「ぬるぬるドリブル」は必見。川崎のルーキー三苫薫にDFもお手上げ

 勝敗を分けたのはセットプレーだった。

 前半終了間際の44分、田中碧の右からのCKをニアサイドで谷口彰悟がヘッドですらすと、ファーサイドに詰めた三笘薫が確実に押し込んで先制に成功。57分には中村憲剛のFKをジェジエウが頭で合わせて追加点を奪い、65分にもショートCKで相手を揺さぶり、中村の左足クロスを再びジェジエウがヘッドで叩き込んで勝負を決めた。


緩急のあるドリブルで相手DFを翻弄する三苫薫

 前回対戦で連勝を止められて今季唯一の黒星を喫した名古屋グランパスを、川崎フロンターレが精度の高いセットプレーを駆使して3−0と一蹴。完全なるリベンジを果たし、同一シーズンのJ1新記録となる11連勝を達成した。

 8月23日に行なわれた前回対戦では、川崎は名古屋の堅守に大いにてこずった。攻め込みながらもゴールは遠く、逆に一瞬の隙を突かれて失点。この時も10連勝と圧倒的な強さを示していたが、徹底した対策を受けて攻撃陣が沈黙した。

 2度目の対戦となった今回も、川崎は立ち上がりから名古屋を押し込んだ。しかし、中央を固める名古屋の堅牢をこじ開けられないでいると、次第に相手にペースを譲り、ピンチを招く場面も増えた。

 そんななかで訪れた、前半終了間際のCKの場面。それまでは中村がキッカーを務めていたが、この時だけは田中がその役を担っていた。

 中村が「目先を変えた」というこのセットプレーは、蹴った瞬間に谷口がニアに動いたことからも、狙いどおりの形だったのだろう。「得点はセットプレーでしたけど、それが狙いでもあった」と鬼木達監督が振り返ったように、前回無得点に封じられた名古屋からゴールを奪うため、川崎がセットプレーを念入りに準備してきたことがうかがえる。

「セットプレーで点を獲れる印象も与えられた。ひとつの武器にしながら向上していきたい」

 谷口が言うように、流れのなかからだけでなくセットプレーでの得点力も示したことで、他チームは川崎対策にさらに頭を悩ませることになりそうだ。

 もちろん、2点目と3点目のゴールを演出した中村のキックがセットプレーの威力をさらに高めたことは間違いない。負傷で出遅れた中村は、これが今季4試合目の出場。復帰戦でもゴールを決めたように、ピッチに立てば確実に結果を残すこのベテランは、今なお川崎に絶大な影響力をもたらしている。

 あらためて存在感を示した大黒柱の活躍もさることながら、より際立ったのは大卒ルーキーの三笘だった。

 この日のゴールで、今季11得点目。得点ランクでは4位タイにつけ、日本人に限れば同僚の小林悠に次ぎ、ヴィッセル神戸の古橋亨梧と並んで2位タイ。Jリーグの新人得点記録である渡辺千真(当時横浜F・マリノス)と武藤嘉紀(当時FC東京)の13得点を上回るのも時間の問題だろう。

 三笘の特長は、なんといってもドリブルだ。巷で"ぬるぬるドリブル"と呼ばれるその突破は、スピードありきの直線的なものではなく、細かいタッチと緩急を使い分ける独特のリズムで、狭い局面をすり抜けていく。

 アウトサイドも巧みに駆使するボールタッチは相手に読みづらく、多少乱れてもググっと足を伸ばして、すぐさま自分の範囲に収めてしまう。あるいはあえて相手に向かって行き、直前で方向転換して一気に加速していく。取れると思ってアプローチに行っても、気づけば抜かれてしまう。対峙したDFはそんな感覚を味わっているに違いない。

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 そのドリブルを駆使したカットインからのフィニッシュは、今の川崎の最大の武器のひとつだろう。名古屋戦でも立ち上がりから華麗な突破で左サイドを切り裂き、意表を突くヒールパスで決定機を生み出し、優れたゴール嗅覚を発揮して先制ゴールも奪っている。

 また、三笘の優れている点は、途中出場からでも結果を出せること。今季出場20試合のうち、スタメンはわずかに5回。11得点中7点を交代出場から決めているのだ。

 疲労が増してくる後半からこの手のドリブラーが出てきたら、相手にとっては厄介なことこのうえない。自ら得点を奪うだけでなく、単騎突破で膠着状態を打破し、流れを引き寄せていく。今季の川崎の得点が後半に多いことも、このルーキーの存在と無関係ではないはずだ。

 三笘だけでなく、順天堂大から加入した旗手怜央もここまで5得点と十分な結果を残し、主力のひとりとなっている。この大卒ルーキーコンビが今季の川崎の底上げを実現しているのである。

「自分がいいパフォーマンスを出せなければ、次の試合のメンバー外になることもあり得る。それくらいいい選手が揃っている。チーム内の争いで言えば、僕がここまで所属してきたなかで一番レベルが高いかなと思います」

 在籍18年目を迎えた重鎮の中村が「歴代最高」という競争力。それこそが、Jリーグ史上最強とも言われる強さの源だ。

 24試合で21勝。勝ち点65を叩き出すまさにアンストッパブルなチームが、このまま連勝街道を突っ走ったとしても不思議はないだろう。それほどの強さが、今の川崎には備わっている。

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