中島翔哉が語るカタール移籍の理由。PSG行きは未定、欧州への再上陸は?

44億円とも言われる額でアル・ドゥハイルに移籍した中島翔哉。彼への期待は想像以上に大きいのだ。 photograph by connect

 先行していた報道が現実となり、その決断に改めて驚きが広がった。

 今冬の移籍市場でポルトガルのポルティモネンセを離れると噂されていた中島翔哉が、カタール1部のアル・ドゥハイルへ完全移籍したのである。

 世界のサッカーマーケットは、ヨーロッパを軸にまわっている。トップレベルのプレーヤーにとって、中東は第2、第3の選択肢といった位置づけだろう。

 元スペイン代表のシャビ、元オランダ代表のウェスレイ・スナイデル、元カメルーン代表のサミュエル・エトーといったかつてのワールドクラスがリーグのクオリティを高めているものの、カタールはヨーロッパのトップリーグにまだまだ及ばない。

 ポルティモネンセで世界的なビッグクラブからも注目を集めるようになった中島の新天地としては、率直にもったいなく映る。24歳という年齢を考えても、ヨーロッパでキャリアアップを探ってほしかったとの意見は根強い。

CLよりも「サッカーを楽しめるクラブ」。

 昨年10月にナンバー本誌のインタビューを受けた中島は、今冬の移籍について「行きたいチームは、もちろん何チームかあります。ポルトガルでやる選択肢もありますし、他の国へ行くこともありますね」と、語っていた。

 複数のオファーがあった場合の判断基準については、「ヨーロッパのビッグクラブでチャンピオンズリーグとかに出るのも、それは楽しそうだなと思います。けれど、まずはやっぱり自分に合ったクラブ、サッカーを楽しめるクラブですね。自分の良さを出せるか、チームとの相性はどうなのか、そういうところを見極めるのも大事だと思います」と明かしている。

 中島が加入したアル・ドゥハイルには、アジアカップで得点王とMVPに輝いたアルモエズ・アリ、直接FKが得意なセンターバックのバサム・アルラウィ、底知れぬスタミナを持つボランチのアシム・マディボらの代表選手が所属している。また、中島と同じタイミングで、モロッコ代表の最終ライン中央を支えるメディ・ベナティアが移籍してきた。

W杯に向けてカタールでのプレーはプラス。

 2月14日から再開するカタール・スターズリーグで、アル・ドゥハイルはアル・サッドに次いで2位につけている。今シーズンのAFCチャンピオンズ・リーグ(以下ACL)には、昨シーズンのカタール王者としてグループステージからの出場が決まっている。

 カタールは2022年のW杯開催国だ。来るべき大舞台に備えてカタールでプレーすることには意味があり、ACLでサウジアラビア、UAE、イラン、ウズベキスタンといった国のクラブと対戦することは、日本代表の活動にもプラスに働く。各国の代表クラスのプレーを日常的に肌で感じ、中東でのアウェイゲームに時差や移動の影響を受けることなく参加できる。

 アル・ドゥハイルの保有戦力に不足はなく、日本代表での活躍につながる国際的な経験を積むことができる。1月に就任した新監督も凄腕だ。

 ポルトガル人指揮官のルイ・ファリアは、インテル・ミラノ、レアル・マドリー、チェルシーマンチェスター・ユナイテッドジョゼ・モウリーニョのアシスタントコーチを務めてきた。監督の肩書きを持つのは今回が初めてだが、知識と経験が豊富な43歳との出会いは、中島の成長を手助けしていくのではないだろうか。

 ファリア監督との関係については、中島も好感触を得ているようだ。

「監督とは移籍が決まる前に何度か話して、『チームに来て欲しい』と言っていただきました。普段からとても良い人で、友人のように接してくれる部分もあるので、ピッチ内でもとてもやりやすさを感じています」

PSG移籍の道筋は「断言できない」。

 中島とアル・ドゥハイルの契約は、4年半と伝えられている。しかし、カタールの投資ファンド『QSI』が所有するパリ・サンジェルマンが、今シーズン終了後の移籍市場でこの日本人MFの獲得に乗り出すのでは、との憶測も飛び交う。

 中島のマネジメント担当者によれば、「パリへの移籍への道筋がついているとは断言できない」という。ただ、カタールからもう一度ヨーロッパへ乗り込むことは、「もちろん頭に入っている」とのことだ。

 アル・ドゥハイルの社長は中島に大きな期待を寄せており、彼の将来性にも理解を示している。まずはとにかく新天地で結果を残し、そのうえでオファーが届けば中島の意思を尊重する可能性はありそうだ。

「サッカー面でも生活面でも素晴らしい」

 現地入りしてから早々に、中島はシャビと会うことができた。スペイン代表とバルセロナで一時代を築いたレジェンドは、首都ドーハに本拠地を置くアル・サッドの一員だ。スナイデルがプレーするアル・ガラファも、中島のアル・ドゥハイルもドーハをホームタウンとする。所属クラブを越えた交流が、深まっていくかもしれない。

 新天地でのトレーニングに合流した中島は、「チームメイトの全員が、初めて会ったときからウェルカムと迎えてくれて、初日からとても居心地良くサッカーができています」と話す。チームのスタイルにも、スムーズに溶け込んでいる。

「アジアカップでは日本代表の試合も観ていましたが、カタール代表の試合も多く観ていて、それも自分がアル・ドゥハイルへ移籍する大きな要因のひとつになりました。アル・ドゥハイルもそうですし、ていねいにパスをつなぐ攻撃的なチームが多いので、日本的な要素とヨーロッパ的な要素がうまく融合されていると思います。

 そのうえで、有名な選手たちが何人かいて、リーグのクオリティを上げてくれていると思います。日本ではあまりカタールについて知られていないですが、サッカー面でも生活面でも自分にとって素晴らしい国だと思います」

 アル・ドゥハイルならサッカーを楽しめる、自分がさらに成長できると見通せたからこそ、中島はカタール行きを選んだに違いない。同時に、良きアドバイザーでもある妻と愛犬との生活が、落ち着いて快適なものになるであろうことも、大切な条件だった。

 新しいチャレンジに誰よりも胸を高鳴らせているのは、他でもない中島自身なのだ。

(取材協力:コネクト株式会社)

(「サッカー日本代表PRESS」戸塚啓 = 文 / photograph by connect)

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