なぜ子どもたちにグラブ1000個も無料提供? 野球メーカーに募る危機感と使命感

グラブ1000個をプレゼントする代表の吉村尚記さん【写真提供:フィールドフォース】

グラブ1000個をプレゼントする代表の吉村尚記さん【写真提供:フィールドフォース】

「グリーングラブプロジェクト」野球用品販売のフィールドフォースが展開

 ボールをグラブに収める喜びを知ってほしい。野球を中心としたスポーツ用品を製造・販売する「フィールドフォース」が、少年野球の裾野を広げる新たな取り組みとして、これから野球を始める子どもたちにグラブを無料でプレゼントする。その数1000個。背景には強い決意と使命感がある。

 1000個のグラブを無料でプレゼント。気前の良いプロジェクトの裏には、フィールドフォースが力を注ぐ学童野球への強い危機感と使命感が刻まれている。

「野球は日本の国技、国民的スポーツと考えている。少子高齢化の影響もあるが、子どもたちの野球離れが加速している。せっかく学童チームに入っても途中で断念して、違うスポーツに行ってしまうのをよく目にしてきた。そこから変えていきたい」

 吉村尚記代表は野球の現状を憂いている。かつては広場や河川敷で当たり前のように目にしてきた風景が、どんどん減っている。全日本軟式野球連盟にはピーク時、全国で2万チームが加盟していた。しかし、10年前には1万5000チームに減少。さらに、昨年度は1万2000万チームを下回った。10年間で3000チーム以上が消滅したのだ。

 自身も学童野球の監督を務めている吉村代表は、競技人口の減少を肌で感じてきた。なぜ、野球少年は減っているのか。導き出した答えの1つが、「ボールを捕る難しさ」だった。「基本のキャッチボールが難しい。うまく捕れないとつまらないので、野球を辞めようとなってしまう」。そして、子どもたちが野球のおもしろさを感じられない原因にグラブがあると感じていた。

使用する豚の革、軽量化と柔らかさの秘密

 そこで開発したのが、初心者でも捕球しやすいグラブ。ターゲットは、本格的に学童野球を始めようしている子どもたちだ。特徴は「軽さ」と「柔らかさ」。フィールドフォースが販売している低学年用のグラブは通常450グラムほど。それに対して、今回の取り組み「グリーングラブプロジェクト」のグラブは約260グラムと、4割以上も軽くなっている。

 日本のグラブの主な素材となっている牛の革ではなく、グリーングラブは豚の革が使われている。牛革と比べて耐久性は劣るが、人間の皮膚に似ていて柔らかい。革を薄くしてグラブをつくることができるため、大幅な軽量化が実現した。手が小さな子どもにとって、利き手ではない方にはめるグラブの重さは、ボールを捕る確率を左右する。軽くなれば捕球しやすくなる。

さらに、柔らかさにもこだわった。握力の弱い子どもたちは、グラブからボールがこぼれることが多い。そのため、親指と小指主導でしっかり捕球できる構造にした。「最初は硬すぎてボールが捕れない」という悩みを解消する“即戦力”グラブに仕上げた。

 「グラブ1000個を無料提供」と見ると、赤字覚悟の大判振る舞いのように感じる。ただ、吉村代表は「身の丈に合ったことで、無理はしていない」と話す。長引く新型コロナウイルス感染拡大の影響で、野球をしている子どもたちの試合やチーム練習の機会が減る一方で、自宅などで個人練習する時間は増えた。フィールドフォースが販売するトレーニング用品の売り上げは伸び、利益が出ているという。

「売り上げが好調なのは、子どもたちの向上心の表れだと思っている。野球人口を増やすため、学童野球に恩返しするために還元したい。野球をやりたいと思っている子たちの流出を阻止は、最優先でやらなければいけないことだと思っている」。

新たなプロジェクトには、野球少年たちへの感謝と野球の裾野を広げたい思いが込められている。

 グリーングラブのプレゼントは、フィールドフォースのホームページにある応募フォームから申し込みができる。締め切りは9月末で、10月上旬に抽選にあった1000人にグラブが郵送される。(間淳 / Jun Aida)

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