わざと落球、短い距離で送球… 狭いグラウンドでも守備が上手くなる日本一チームの工夫

守備練習を行う上一色中の選手たち【写真:間淳】

守備練習を行う上一色中の選手たち【写真:間淳】

東京・上一色中はノックで中堅手のスペースがないグラウンドで練習する

 首都圏の中学校はグラウンドが決して広くない。昨夏に全国制覇した東京・上一色中の野球部も同じ条件で練習している。限られたスペースで守備力を高めている秘密は、短い距離で強く送球する意識の徹底やバラエティに富んだノックにあった。

 東京・江戸川区の上一色中は、「環七」の愛称で親しまれる東京都の主要道路・環状七号線沿いにある。周りは住宅が立ち並び、グラウンドはノックで中堅手のスペースが確保できないほどの広さ。しかも、日によっては他の部活と併用している。

 練習メニューが制限される狭いグラウンドだが、上一色中の西尾弘幸監督は他校と比べて不利とは感じていない。全国大会常連で昨夏には日本一を果たすまでにチームを作り上げた。

「普段の守備練習ではノックで一般的な内外野の連係はできません。でも、決められたスペースでできる練習はたくさんありますから」

 グラウンド事情から、キャッチボールもノックでも遠い距離を投げるのは難しい。上一色中では近い距離で強く送球する練習を重視している。キャッチボールは40メートルの距離で、低く強く投げることが基本。ノックでも内野手は全力で送球し、試合の定位置よりも内野手と距離が近い外野手も強く投げる意識を徹底している。西尾監督は言う。

「野球の試合で長い距離を投げる場面は、ほとんどありません。40メートルを強く正確に投げられれば守備力は上がります」

ノッカーは4人 内容の違いが選手の対応力向上

 ノックのバリエーションも上一色中の特徴。チームでは西尾監督に加えて、飯塚理部長、社会人の小久保秀真コーチ、大学生の川崎湧空コーチと計4人が指導している。ノックの担当者は固定していない。そして、指導者によって内容が異なる。

 この日ノッカーをしていた飯塚部長は、ゴロを捕球してからステップを多めに踏んで送球するよう内野手に指示した。定位置でゴロを捕った三塁手はマウンドのプレート近くまでステップしてから一塁に送球。飯塚部長は「下半身の力を使って投げる意識付けです」と意図を説明する。

 また、捕球したゴロを意図的に一度落球してから拾い直して送球するメニューも取り入れた。試合で捕球ミスしても慌てずに送球する狙いのほかに、送球する手を胸の位置まで持っていく動きを増やして送球の正確さを高める目的があった。

 西尾監督がノックを担当する時は、普段の守備位置にとらわれず様々なポジションに就かせる。内野手と外野手を入れ替えるだけではなく、左利きの選手を遊撃に就かせる“常識破り”な練習をすることもある。西尾監督は「色んなポジションを守った方が、体の使い方を覚えられます」と話す。選手の可能性を広げたり、各ポジションの難しさを知ったりできるという。

 チームOBの大学生や社会人のノックは、西尾監督や飯塚部長とは内容が異なる。西尾監督は「どんなノックをするかは個々に任せています。選手は対応力が付きますし、飽きずに練習できます」と効果を口にする。グラウンドが狭くても、工夫次第で守備力は高められる。(間淳 / Jun Aida)

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