森保一監督「まず心の声を届けよう」選手に響く言葉の伝え方、糸井重里さんも納得の答えとは…特別対談(4)

スペシャル対談に臨んだ糸井重里氏(左)と森保一監督 (カメラ・小泉 洋樹)

 サッカー日本代表の森保一監督(56)と、コピーライター・糸井重里さん(75)のスペシャル対談の第4回は「言葉の伝え方や信念」。選手に響く心の声と、結果に行き着くまでのプロセスの重要性について語った。(取材・構成=星野浩司)

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森保一監督「選手に何かを伝える時、本当に伝えたいと思っていることを伝える、態度に出さないと伝わらないことは多いです。皆賢いんで。お前、またうそ言ってんだろ、みたいな」

糸井重里さん「それは、意地悪な言い方をすると、人がうそを言っているのを見るのは、俺にもバレてるぞって気持ちありますよね」

森保「あ、それは選手時代にすごく思っていました。ミーティングの時、監督は本当にそれを思って言っている時と、作って言っている時がわりと分かるなと」

糸井「伝わりますよね」

森保「なので、逆の立場になった時に、それはやってはいけないと思う。もちろん、勉強も伝え方も大切ですけど、まず心の声を届けようって心がけてますね」

糸井「いろんな心ない言葉も含めて批判があるのも、全部広がっていくという時の現象だと思って、落ち着いて見るようにしているとおっしゃっていたけど、言っている側の気持ちはこうだろうな、という想像がつくようになったから、落ち着いて捉えられる。『なんであの人はあんなことを言うんだろう』が分からない時の方がつらいわけです」

森保「おっしゃる通りです。きっとストレスがたまっているんだろうなって想像することもあります」

糸井「例えば、ここでこういう戦術を取った時に、そうじゃない意見が飛んでくるのも、やってる最中に聞こえてるわけですよね」

森保「はい」

糸井「あとで『ほら、言った通りダメだった』って言うヤツがいるだろうまでも全部分かってるけど、どっちも100%じゃないとしたら俺はこっちを選んで次を考えてみるのは、スポーツをやっている方々は当たり前にやっていることでしょう」

森保「おっしゃる通りです。プロセスを大切にしたいですし、試合に向かうためにやるべきことはいろんな選択肢がある中で、チームや選手のために勝利を目指す上で、何をしたらいいのか情報を収集しながらも、自分で一番いいと思うことをやっているつもりです」

糸井「そうですよね」

森保「周りの意見はやっている時や結果次第で聞こえてくるけど、そこには信念と勇気を持ってやっています。やっている側も見ている側、応援してくださる方々も喜んでいただける結果が出れば一番いいけど、そうでなかったにしても、そのプロセスを大切にして、その後は皆さん自由に評価していただき、それを受け取らせていただきます、という気持ちになっています」

糸井「いわゆる(サッカー)通な見方の人たちが言うことは、だいたいやっている人は知っていること。その中に新鮮な何かが交じった時には、とてもうれしいと思うんですよね。それはあるかもしれない、いつかやってみようとか」

森保「おっしゃる通りです」

 ◆森保 一(もりやす・はじめ)1968年8月23日、静岡・掛川市生まれ、長崎市育ち。56歳。長崎日大高から87年にマツダ(現広島)入団。92年に日本代表初選出。国際Aマッチ35試合1得点。京都、広島、仙台を経て2003年に引退。J1通算293試合15得点。05年からU―20日本代表コーチ。12年に広島監督に就任し、3度のJ1優勝。17年10月から東京五輪代表監督。18年7月からA代表と兼任監督。21年東京五輪は4位。22年カタールW杯は16強。26年W杯まで続投。家族は妻と3男。

 ◆糸井 重里(いとい・しげさと)1948年11月10日、群馬・前橋市生まれ。75歳。株式会社ほぼ日代表取締役社長。コピーライター、エッセイストとして幅広い分野で活躍。78年に矢沢永吉の自伝「成りあがり」の構成を担当。79年に沢田研二の「TOKIO」を作詞。「おいしい生活。」「不思議、大好き。」など西武百貨店やスタジオジブリ作品のキャッチコピーなどを手がけている。本紙でコラム「Gを語ろう」を連載中。妻は女優の樋口可南子

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