野球が上手くなるウオーミングアップ 応用は“マエケン体操”…プロが実践するメニュー

プロトレーナーの安福一貴さん【写真:伊藤賢汰】

プロトレーナーの安福一貴さん【写真:伊藤賢汰】

ウォーミングアップは「汗をかくだけが目的ではありません」

 ウオーミングアップは体を温めるだけが目的ではない。西武や巨人でプレーした片岡易之(当時、現・保幸)さんや元巨人の高橋由伸さんらをサポートしたプロトレーナーの安福一貴さんは、ウオーミングアップはパフォーマンスや練習の効果を上げる大切な役割があると話す。練習内容や選手に合わせてメニューを組み立てており、今月4日に指導した東京・荒川区の中学軟式野球チームでもストレッチだけで10種類ほどを取り入れた。

 安福さんは西武で最多盗塁のタイトルを4度獲得した片岡さんをはじめ、多くのプロ野球選手をサポートしてきた。選手にはパフォーマンスを向上させるための走り方や体の使い方を中心に伝えているが、練習を始める前のストレッチにも重点を置いている。

「ストレッチは静から動、段々と心拍数を上げるメニューを組むと体に負担がかかりません。徐々に野球の動きに近づけていってから練習した方が、体の動きが良くなりますし、怪我のリスクも抑えられます。ウオーミングアップは汗をかくだけが目的でありません」

 何となく体操やストレッチをしても、文字通り練習前のウオーミングアップで終わってしまう。安福さんは「複雑な動きをする時には、体を動かす準備が必要です。体が十分に動かない状態で練習してもパフォーマンスは上がりません」と力を込める。

プロ野球選手も取り入れる「TYW」…応用版はマエケン体操

 東京・荒川区の軟式野球チームで指導した際も、野球に生きるストレッチやドリルを選手に紹介し、注意点や狙いを解説した。例えば「TYW」は安福さんが長年指導している基本的なメニューの1つで、プロ野球選手も取り入れている。

 まずは両腕を地面と平行に伸ばし、体全体でアルファベットの「T」をつくる。そして、両方の肩甲骨を内側に寄せる。この時、肘を曲げずに肩を上げないようにして、肩甲骨だけを動かす。

 次に両手を上げて「Y」の形。これも肘を伸ばして肩甲骨だけを斜めに動かす。最後は「W」。両肘を曲げて、胸のやや下にセットする。肩甲骨を後ろに引く動きをするが、腕の形をWから崩さないように気を付ける。T、Y、Wそれぞれ10回ずつが目安となる。

 肩甲骨周りの柔軟性や可動域は投げる動作につながるだけではなく、走る時の腕の振りにも生きてくる。「TYW」を立体的に応用しているのが、ツインズ前田健太投手の「マエケン体操」だという。

 その他にも、安福さんは「ハーフニーリングレッグ&トランクストレッチ」というメニューも紹介した。右膝を地面に突き、左膝を立てて片膝立ちになり、後ろに伸ばした右足のつま先を右手で掴んで上に持ち上げる。左手は上げてバランスを取りながら背中を反らせる。太腿の筋肉と体幹の連動に狙いがある。

「盗塁も投球も野球はバランスの崩し合いです。ストレッチでバランスが取れなければパフォーマンスは上がりません。全てが野球につながっています」。惰性でやりがちなストレッチにも、野球が上手くなる要素が詰まっている。

○安福一貴(やすふく・かずたか) 東京都出身。プロトレーナーとして、2003年に独立。約20年間、プロアスリートをメインとして、計4000人以上のトレーニングを指導。数年間のインストラクター経験と整体学、整骨学の知識を活かし、プロトレーナーに。元巨人の高橋由伸氏、西武時代の片岡易之(当時、現・保幸)氏をはじめ、多くのプロ野球選手が師事。2016年に東京・五反田にパーソナルジム「STARTUG」オープン。2020年に株式会社スタークレス設立。(間淳 / Jun Aida)

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