森保一日本代表監督をどう評価すべきか。続投の可否に識者の意見も割れた

カタールW杯アジア最終予選特集
森保一監督続投にイエスorノー(後編)
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イエス。少しずつ、だが着実にチーム力を高めてきた仕事を評価する
原山裕平

 監督就任1年目にしてクラブに初タイトルをもたらし、翌年には連覇を達成。三度目の優勝時にはすでに離れてしまっていたけれど、専門誌のサンフレッチェ広島担当としてその"奇跡"を間近で目の当たりにしてきた身として、森保監督を否定することは難しい。

 もちろん、感情論だけに引きずられているわけではない。「戦術の引き出しが少ない」とか、「選手交代が遅い」とか、「メンバーを固定しすぎ」とか、さまざまな指摘はごもっともだが、監督の素養とはそれだけではないはずだ。

 いかに選手の力を見極め、その能力を十全に引き出し、最適解の組み合わせを見出すことができるか。森保監督は就任した2018年から、その作業を繰り返してきたように思う。

 吉田麻也を中心とした最終ラインこそ早い段階で固定したものの、中盤から前にかけては調子や成長を踏まえながら、正当な競争原理を働かせていた。中島翔哉、堂安律南野拓実の"新ビッグ3"に依存することなく、伊東純也鎌田大地、あるいは東京五輪組を吸い上げながら、ちょっとずつ変化を加えてきた。

 衰えが指摘される大迫勇也、長友佑都の2人にも免罪符を与えていないのは、ここへきて代役候補の出場時間が増えていることからも読み取れる。

 3年のスパンというなかで、継続と変化の両輪を走らせながら、着実にチーム力を高めてきた。筆者は森保監督の仕事をそのように評価している。

 もちろん、最終予選の苦戦によって、解任論が高まるのは代表監督の宿命でもある。しかし、その苦境下にあっても、森保監督は動じていないように見える。

 広島が初優勝を果たした2012年も、シーズン終盤に結果を出せない時期があった。相手の対策が強まり、優勝争いの重圧がかかるなかで、森保監督は「ルーティーンを守ることを徹底した」と言う。その理由は「僕が慌てたり、ふだんと違うことを発信すると、選手は敏感なので、おかしいなと感じてしまう」から。

 泰然自若の精神を保ち、ふだんどおりに取り組めば、自ずと本来の力が引き出される。時に「相手の裏をかくことも考えた」と言うが、結論は「自分たちのスタイルを貫くこと」。ブレずにやり続けることが質の追求につながり、悲願の初優勝へとたどり着いたのだ。

 当時の状況は、今の日本代表にも当てはまるかもしれない。苦境下での振る舞いは、監督に求められる資質のひとつだろう。慌てふためくのか、ブレずにやりきれるか。成功をもたらすのは後者であることは言うまでもない。

 もはや擁護派がマイノリティなのは理解しているけど、信念の人、森保一が日本代表をさらなる高みに導いてくれると期待している。9年前の広島がそうであったように。


オーストラリア戦後、ホッとした表情でスタンドに向け挨拶をする森保一監督

ノー。予選は峠を越えたが、ベスト8を狙える戦略家だとは思えない
浅田真樹

 森保一監督を解任すべきか否か。結論から言えば、答えは「解任すべき」だ。

 もちろん、森保監督のよさがあることは認める。全体をコンパクトに保ち、プレー強度を高めて攻守を繰り返す。森保監督は就任以来、そうしたチームのベースとなる部分のレベルアップを図っており、昨秋ヨーロッパで行なわれた親善試合のいくつかでは、実際にそれが成果として表れていた。

 また、選手との良好な関係を築いている(ように見える)点も重要なポイントだ。主将の吉田麻也などは、森保監督への信頼をはっきりと口にしている。

 若い新戦力(五輪世代)の登用も、徐々に進んではいる。正直、もっと加速させてもいいとは思うが、段階的にチームに慣れさせ、出場機会をうかがっていると見ることはできるだろう。

 初戦でオマーンに敗れ、少々こじれたアジア最終予選も峠は越えた。予選突破は問題ないだろうし、ここから森保監督がどうチームを変えていくのか、興味や期待がないわけではない。

 とはいえ、日本代表の目標はワールドカップ出場ではなく、本大会でベスト16の壁を破ることのはずである。

 実力的に考えて、日本が自分たちの力を出しきればベスト8へ進出できる、という水準にない以上、一発勝負を仕掛けてワンチャンンスを狙う。現実的には、そのための策が必要不可欠となる。だとすれば、アジアレベルでさえ、これだけ戦略的な狙いがハマらない試合を見せられると、かなり厳しいと感じざるを得ない。

 11月のオマーン戦も、勝つには勝ったが、前半は相手のシステムに対し、日本の選手の配置がハマらなかった。もともと2プランが用意され、後半に"プランB"で修正が図られたということのようだが、たとえば相手がブラジルなら、日本が修正する間もなく、前半で勝負が決した可能性は高い。

 試合中の選手交代や東京五輪での采配なども含めて考えると、森保監督が"一発勝負のワンチャン狙い"に向いた戦略家とは思えない。本気でワールドカップのベスト8を狙っているのなら、新監督探しが必要だろう。

イエス。ただし、予選の全日程が終わった段階で客観的な分析と強化を
中山淳

 W杯アジア最終予選は残り4試合(来年1月27日、2月1日、3月24日、3月29日)。仮に解任の決断をするなら、日程的にも11月の連戦を終えてからが現実的だと見られていた。だが、森保一監督の進退が取りざたされていたオーストラリア戦に勝利し、11月の2試合も連勝。この結果を受けて、文字どおり、森保政権は何とか生き延びることとなった。

 そのことを考慮したうえで、今後のスケジュールを考えれば、予選中の監督交代はないはず。内容は別として、結果が出ている最中に大ナタを振るうのはマイナス面が多すぎるし、その点からしても続投は妥当と言える。反対はできない。

 ただし、予選の全日程が終わったところで、これまでの森保監督の仕事ぶりを客観的視点で分析し、評価する必要はある。そのうえで、もしグループ3位となった場合は、6月のプレーオフに向けて続投か否かを判断する。たとえ2位以上で本大会出場を決めていたとしても、本大会で指揮を執るだけの力があるかどうかを、しっかり見定めなければならない。

 2019年アジアカップ終了後、当時の関塚隆技術委員長は、大会の分析と総括を公にしなかった。実際にどこまで分析したのかさえもわからない。その結果、その後の森保ジャパンの劣化を止めることができず、今回の最終予選の大苦戦につながった。それこそが、内部チェックが機能していない証であり、田嶋幸三サッカー協会会長のいう「オールジャパン」の弊害と言える。

 現在チームを総括する立場にあるのは、反町康治技術委員長だ。北京五輪の代表監督であり、クラブではアルビレックス新潟、湘南ベルマーレ、松本山雅を指揮した現場のスペシャリストである。当然、現在の森保ジャパンのサッカーで起きている数々の問題を分析する力はあるはずで、今度こそ、過去と同じ過ちを繰り返してはならない。

 続投ならその根拠を示す必要があるし、解任なら相応しい人物をスカウトしてくる必要がある。最終的な判断は会長の専権事項だとしても、反町技術委員長は「同じ穴のむじな」であってはならない。また、そうでないことを願う。

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