にいたっては一度も出場していない女子代表への関心は極端に低い。2022年7月以来となる、なでしことの対戦を取材した同国メディアは皆無。今月に就任したばかりのシン・サンウ監督(48)は、試合後の会見でこう語っている。
「韓国の女子サッカーが、非常に厳しい状況に置かれているのは事実です」
こうした状況を受けて、JFAの宮本会長は「もちろん、もっとたくさんの方に来てほしい」と1万2420人という数字を受け止め、さらにこう続けた。
「来てもらった方に『よかった、いい試合だった、また見にいきたい』と思ってもらえるような試合を、なでしこの選手たちにはいつも見せてほしいと思っています。そのなかで今日に関しては、たとえば彼女たちがもっているひたむきさや、あるいは女性ならではの柔らかい技術といったものは十分に見せてくれたと思っています」
なでしこが国立競技場のピッチに立つのは、今年2月の北朝鮮女子代表とのパリ五輪アジア最終予選第2戦以来だった。なでしこが勝利し、パリ行きの切符を獲得した大一番には、平日のナイトゲームにもかかわらず2万777人が駆けつけた。
南側のゴール裏を埋めた北朝鮮の大応援団を差し引いても、今回の韓国戦に関しては集客面での苦戦がかねてから伝えられていた。試合4日前の段階で、メディアから状況を問われた宮本会長は「いやぁ、厳しいなぁ」と漏らしていた。
理由はいくつかが考えられる。
聖地・国立競技場のスタンドはガラガラだった。正確に表現すれば、キックオフから試合終了まで、一部を除いて終始ガラガラの状態が生じていた。
2階席と3階席はすべて無人。ゴール裏のスタンドも、アウェイチームのファン・サポーターが集う南側は人影がまばらだった。試合後半に発表された観客数は1万2420人。収容人員の6万7750人に対して、約18.33%という割合だった。
もっとも、閑古鳥が鳴いているように映る光景は、日本サッカー協会(JFA)にとっては織り込み済みだったのかもしれない。たとえばチケットの販売概要には、前売りがはじまった7月下旬からこんな但し書きがつけられていた。
「2層と3層は、販売状況により使用の有無を判断します」
実際に集客に苦戦を強いられてきたなかで、早々に判断が下されていたのだろう。4-0で圧勝した試合後に取材に応じた、JFAの宮本恒靖会長(47)は「そこ(2層と3層)は開けない、という前提でやっていました」と明らかにしている。
対戦国の韓国も男子とは対照的に、女子W杯の最高位が2015年カナダ大会のベスト16で、五輪にいたっては一度も出場していない女子代表への関心は極端に低い。2022年7月以来となる、なでしことの対戦を取材した同国メディアは皆無。今月に就任したばかりのシン・サンウ監督(48)は、試合後の会見でこう語っている。
「韓国の女子サッカーが、非常に厳しい状況に置かれているのは事実です」
こうした状況を受けて、JFAの宮本会長は「もちろん、もっとたくさんの方に来てほしい」と1万2420人という数字を受け止め、さらにこう続けた。
「来てもらった方に『よかった、いい試合だった、また見にいきたい』と思ってもらえるような試合を、なでしこの選手たちにはいつも見せてほしいと思っています。そのなかで今日に関しては、たとえば彼女たちがもっているひたむきさや、あるいは女性ならではの柔らかい技術といったものは十分に見せてくれたと思っています」
なでしこが国立競技場のピッチに立つのは、今年2月の北朝鮮女子代表とのパリ五輪アジア最終予選第2戦以来だった。なでしこが勝利し、パリ行きの切符を獲得した大一番には、平日のナイトゲームにもかかわらず2万777人が駆けつけた。
南側のゴール裏を埋めた北朝鮮の大応援団を差し引いても、今回の韓国戦に関しては集客面での苦戦がかねてから伝えられていた。試合4日前の段階で、メディアから状況を問われた宮本会長は「いやぁ、厳しいなぁ」と漏らしていた。
理由はいくつかが考えられる。
まずは告知不足で、韓国戦の開催自体がほとんど知られていなかった。試合実施が発表された7月23日は、スペイン女子代表とのパリ五輪グループステージ初戦の2日前。発信された情報の埋没は避けられず、JFAは試合前日の25日に当日券の販売を公式HPや公式SNSで告知したが、十分な効果はえられなかった。
さらに監督不在という異例の状況が、コアなファン・サポーターに対して、韓国戦の開催意義を曖昧にさせた可能性も否定できない。
JFAはパリ五輪後の8月下旬に、2021年秋からなでしこの指揮を執ってきた池田太監督(54)の、任期満了に伴う退任を発表している。JFA女子委員会の委員長を務める佐々木氏は、池田前監督との契約を延長しなかった理由をこう語っていた。
