「その議論はコミカル(滑稽)だ」“POSスランプ”大谷翔平の打順変更を求める意見をロバーツ監督が全面否定…メッツ指揮官は「彼は危険だ」と警戒解かず

 ドジャースの大谷翔平(30)がポストシーズンで打率.222、1本塁打と“スランプ”に陥っていることが米メディアやファンの間で話題となり「1番・DH」からの打順変更が議論となっている。しかし、デーブ・ロバーツ監督(52)は「それ(議論)はコミカル(滑稽)だ」と一蹴。リーグチャンピオンシップの対戦成績を1勝1敗としたメッツのカルロス・メンドーサ監督(44)も警戒心を解いていない。

 ポストシーズンでの6安打はすべて得点圏

 

 これも10年7億ドル(約1048億円)の巨大契約を結び、前人未到の「54-59」を成し遂げた2冠王の大谷ゆえの宿命なのだろう。
 パドレスとのディビジョンシリーズの開幕戦で起死回生の同点3ランを放って以来本塁打がなく、ポストシーズントータルで打率.222、1本塁打、5打点、12三振、そしてメッツとのリーグチャンピオンシップシリーズの第1戦では刺されるなど盗塁もゼロと、“POSスランプ”に陥っている問題が、米メディアやファンの間で話題となった。
 USAトゥデイの敏腕記者であるボブ・ナイチンゲール氏が「大谷翔平の何が問題なのか。ドジャースのスターは10月の低迷から抜け出せるか」というタイトルを打った分析記事を掲載したほどだ。
 特に議論となっているのが打順問題。ESPN、CBSスポーツ、ブリチャーレポートなどの複数のメディアが、そこに注目して打順問題を取り上げた。ここまでシーズン中と同じく「1番・DH」で、ポストシーズンの7試合すべてに先発出場している大谷が放った6本のヒットは、パドレスとの第1戦の3ランを含めてすべて得点圏に走者を置いてのもの。得点圏では8打数6安打だが、一方で走者がいない場面では19打数0安打。各メディアは、これを「奇妙な分類だ」とし、先頭打者として打席に立つ機会の多い1番ではなく、得点圏に走者を置く、クリーンナップに打順を変えた方が、「閉じ込められている彼の力を最大限に引き出すことができるのは?」(CBSスポーツ)という声をあげたのである。
 1勝1敗で敵地のニューヨークに戦いの場所を移す第3戦を前にした公式会見でESPNのジェシー・ロジャース記者が「大谷は走者のない場面でヒットを打てていない。打順変更は考えているのか?」という質問をロバーツ監督にぶつけた。
「その予定はない。面白いね。(シーズン序盤には)翔平が得点圏にランナーを置いてもヒットを打てないことを心配していたのに、今は彼がヒットを打てるように塁に走者を出す方法を見つけようとしている。そうだろう?それ(打順変更議論)は少しコミカル(滑稽)に思えるね」
 ロバーツ監督は「1番」からの打順変更を全面否定した。
 ESPNによると、レギュラシーズンで大谷は90試合に1番で起用されたが、走者のいない場面での打率が.311で、得点圏打率は.308だったという
 ロバーツ監督は、大谷の数字が上がってこない理由をリーグチャンピオンシップの第2戦に先発して、2三振を含む3打数ノーヒットに抑えられたメッツの変則左腕のショーン・マナイアや、パドレスの同じく左腕のタナー・スコットのような「フォームが独特の優れた左腕」をぶつけられていることをあげ、そこに2試合で1本のヒットも打てなかったパドレスのダルビッシュ有との対戦をつけ加えた。
「ダルビッシュとの対戦でストライクゾーンを広げてしまったのには驚いたけどね」
 大谷が珍しくボール球に手を出し続けていたことを指摘した。
 USAトゥデイ紙のナイチンゲール記者は、大谷の“POSスランプ”の理由を「相手チームの徹底マークとプレッシャー」だと見ている。
 同記者によると、ロバーツ監督も、「孤立させられている」と、大谷が徹底マークにあい、できる限り走者のいない場面で打順が回るように相手バッテリーが対策を練っていることを明かし、チームメイトのケビン・キアマイアーも、こう分析したという。

 

 

「相手チームが翔平を徹底マークしているのがわかる。他のチームの大物選手と同じようにね。ピッチャーが『おい、あんな奴に負けるわけにはいかない』と話しているのが聞こえる。この時点で、彼らはスカウティングレポートに集中して、彼の弱点をどう攻めるかを確認している。彼らは『この男をどう攻略するか』のミーティングを真夜中に開いているようなものだ。相手が特定の選手だけに集中している中で結果を出すことは簡単ではないよ」
 またドジャースのキャリア15年のベテランリリーフで、ポストシーズンに7度登板しているダニエル・ハドソンも、「ポストシーズンになるとラインナップには絶対に打たせたくない選手がいるんだ。より慎重にピッチングをすることになる」とのバッテリー心理を明かしたという。
 同記事では、大谷と同じくプレッシャーを背負い、徹底マークを受けて苦しんだ過去の大物の例も紹介されている。
 シーズン最多本塁打記録を持ち、7度のMVPに輝いたバリー・ボンズは、ポストシーズンの最初の5シーズンで打率.196、1本塁打、6打点。MVP3度、オールスターに14回選出されたA・ロッドことアレックス・ロドリゲスは、ポストシーズンの最初の7シーズンで打率.230、6本塁打。今季のMVPが確実視されているヤンキースアーロン・ジャッジは、ポストシーズンのトータル49試合で打率.204しか打てていない。
 ロバーツ監督は、「(徹底マークにあって)昔のボンズやA・ロッドも苦労した。最初は自分たちにかかるプレッシャーが大きかったのだろう。だが、(レッドソックスの)オルティスは活躍したし、ボンズも、私が一緒にプレーした2002年は生き生きとプレーして桁外れの存在感を示した」と振り返り、大谷の復活を確信している。
「すべての打者がそうであるように彼にもリセットしなければならない時があった。特定の投手との対戦が、悪いクセの引き金になることもある。それを見極めてリセットしなければならない。しかし、翔平を4番や3番に打順変更することはあり得ないことだ」
 CBSスポーツは、この意見を支持。「安心していい。大谷の数字は、サンプルが増えるにつれて均等になる」と主張した。
 またナイチンゲール記者によるとメッツのメンドーサ監督は大谷についてこう語ったという。
「苦労するときもあれば、爆発するときもある。一振りだ。彼は、まだ大谷翔平だよ。リーグの最高の打者の一人。彼はエリート打者だ。彼は危険なんだ」
 日本時間今日17日の敵地でのリーグチャンピオンシップ第3戦に大谷は「1番・DH」で出場予定。メッツの先発は、今季31試合で11勝7敗、防御率3.91の右腕ルイス・セベリーノで、大谷との過去の対戦成績は、6打数3安打、1本塁打と相性のいい相手だ。

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