元虎戦士の父は「泣いて喜んでくれた」 現役高校生モデルが歩んだ“甲子園への道”

「センバツ応援イメージキャラクター」に任命された久慈愛さん【写真:清水しんや】

「センバツ応援イメージキャラクター」に任命された久慈愛さん【写真:清水しんや】

元阪神の名手、久慈照嘉氏の長女・愛さんが選抜ポスターに

 カメラマンのリクエストに答えながら、モデルの久慈愛さんは投球フォームを披露した。右足でしっかりと立ち、バランスよく腕を振った。「毎日5分、練習してきましたから」と笑顔を振りまいた。2月に行われた第95回記念選抜高等学校野球大会「応援ポスター」「センバツ応援イメージキャラクター」記者発表会での一幕だ。

 一緒に練習に付き合ってくれたのは父の照嘉氏だった。阪神と中日で“守備の名手”として活躍。引退後も阪神の内野守備コーチを務めてきた。現在は兵庫・姫路市を拠点に活動している小中学生向けの野球教室「ダッシュベースボールアカデミー」でアカデミープロデューサーを務め、子どもたちに野球を指導している。

 ポスター起用の一報を受け「お母さんが一番に喜んでくれて、お父さんも涙してくれた」という。野球少年に教えるように愛さんに基本から投球指導し、晴れ舞台にふさわしいフォームを作り上げた。

 今回、父が愛した野球について「野球というのは1つチーム全体の目標が毎年ある。それに向かって日々、努力を積み重ね続けるという姿がかっこいい」と印象を語っていた。愛さんは11歳の頃、ミュージカル「アニー」にテシー役で出演するなど活躍していた。オーディションを実力で突破して勝ち取った役だったが、“親の七光り”という目も向けられたという。

「とにかく実力をつけないといけない、と思いました。どこにいっても野球選手の娘っていう風に見られてしまう。練習して技術を磨かないといけないなと思いました」

 そこから、歌とダンスに時間を注いだ。中学卒業後、高校野球のマネジャーになる憧れも封印し、習い事に専念した。とにかく自分を磨き続けた努力が、今回、“甲子園切符”につながった。

「センバツ応援イメージキャラクター」に任命された久慈愛さん【写真:清水しんや】

「センバツ応援イメージキャラクター」に任命された久慈愛さん【写真:清水しんや】

長女・愛さんから見たコーチの父・照嘉氏は「選手に寄り添っている」

「父が泣いていたのは、野球が仕事につながったというのもあるとは思いますが、自分が高校(東海大甲府)時代に目指した甲子園行きを決めたのを思い出したようです(笑)」

 笑顔でそう振り返ったが、父への感謝は計り知れない。普段から優しく、いつもそばで応援してくれていた。

「私とパパは『よく似ている』と家族の中ではみんな言っているんですね。私がオーディションで落ちた時も寄り添って、気持ちを汲み取ってくれました。私たち家族はいつも父の背中を見て育っていましたね」

 選手との食事の席に呼んでもらったことがある。選手との関係性を見て『パパはこうやって選手に寄り添っているんだ』と慕われている姿も目にした。生まれた時には現役を引退していたため選手時代は知らない。指導者になった父を見て、仕事へ真摯に向き合い、丁寧に野球を教えていると感じた。

「父にはずっと背中を見ているよ、と伝えていました。それがあったから、ここまで頑張ることができたという部分はあります。なので、今度はパパを超えていかないといけないと思っています」

 自身のSNSでも父の現役時に負けないほどのキレのある動きでダンスも披露している。野球選手の魅力は目標に向かって日々、努力を積み重ね続けることだと愛さんは会見で口にしたが、愛さんも同じように夢や目標に向かって、進んできたから今がある。自然とその思いは受け継がれているのかもしれない。(楢崎豊 / Yutaka Narasaki)

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