「個々の資質は非常に高い選手がそろっているなかで、今後世界を目指していくときに、そういったところに到達するために新たな人選が必要だと判断した」
しかし、後任監督が未定のまま韓国戦を迎え、佐々木氏が女子委員長との兼任で、リオデジャネイロ五輪アジア最終予選で敗れて退任した2016年3月以来、約8年半ぶりに監督代行としてなでしこの指揮を執った。
女子サッカーの場合、次の世界的なビッグイベントは3年後の2027年6月から7月にかけて、ブラジルで開催される次回の女子W杯となる。時間的な余裕があるなかで、宮本会長は新監督について「年内には決めたい」と語っている。外国人も対象になるのか、という問いにも同会長は可能性を否定しなかった。
ただ、選手たちも日の丸を背負う名誉を感じつつも、中途半端な状況へ複雑な思いを抱えている。新体制下でも引き続きエースを担うMF長谷川唯(27、マンチェスター・シティ)は韓国戦後にこんな言葉を残している。
「新監督が決まれば、招集されるメンバーもがらりと変わる可能性もあるなかで、それでもなでしこの今後のコンセプト、といったものをしっかりと確認しながらピッチの上で出せた試合でした。誰が監督になるのかはわかりませんけど、今日の勢いや前から積極的にいく姿勢を次につなげていけたら、と思っています」
最後は日本の女子サッカーの最上位リーグ、WEリーグとの兼ね合いだ。
韓国戦が開催された26日は、WEリーグのカップ戦、クラシエカップ第5節と重複していて、合計4300人のファン・サポーターが、同カップ戦が開催された4つの会場へ足を運んでいた。佐々木氏は女子委員長の立場で、26日が国際サッカー連盟(FIFA)の定める国際Aマッチデー期間中だった点を踏まえてこう語っている。
「インターナショナルマッチデーは代表活動がベースになり、実際に海外ではクラブの試合は開催していない。(JFAとWEリーグが)お互いにもっと日程を共有しなければいけなかったと反省している。カップ戦だからいいだろう、とはならない」
土曜日のデーゲームながら、プロ野球日本シリーズやラグビーのオールブラックス戦など、他競技のビッグイベントと重複した影響もあるなかで逆の見方もできる。
2021年8月の東京五輪でスウェーデン女子代表に敗れた準々決勝(埼玉スタジアム)を最後に、なでしこは日本国内で9勝1分けと負けていない。そして、先述の北朝鮮戦を除けば、韓国戦の1万2420人は実は最多の観客数だった。
10試合のなかには、2022年7月の中国女子代表とのEAFF E-1サッカー選手権(県立カシマサッカースタジアム)のように、わずか901人と3桁に落ち込んだ一戦もある。他に1万人を超えた試合は、昨年7月14日のパナマ女子代表戦(ユアテックスタジアム仙台)の1万206人しかないのが現状だ。
佐々木監督のもとで女子W杯ドイツ大会を制し、一大ブームを巻き起こしたのが2011年7月。翌年のロンドン五輪、2015年の女子W杯カナダ大会でも銀メダルを獲得した後に低迷期に入ったなでしこがいまだ復権への途上にあり、一方で国立競技場のように利便性がよければ1万人超を見込めるとも証明できた。
韓国戦後は女子委員長の仕事に専念する佐々木氏は言う。
「もっと結果や成果を示さないと、まだまだ反応は鈍い。もっともっと積み上げて、国立競技場で試合をするときには、観客が3万人を超えるくらいのチームにならないといけないと切に思いながら、女子委員長に戻って何とかしなければいけない」
2031年の女子W杯日本誘致を掲げる宮本会長も、男子のJリーグも巻き込みながら日本の女子サッカー界全体を盛り上げていきたいと青写真を描く。
「これからもいいものを見せつつ、例えばワールドカップやオリンピックで、さらなる高みにいくチームになっていけば、もっと多くの方に見てもらえる。全体を盛りあげていく部分と、結果を出していく強化の部分の両方が大事になってくる」
韓国戦では20歳の藤野や19歳の谷川ら、今後のなでしこを背負っていくと期待される若手がゴールで共演した。新監督が決まっていない状況下で、今後のなでしこの活動予定も現時点で何も決まっていない。国内外の所属クラブで個々がレベルアップに努めながら、次回の女子W杯への本格的なスタートを切る体制の誕生を待っている。
(文責・藤江直人/スポーツライター)
10/27 06:58
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