なぜ久保建英は日本代表で“先発落ち”したのか 「点をとってなんぼ」という言葉ににじむ矜持

ボール回しする久保建英(中)ら(カメラ・宮崎 亮太) 

 日本代表は13日、北中米W杯のアジア最終予選・オーストラリア戦(15日)に向け、埼玉スタジアムで調整した。勝てば最終予選4連勝と、8大会連続のW杯出場へ大きく近づく一戦。この日取材に応じたMF久保建英は「僕らは気負う必要ない。焦るとしたら向こう(オーストラリア)。うん、僕らは焦る必要はないかな」とひょうひょうと話した。事実、日本は3連勝で勝ち点9のC組首位。オーストラリアは2位とはいえ1勝1分け1敗の勝ち点4と、日本との差は5と開いている。

 久保は9月のバーレーン戦、今月10日のサウジアラビア戦と2試合連続でベンチスタート。その状況については「試合には出たいですけど、決めるのは僕じゃないんで」と語る。シャドーではMF南野拓実鎌田大地が2試合続けて先発。またサウジアラビア戦では右ウイングバック(WB)で先発したMF堂安律が、後半開始からシャドーに。さらに後半途中には左WBのMF三笘薫もシャドーに入るなど、森保ジャパンでも最もタレントが豊富なポジションとなっている。

 現在の採用する3―4―2―1で、久保は基本的には2のシャドーのみでプレー。WBとシャドーでプレーする堂安や三笘、ボランチもこなす鎌田や、FWでもプレー可能な南野と比較すると、久保は決してポリバレントな選手ではない。さらにいまだ最終予選3試合で無失点のチームは、アタッカー陣の高い守備意識も今やひとつの武器となりつつある。

 久保はそんな現状についても、冷静に分析した。「大前提として、攻撃で違いを作れなかったら(代表に)呼ばれないと思うので。前の選手は点を取って、攻撃で違いを見せてなんぼ。その上で、最低限の守備を求められると思います。ただ、その最低限の基準が、クラブ(Rソシエダード)と代表はまた違う。いかに相手にチャンスを作らせないかに(森保)監督は今、重きを置いていると思う。そういった面では、また違った守備の仕方が求められているのかもしれない」。自身が先発から外れている今も、冷静に受け止めている様子だった。

 Rソシエダードでは前線からの的確なコース限定などで守備に貢献する久保。攻撃的なサッカーを展開する上で、前線の選手はなるべく相手ゴールに近い位置で、守備も行うことが理想的だ。しかし現在の日本代表では、自陣深くまで戻って体を張ったタフな守備も求められる。「みんながしっかり奪い切る、戻り切るっていうところはやっていると思います。そこはチームとしての一体感は素晴らしいなと思う」と久保。今年6月から採用する3バックは成長過程にある中で、自身も体を張る必要性は当然理解している。

 W杯本大会までを見据えれば、レギュラーを固定するのではなく、複数の選手達でローテーションできる状況が森保監督にとっては理想だ。決して久保も“控え”に降格したわけではない。それでも重要な試合で自分が先発としてピッチに立てるかどうか、意識しない選手はいない。先発のチャンスが与えられる可能性も高いオーストラリア戦。「点を取ってなんぼ」という言葉には、久保の矜持(きょうじ)がにじんでいた。

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