CL4連覇へ前進。レアルにバランスをもたらした18歳ヴィニシウス

 チャンピオンズリーグ(CL)は、年が明けて決勝トーナメントに入ると、俄然、面白くなる。アヤックス対レアル・マドリードも例外ではなかった。時間の経過を速いと感じさせる好勝負となった。


先制ゴールを挙げたカリム・ベンゼマ(中央)とアシストしたヴィニシウス・ジュニオール(左)

 旧アムステルダム・アレーナ、現ヨハン・クライフ・アレーナと言えば、レアル・マドリードを語るときに外せない場所になる。1997-98シーズン、通算7回目の優勝を飾った舞台であるからだが、6回目とこの7回目の優勝の間には32年もの間があった。

 ユベントスと争ったこの1997-98のファイナルは、レアル・マドリードが長い低迷期から脱することになった一戦と言える。その後の20年間で重ねた優勝は7回。もしあの時、アムステルダムでユベントスに敗れていれば、レアル・マドリードの今日の栄華はあっただろうか。優勝回数はそこまで伸びていなかったような気がする。

 サッカー界の流れにも影響をもたらしていた可能性がある。当時はイタリア勢を中心とする守備的サッカー陣営が勢いを増していた時代。下馬評でも、守備的サッカーサイドを代表するユベントスが優位に立っていた。つまり、レアル・マドリードの勝利はある種の番狂わせだった。

 そしてサッカーの流れは、それを機に攻撃的サッカーに大きく傾いた。レアル・マドリードのみならず、世界のサッカーにとっても、この1997-98のファイナルは歴史的に重要な位置を占める一戦なのだ。

 その舞台にレアル・マドリードが帰ってきた。アヤックスとは2012-13シーズン以来、6シーズンぶりの対戦になるが、アレーナに立つレアル・マドリードを見ると感慨にひたりたくなる。

 CL3連覇中。しかしながらシーズン当初、その4連覇が話題になることは少なかった。ジネディーヌ・ジダンに代わって監督の座に就いたフレン・ロペテギが結果を残せず、10月下旬に解任。レアル・マドリードは最悪のスタートを切った。

 後任に抜擢されたのはサンティアゴ・ソラーリ。元横浜マリノス監督、ホルヘ・ソラーリの甥であり、2000-01シーズンから5シーズン、黄金期のレアル・マドリードでプレーした元アルゼンチン代表選手である。しかし、レアル・マドリードBからの内部昇格で、他のクラブで采配を振った経験もないこの42歳の若手監督への期待値は、当初、けっして高くなかった。

 ところが次第に成績は上昇。先日のマドリードダービーでアトレティコ・マドリードにアウェーで勝利を収め、国内リーグでは2位まで順位を回復させていた。CLでは、国内リーグで首位を行くバルセロナよりむしろ有利に見えるほどだ。CL4連覇の可能性は日増しに高まりを見せている。

 一方、迎え撃つアヤックスは、グループステージで最も目を引くサッカーをしたチームである。すなわち、アヤックス対レアル・マドリードは、まさに好調同士の一戦だった。

 とはいえ、戦力で勝るのはレアル・マドリードだ。両チームは対等ではない。ピッチ上で好勝負が繰り広げられるということは、レアル・マドリードの苦戦を意味していた。

 昇り調子のレアル・マドリードを押し込むアヤックスはまさに痛快だった。細かなテクニックを武器にしたパスコースの多いサッカー。ひと言でいえばそうなるが、その「柔よく剛を制す」姿は、とりわけ日本人の目に眩しく映った。日本が目指すべきサッカーを、エリック・テン・ハーグ監督率いる現在のアヤックスに見るようだ。

 決定力がもう少し高ければという気もするが、この悩みも日本と共通していて、それでいながら、レアル・マドリードというビッグクラブと好勝負を演じるところに、逆に大きな魅力を感じるのだ。

 判官びいきではないが、この試合で最も違和感を覚えたのが前半36分のシーンだった。アヤックスに下されたゴール取り消しの判定だ。

 CLはこの決勝トーナメント1回戦から新たにVARを導入した。さっそく稼働することになったが、いったん認められたハキム・ジエクのヘディングシュートは、VARでオフサイドと判定されて取り消されることになった。

 厳密に言えばオフサイド臭いが、従来ならセーフだったであろうシーンだ。実際、レアル・マドリード側で、ゴールの判定に抗議した選手は誰もいなかった。見た目の印象を排除し、映像に100%頼った結果の判定だが、それではサッカー独特の味は失われる。

 しかしVARの普及は止まりそうもない。そういうものだと割り切る以外ないのだろうか。

 試合のハイライトは後半15分に訪れた。レアル・マドリードに先制ゴールが生まれたシーンだ。

 左のタッチライン際を走るヴィニシウス・ジュニオールの鼻先に、左サイドバックのセルヒオ・レギロンが縦パスを送った。フラメンゴからやってきた18歳は、ボールを受けるや、マーカーであるアヤックスの右サイドバック、ノウセア・マズラウイの内側へグイグイと切れ込んでいった。そして、打つぞ、打つぞと見せかけて、カリム・ベンゼマにラストパス。完璧なアシストとした。

 ヴィニシウスは昨年の11月にBチーム経由でトップチームに合流するや、左ウイングのポジションを確保した右利きの左ウインガーだ。「典型的な」と添えたくなるこのサイドアタッカーの加入で、レアル・マドリードのサッカーは劇的に変化した。それに伴い成績も上昇。この試合でもその本領を発揮した。CL4連覇に向けて欠かせない救世主的な存在になっている。

 ジダン時代の後半はイスコが台頭。左サイドで使われたが、プレーは中盤的で、真ん中に入り込む傾向があった。バランス的に問題を抱えていたが、それでも欧州一に輝いた。クロスティアーノ・ロナウドという特別な存在がいたこともあるが、彼がいなくなった今季こそ、問われるのはバランスになる。

 そこでイスコではなくヴィニシウスを選択したソラーリ。ネイマールを放出した後、どこかイスコ的なコウチーニョを左で起用するバルセロナのエルネスト・バルベルデ監督より、バルサ的だ。現在のバルサより、そのサッカーは3FWの色をピッチに色濃く映し出している。

 しかし、その強そうに見えるレアル・マドリードに対し、アヤックスは食い下がる。後半30分ジエクが同点ゴールを叩き込んだ。結局、試合終了3分前にマルコ・アセンシオに勝ち越しゴールを許し、1-2で敗れたが、拍手を送りたくなる美しい負けっぷりだった。

 サンティアゴ・ベルナベウで行なわれる第2戦、アヤックスに逆転の目は多く残されていないだろうが、試合そのものは面白くなるはずだ。我々、日本のあるべき姿を見るような、必見の試合になること請け合いだ。

 ちなみに英国ブックメーカー、ウィリアムヒル社の優勝予想を眺めれば、レアル・マドリードの人気はまだ低く、マンチェスター・シティ、バルセロナ、パリ・サンジェルマン、ユベントスに次ぐ5番手(9倍)だ。これは「買い」ではないかと密かに思う次第だ。

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