「阪神を除くセ・リーグ5球団で争奪戦が起きる」楽天を電撃退団した田中将大の移籍先は見つかるのか…ゲームを作る投球術に通算200勝イベントのビジネス的なうまみ

 楽天の田中将大投手(36)が24日、11月30日に提出の保留者名簿に記載されず自由契約となることが球団から発表された。今季は推定年俸2億6000万円でプレーしていたが、わずか1試合登板の未勝利に終わり、球団から減額制限を超える提示があったため同意せず退団することになった。田中は他球団での現役続行を希望しており、日米通算200勝にあと3勝と迫った田中を巡っては複数球団による争奪戦が起きると予想される。

 1億円を超える減額に合意できず

 

 球界に衝撃が走った。日米通算200勝にあと3勝と迫り“ミスターイーグルス
”と呼んでもいい楽天を象徴する右腕が復帰後わずか4年でチームを去ることになったのだ。
 今季は、推定年俸2億6000万円でプレーしたが、昨年10月に行った右肘のクリーニング手術の影響で、開幕は2軍スタートとなり、1軍登板は9月28日のオリックス戦の1試合だけ。5回を投げたが6安打1三振2四球4失点で負け投手となっていた。 
 球団サイドは、野球協約で定められた減額制限(1億円以上の場合は40%で今回は約1億円)を超える減額を提示。田中の同意を得られなかったため、野球協約に従い、保留者名簿に記載できなくなり、田中が自由契約を選んだという。
 自らの公式YouTubeチャンネルを更新した田中は、球団、チームメイト、ファンへの感謝の言葉と共に「来季の契約を結ばずに新たなチームを探すことに決めました」と、他球団での現役続行を希望していることを明かした。
 そして現状をこう報告した。
「来季はどこでプレーするかというのは何もわからない状態ですけども、今の自分はいいコンディションで、いいトレーニングを積むことができています。もう来季に向けてもスタートしていますし、来季は今年投げられなかった分、さらにしっかりと投げて、戦っていきたいなという風に思っているので、引き続きしっかりと準備をしてオフシーズンを過ごそうかなと思っています」
 
 北海道の駒大苫小牧高の2年夏に甲子園で優勝し、3年夏は、斎藤佑樹の早実との決勝再試合の激闘で敗れたが、2006年の高校生ドラフト1位で、楽天、日ハム、オリックス、横浜DeNAの4球団競合の末、楽天に入団。7年間で、沢村賞を2度獲得するなどタイトルを総なめにして通算99勝をマークし、2013年には脅威の24勝0敗1Sの成績で球団初の日本一に貢献した。そのオフにポスティングシステムでヤンキースへ移籍、メジャーで78勝46敗の成績を残し、2021年1月に楽天へ電撃復帰。都内の超一流ホテルの巨大な宴会場で、三木谷オーナーが同席の上で入団会見が行われ、NPBでは史上最高額となる推定年俸9億円での2年契約にサインした。
 しかし、1年目は、4勝9敗、防御率3.01、2年目は9勝12敗、同3.31に終わったため、契約更改で、減額制限を超える4億2500万円ダウンの推定4億7500万円となり、3年目も7勝11敗、同4.91と勝ち越せず、年俸は、さらに2億1500万円ダウンの推定2億6000万円+出来高払いとなっていた。
 現役時代にタイトル獲得経験のある評論家の一人は、「報道での石井一久シニアディレクターのコメントは『減額制限を超える減俸を提示して選手の同意が得られなかった場合は保留者名簿に載せられない』となっているが、おそらくマー君の場合は、お金の問題ではないんだと思う。あくまでも推測だが、起用法や球団の期待値など、来季も楽天で気持ちよくプレーする協議にならなかったのだろう」との見解を示した。

 

 

 田中は2014年にポスティングでヤンキースへ移籍した際に7年1億5500万ドル(当時のレートで約161億円)の大型契約を結んでおり、一生食うに困らない札束を得た。1億円を超える減額が問題になったわけではないのだろう。
 では、田中が希望する他球団でのプレーは実現するのか。
 前出の評論家は「今季1試合だけの登板を見たが、全盛期のようなスピードや球威はなくなっていた。ただスプリット、スライダーの制球力、なにより投球術があるので、パワー野球でなければ通用しないパ・リーグよりもセ・リーグ向きだと思う。ソフトバンクから阪神に移籍して2年連続で2桁勝利をあげた大竹耕太郎がいい例。セ・リーグなら十分に先発ローテーで通用すると思う」という意見を述べた。
 9月のオリックス戦ではストレートの最速が147キロ。ストレートの平均球速は143キロ程度で、完全復活には程遠い内容だった。36歳の年齢からくる限界なのか、いやまだ通用するのか。意見が別れるところだろうが、ツーシームを多用するなど「打たせて取る」投球スタイルへ変貌する兆候は見えた。ゲームは作れるので、田中がYouTubeで明かしたように、コンディションが上向きで、年間を通じて健康を維持できるのならローテーとしての計算は立つだろう。
 その上で同評論家は移籍の可能性のある球団をリストアップした。
「先発ローテーが足りないのは、ヤクルト、横浜DeNAの2球団だが、巨人は菅野智之、広島は九里亜蓮、中日は小笠原慎之介がメジャー挑戦を表明していて軸となっていた先発投手が1人抜ける。もしマー君を獲得できるならその抜けた穴を埋めるピッタリの補強になるのではないか。マー君の人気や、影響力を考えると戦力以上のプラスアルファもある。通算200勝のイベントで話題も作れるしビジネス的なうまみもある。阪神を除くセ・リーグ5球団の争奪戦になると思う。ポイントは資金力とチーム環境。リスクはあるが、誠意として楽天が提示した以上の金額をベースに出来高払いをプラスして150イニングに10桁勝利をクリアすれば3億円に届くような条件を提示できなければならないと思う。そこまでやれるのは巨人か横浜DeNAくらいしかないのかもしれない」
 同氏が指摘するように“下剋上”日本一を果たした横浜DeNAも、先発で計算の立つのは、東克樹、ジャクソン、ケイの3人だけ。ヤクルトにいたっては、今季2桁を勝った先発投手は1人もいない。
 リーグ優勝した巨人も15勝3敗の菅野が、海外FAでメジャーに移籍することは、ほぼ確実で、その穴を埋めるメドは立っておらず、同じく九里が海外FA権を行使した広島、左腕の小笠原のポスティングによるメジャー挑戦を認めた中日も、マー君は、喉から手が出るほど欲しい人材だろう。
 巨人の阿部監督は、日本代表時代から、マー君をよく知っているし、中日は、ソフトバンクを退団した松坂大輔を再生させた例を持つ。果たしてマー君は来季どこの球団のユニホームを着ているのだろうか。
(文責・RONSPO編集部)

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