なぜリバプールの遠藤航は“放出要員”になってしまったのか?

 英プレミアリーグの名門リバプールに所属するMF遠藤航(31)が、来年1月の移籍市場における放出要員になったと、英国メディアが3日(日本時間4日)に報じた。今シーズンから指揮を執るアルネ・スロット監督(46)が、実質的な構想外に置いている遠藤の売却をクラブ側に要請。移籍金をもとに、若手ボランチを新たに獲得する構想を描いているという。名将ユルゲン・クロップ前監督(57)のもと、昨シーズンの後半に大活躍を演じた日本代表のキャプテンの立場は、新体制下でなぜ急変してしまったのか。

 スロット監督が31歳の日本人選手の売却をクラブ側に要請

 新体制のもとで、序列を著しく低下させる。遠藤がリバプールで直面する現状を象徴する記事を掲載したのは、英国メディアの『Football Insider』だった。
 3日(日本時間4日)に「EXCLUSIVE(独占)」と強調し、タイトルには「リバプールが1月の契約金を用意、遠藤航をめぐるビッグニュース」と打った記事のなかで、来年1月の補強へ向けた動きを次のように伝えた。
「新生リバプールは素晴らしいシーズンのスタートを切ったにもかかわらず、来たる1月の移籍市場で新しい6番(守備的MF)と契約する構想を描いている。遠藤航とリバプールは2027年6月末まで契約を結んでいるが、アルネ・スロットは次の移籍ウィンドウで31歳の日本人選手の売却をクラブ側に要請。調達したキャッシュをもとに、若くて競争力のある守備的MFを獲得したいと強く望んでいる」
 オランダ出身のスロット新監督のもと、ここまで公式戦9試合を終えた今シーズンのリバプールで、遠藤の出場はわずか3試合にとどまっている。
しかも、そのうち2試合はプレミアリーグとUEFAチャンピオンズリーグで、ともに後半アディショナルタイムの数分だけプレーしたもの。先発して82分間プレーした9月25日のウェストハム・ユナイテッドとのリーグカップ3回戦では、先発メンバーのほぼ全員が主力と入れ替わるターンオーバーが敷かれていた。
 昨シーズンの後半に遠藤が定着し、群を抜く存在感を放った守備的な中盤では、バイエルン・ミュンヘンから加入して2シーズン目のライアン・フラフェンベルクが、プレミアリーグ6試合、チャンピオンズリーグ2試合の計8試合で先発。すべてでフル出場を果たすなど、同胞の指揮官から全幅の信頼を置かれている。
 先述の『Football Insider』はオランダ代表に名を連ね、9月のクラブ月間最優秀選手にも選出されるなど、大ブレークを果たしている22歳のフラフェンベルクの名前をあげながら、新たな守備的MFを獲得する意図をこう説明している。
「スロットは就任以来、6番のポジションの強化を目指してきた。今夏の移籍市場ではレアル・ソシエダのマルティン・スビメンディと契約寸前まで至ったが、26歳のスペイン代表MFは熟慮を重ねた末に、一転して地元クラブであるソシエダへの残留を決めた。それでも、守備的MFの獲得は現時点でもスロットの最優先事項であり、フラフェンベルクのカバーと競争を提供できる選手をリストアップしている」
 リバプールが1月の移籍市場で獲得を狙う筆頭候補が、セリエAのアタランタに所属するブラジル出身のMFエデルソン(25)となる。
リバプール専門メディアの『EMPIRE OF THE KOP』は、アタランタがシャフタール・ドネツク(ウクライナ)に勝利した、今月2日のチャンピオンズリーグにリバプールがわざわざスカウトを派遣していたと報じたうえでこう続けた。
レッズ(リバプールの愛称)のスカウトはエデルソンをチェックしていたが、こうした動きは決して偶然ではない。来年2月に32歳になる遠藤に対して、スロットが信頼を寄せていない状況は以前から明らかだったからだ」
 ヨーロッパでは実力の前に、まずは年齢でふるいにかけられるケースが少なくない。その境目が30歳となる。たとえば元日本代表のMF香川真司(35、セレッソ大阪)は、30歳になった2019年3月に森保ジャパンに招集された際にこう語っている。
「30歳になると、ヨーロッパでは特にシビアにとらえられる。年齢も含めて、いままでに経験したことのない、いろいろな現実を見せつけられている」

 

 

 当時の香川は一時代を築いた独ブンデスリーガ1部のボルシア・ドルトムントから、出場機会を求めてトルコのベシクタシュへ期限付き移籍していた。最終的には同年夏に、ドルトムントとの契約を1年残した状態で退団している。
 クロップ前監督は遠藤のデュエルにおける強さ、ボール奪取能力の高さを高く評価。昨夏に独ブンデスリーガ1部のシュツットガルトから緊急補強獲得した際には周囲を驚かせたが、後半戦のプレーを介して選択が間違っていなかったと証明した。
 しかし、クロップ前監督の勇退を受けて、母国の名門フェイエノールトの指揮官から転身したスロット監督も、選手を判断する基準の最上位に年齢をすえているのか。8月の開幕から逆風にさらされてきた遠藤には、それでも焦りは見られなかった。
 公式戦の出場がプレミアリーグの1試合、それも先述したように後半アディショナルタイムの数分だけで森保ジャパンに合流した9月シリーズ。状態を不安視する周囲に対して、遠藤は「そんなに気にしていない」と笑い飛ばしていた。
「これまで(のリバプール)は週に1試合でしたけど、今回の代表ウイークが終われば連戦になる。11人だけではサッカーはできないし、連戦のなかで間違いなく自分にも出番が回ってくると思っているし、現時点でもコンディション的には問題はない」
 しかし、ミッドウィークにチャンピオンズリーグが組まれ、過密日程が生じてからも状況はいっこうに好転しない。フラフェンベルクが絶対的な存在であり続け、来年1月の遠藤の放出プランも報じられたなかで、先述の『EMPIRE OF THE KOP』は記事のなかでスロット監督へ警鐘を鳴らしてもいる。
「確かに日本人選手はスロットから、あまり注目されていないかもしれない。しかし、リバプールは今後、多忙な試合スケジュールに直面する。もしフラフェンベルクが長期にわたって欠場するような、望まないシナリオが現実のものになったらどうするのか。次のウィンドウで若き守備的MFを獲得できると、絶対的な自信をもっていえないのであれば、リバプールは現在の背番号3の放出に慎重になるべきだ。危機が訪れて初めて遠藤の真の価値に気づくのであれば、それは愚かな判断といっていい」
 開幕6戦5勝と好発進し、マンチェスター・シティやアーセナルを抑えて首位に立つリバプールは今日5日、敵地でクリスタル・パレスとの第7節に臨む。しかし、指揮官の信頼をえられていない遠藤が、今シーズンに加入した日本代表MF鎌田大地(28)とピッチ上で敵味方として対峙する光景は、現状では見られそうにない。

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