【インタビュー】「前例がない」湘南ユースから即欧州挑戦…小杉啓太がスウェーデンから狙うステップアップ「世界に名を広められるように」

 今、スウェーデンで評価を高めている日本人選手がいる。18歳の左サイドバック小杉啓太だ。小杉は湘南ベルマーレのジュニアユース、ユースを経て、今年3月にスウェーデン1部のユールゴーデンに加入。ユース卒団後即海外挑戦は湘南史上初となった。

 7月下旬からコンスタントに出場を続け、10月6日に行われた第26節のカルマル戦では強烈なシュートで初ゴールを記録。市場価値も急上昇中でロス世代では現在1位(120万ユーロ)となっている。「自分の中ではいいスタートを切れたと思っています。いいパフォーマンスをすれば要求も多くなると思いますし、自分の中の平均を上げていきたい」とここまでの手応えと今後の目標を語ってくれた。

取材・文=三島大輔

――まずは海外挑戦を決めた理由から教えてください。
小杉 サッカーを始めた時から、ずっと海外でプレーしたいと思っていました。U-17ワールドカップのアジア最終予選ではオーストラリア代表のネストリ・イランクンダ選手(バイエルン)、本大会では世界各国で活躍している選手たちとマッチアップをして、自分もそういった環境に身を置きたいと感じました。湘南ユースを卒団するタイミングで、海外挑戦を決めました。

――その中でユールゴーデンに決めた理由はありますか?
小杉 自分が18歳になる前後のタイミングでトライアルに参加しました。契約を勝ち取りに行く前提で現地に行っていたので、オファーをいただけて嬉しかったですし、同時に認めてもらえて良かったという安堵感もありました。

――スウェーデンは日本人のサッカーファンでもなかなか馴染みがないリーグだと思います。
小杉 これまでスウェーデンでプレーした日本人選手も少ないですし、マイナーなリーグだとは思います。ただ、今夏ユールゴーデンからトッテナムやローマに移籍した選手がいて、若くても主力としてプレーすればステップアップできるチャンスがあると思いました。過去にユヴェントスでプレーした選手や、MLS(アメリカ)でキャプテンを務めた選手など、経験豊富なベテラン選手たちがいることも魅力的でした。

――7月下旬からコンスタントに出場機会を得ており、現在リーグ戦7試合連続スタメン出場中です。ここまでの手応えはいかがですか?
小杉 湘南ユースの時はどんどんチャレンジしてミスしてもOKという感じでしたが、プロになってからはチャレンジをする中にも絶対に犯してはいけないリスクは取らないようになりました。より勝負にこだわるようになってきていると思います。対人守備は得意なので、相手選手の傾向を分析ミーティングで頭に入れて対策するようにしています。身体能力が高い選手やドリブルが上手い選手などいますけど、自信を持って問題なく対応できていると思います。

©︎Kenth Norberg

――スウェーデンリーグのスタイルや特徴はありますか?
小杉 ボールを丁寧につなぎながらゴールに向かうスタイルのチームが多いと思います。あとは18歳から20歳くらいの若い選手がたくさん試合に出ています。Jリーグだとなかなか主力して出場するのは難しい年代だと思いますが、スウェーデンは若い選手が多いですね。

――ピッチなどの環境面についてはいかがですか?
小杉 スウェーデンは寒いので天然芝の維持が難しく、人工芝のピッチで試合をすることもあります。ユールゴーデンの練習場は天然芝と人工芝が一面ずつあって、場所はほぼ森の中のようなところでやっています。目の前の牧場があって馬と牛がいるような環境です。ちなみにこれからが冬本番なのですが、トライアルで3月に来た時は、耳がちぎれるかと思うくらい寒くて痛かったです(笑)。

――公用語はスウェーデン語ですが、語学面はいかがですか?
小杉 英語を勉強しながら、ピッチで使うようなスウェーデン語もメモして覚えるようにしています。最近はチームメイトとカフェに行って話すことも増えましたし、練習や環境にも慣れて語学の勉強に取り組むことができています。

――ディフェンスというポジション柄、周囲の選手とコミュニケーションを取りながら要求し合うこともあると思います。
小杉 サイドバックは前後左右の選手とコミュニケーションを取りながら守備をすることもあるので、ポジション的にも言葉を話せた方がいいと思っています。自分が一番大切だと思うのは、相手に意思を伝える姿勢を見せることです。英語やスウェーデン語を話せないことを言い訳にしていたら、ピッチの上で何もできないと思います。分からない言葉があったら調べるようにしていますし、日常から積極的にコミュニケーションを取って、日常から学ぶことを心がけています。

――ちなみによく連絡を取る日本人選手はいますか?
小杉 ユールゴーデンの女子チームに小山史乃観選手がいるので、練習場で会った時には話します。同年代では中島洋太朗選手、佐藤龍之介選手、道脇豊選手とはよく連絡を取り合っています。

――スウェーデンリーグは残り約1カ月です(※4月に開幕し、11月に閉幕)。今季残りの試合でどんなパフォーマンスを見せていきたいですか?
小杉 スタメンで出始めてからゴールやアシストをすることができて、自分の中ではいいスタートを切れたと思っています。いいパフォーマンスをすれば要求も多くなると思いますし、自分の中の平均を上げていきたいです。それをさらに向上させて、結果を残すことが今後ステップアップしていくために必要だと思っています。今はいい状態なので、浮き足立って足元をすくわれないように、自分自身を見つめてやるべきことにフォーカスしていきます。

©︎Kenth Norberg

――世代別代表としてワールドカップやオリンピックといった大きな大会も続いていきます。
小杉 昨年のU-17ワールドカップでスペイン代表に負けた悔しさはありますし、グループステージのアルゼンチン代表戦は何もできなかった。国際大会の悔しさは、国際大会でしか晴らせないと思っています。これからU-20ワールドカップやロサンゼルス五輪があるので、世代別代表でいろいろと経験できるように、チャンスを掴み取って活躍したいと思っています。

――その先の日本代表も見据えていると思います。
小杉 もちろん目指しています。日本代表は近いようで遠いし、遠いようで近いと思っています。自チームで活躍して結果を残してステップアップを繰り返せば、日本代表にも選出されると思っています。当たり前のことをしっかりやっていきたいです。

――将来的にプレーしたい国やクラブはありますか?
小杉 チャンピオンズリーグで優勝できるクラブでプレーしたいですね。どこの国だとしても上位でチャンピオンズリーグにコンスタントに出場して、優勝争いに絡むことが理想です。まずは自分のプレースタイルを確立すること。その中で自分にしっかりと合ったクラブを見つけることも大切だと思っています。

――では、最後にこの記事を通して小杉選手を応援してくれる皆さんにメッセージをお願いします。
小杉 ユールゴーデン加入が発表された時、たくさんの湘南サポーターの方から応援メッセージをいただきました。ユースから直接海外に行くという前例がこれまでない中、それを受け入れて自分を応援してくれる皆さんに感謝しています。湘南ユース出身で海外に飛び立った選手として、世界に名を広められるように頑張ります。自分がステップアップすることが、湘南サポーターの皆さんに対する恩返しになっていたら嬉しいです。

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