スポーツ

U-17フランスと日本にあった差は。個人能力以上に、適応力なのだ。

サッカーは選手の名前と個人能力だけで結果が決まるわけではない。フランス戦は典型的な“レッスン”となった。 photograph by AFLO

 U-17世代でも、フランスは強かった。

 初戦のホンジュラス戦に6-1の好発進を飾ったU-17日本代表。2戦目の相手は、同じく初戦のニューカレドニア戦を7-1と大勝したフランス。つまりグループステージ最大の難敵だった。難敵である理由は、ただ個の能力が高い選手が揃っているだけではない。チームとして戦う術を持っていたからだ。

 フランスが日本対策として練ったのは、FW久保建英とボランチ平川怜の遮断だった。

 日本の長所は組織的な攻撃と守備。ボールポゼッションで優位を取り、パスで揺さぶりながら、生まれた隙を突いて最終ラインを突破していくスタイルだ。

 この長所をフランスは熟知しているように見えた。久保と平川を徹底して潰しながら、日本が作ろうとするスペースを徹底して埋める。ボールを奪ったら、ゾーンで守る日本の守備組織をサイドチェンジと1対1で揺さぶり、選手間の距離感を保ったポジショニングを引きはがす。そして前への推進力と個の打開力をフルに発揮する展開に持ち込んでいく。これがフランスのプランだっただろう。

久保と平川を潰し、ショートカウンターで仕留める。

 フランスのCBとMFは、平川のポジショニングを常に捉え、ボールが入るとコースを限定。さらに中盤でボールを引き出してからドリブルで仕掛けたり、周りを使ってゴール前に出ていく久保に対しても、足元に入った瞬間寄せるのと、飛び込まずに裏を警戒する判断が鋭かった。

 13分の失点も日本のダブルボランチが食いついたところを、フランスの2シャドーの鋭い出足と球際の寄せで奪われるや否や、DFラインとの間の広大なスペースをフリーで運ばれる。これにより日本のDFラインは、ボール保持者のMFマクサンス・カクレと左サイド裏を狙うFWアミーヌ・グイリの両者を見なければならなくなった。

 下がりながら両方を警戒するあまり、CB2枚とサイドバックが横一線となった瞬間、カクレからの浮き球のラストパスに対してグイリが完全に抜け出され、先制点を許した。ポゼッション時のミスを狙い、ピッチの横幅をフル活用した素早いカウンターで仕留める。

 フランスの狙い通りの形だった。

日本も頭をフル回転させていたのだが……。

 日本も頭をフル回転させていたことは間違いない。久保と平川にボールを入れて、FW宮代大聖の動き出しの速さ、MF上月壮一郎の突破力を生かそうとした。29分には平川のミドル、そのこぼれ球を久保が狙ったが、立て続けに相手DFがブロック。38分にも久保と平川のコンビネーションで宮代にラストパスを送るなど、相手の包囲網に苦しみながらも、持ち味を出そうと必死にもがいた。

 後半になると、フランスはギアを上げて来た。さらにプレスとショートカウンターの強度が増したのだ。71分には右スローインから合計5本のダイレクトパスを繋がれて、最後はグイリにコントロールシュートを決められた。その際。日本はボールに触れることすらできなかった。

 それでも直後の73分に右サイドで久保が起点となり、途中出場のFW山田寛人がペナルティーエリア内で粘ったこぼれ球を、宮代が拾って突破を仕掛けPKを獲得。これを宮代が決めて1点を返したが、これ以上チャンスを作ることは出来なかった。

ずば抜けた能力の選手が、組織的に対策してくる。

 完敗と言える内容で1-2の敗戦。だが、これこそガチンコ勝負のW杯。日本にとっては悔しさの分、最高の経験を得ることができたはずだ。

 フランスは間違いなく個の能力が高かった。2ゴールを決めたグイリ、1点目をアシストしたカクレ、2点目をアシストしたFWヤシン・アドリなど、トップクラスの技術を持った選手がいた。その上で彼らは“適応力”というスパイスをフルに駆使した。

 一方、日本である。ストロングポイントはどこの位置にあって、どの選手から生み出されているのか。試合の中でどうそれらを生かそうとしているのか。それをずば抜けた能力を持った選手が、組織的に対策を講じてくる。

 それがハマれば、90分間そのまま実行し続ければ良い。途中で相手が変化をして来たら、その変化を読み取って変化すれば良い。

 フランスが日本戦で見せたサッカーは前者だった。

 だからこそ敗北を味わった00ジャパンは、フランスの姿勢に学ばなければいけない。

「経験すべてを生かさないと前進できない」から。

 彼らの個のレベルの高さは間違いない。ただ適応力の重要性をこの試合で感じ取ることができたはずだ。現にハードマークを受けた久保と平川のように、試合の中で対抗策を見出そうとする動きは見られた。ここにフランス戦の意義を見出せた。

「これまで厳しいゲームは経験してきた。その経験すべてを生かさないと前進できないし、それをチームに還元できる選手になりたい」

 大会前、平川はこう口にしていた。今、まさにその貴重な経験を得られているのだ。

 次はグループリーグ最終戦となるニューカレドニア戦。第2戦でホンジュラスに0-5で敗れており、現在2連敗で1得点12失点。日本より力が劣るのは間違いない。

 この試合にきっちりと勝って決勝トーナメントに進んだ場合、初戦はイングランド、それ以降は昨年のAFC U-16選手権準決勝で敗れたイラク、そしてブラジルやスペインなど、フランスと同等の強豪国と激突することになる。

 だからこそフランス戦での経験をニューカレドニア戦に生かし、一戦必勝のラウンド16以降でその教訓をチームとして発揮する。大会を通じてその流れを形成しなければならない。

(「“ユース教授”のサッカージャーナル」安藤隆人 = 文 / photograph by AFLO)