“ドン底”西武の新監督に就任した西口文也新監督はどうやって再建するつもりなのか…キーマン指名は0勝11敗の高橋光成

 西武の西口文也新監督(52)が11日、都内のホテルで就任会見に臨み、3年ぶりの最下位に沈んだチームの再建へ「バッテリーを含めて、まずは守備から入っていく」と守りの野球を掲げた。二軍監督から昇格する西口氏は、今シーズンの一軍を「メンタルが弱い選手が多いように見受けられた」と総括。特に自身が現役時代に背負った「13番」を受け継ぎながら、0勝11敗とまさかの未勝利に終わったエースの高橋光成(27)へ、復活への期待を込めて「言わなくてもわかっていると思う」とキーマンに指名した。

「理想の監督像はベンチでどっしりと何もせず試合を見ているのが一番」

 今シーズンの終盤に「もうあなたしかいない」という口説き文句とともに、西武の飯田光男球団本部長(58)に一軍監督就任を打診されてから約1カ月。西口氏のなかで、来シーズンの巻き返しへ向けた青写真はすでに描かれていた。
 東京都内のホテルで、飯田球団本部長が同席する形で行われた就任会見。西口新監督は「ついにこの日がきた、という思いで夢心地です」と大役拝命を待ち焦がれていたといわんばかりに、追い求めていくスタイルを明かした。
「理想の監督像はベンチでどっしりと何もせずに、試合を見ているのが一番だと思っています。その意味でバッテリーを含めて、まずは守備から入っていく。ピッチャーがしっかりと9回を抑えて、少なくてもいいので、バッターが点数を取る。自分のなかでは守りの野球が理想なので、そこに打線が噛み合ってくれればいいかな、と」
 開幕から不振にあえいだ今シーズンの西武は借金が「15」だった5月26日に、指揮を執って2年目の松井稼頭央監督(48)の休養を発表。交流戦から渡辺久信ゼネラルマネージャー(GM、59)が監督代行を兼任する形で現場復帰を果たしたものの、泥沼から抜け出せないまま借金は最大で「45」にまで膨らんだ。
 日本ハムにサヨナラ負けを喫した9月10日には、球団史上で最速となる、18試合を残しての最下位が確定。最終的には5位のオリックスに14ゲーム差をつけられた惨状の責任を取る形で、松井監督だけでなく渡辺GMの退団も発表された。
 3年ぶりの最下位に終わった最大の原因は、12球団ワーストのチーム打率.212と350得点、リーグ最少の60本塁打にあえいだ貧打にある。3年目を迎えていた二軍監督の視点から西口氏は今シーズンの一軍をこう見ていた。
「みなさんもご存じの通り、打てなかったことが今年の成績につながった。投手陣は『先に点を取られたらもうしんどい』と、野手陣には『早く点を取ってあげないといけない』という思いがあって、チグハグさがちょっと出ていたと思う」
 しかし、補強などを介しても、打線の強化は一朝一夕にはいかない。ゆえに守りの野球を掲げた西口新監督は、21年間の現役生活で通算182勝をあげ、リーグ優勝した1997年には最多勝、MVP、最多奪三振、最高勝率、沢村賞のタイトルを獲得した自身の現役時代が、指導者としていかされる部分について次のように言及している。
「自分自身はメンタル的に強い人間だと思っていますが、いまはメンタルがちょっと弱い選手が多いように見受けられるし、自分が監督を務めていた二軍から一軍に上がってもなかなか結果を残せない選手が多い。そういう選手たちが一軍で活躍してくれないと、やはりチームとしてもしんどいと思っている」

 

 

 渡辺GMが「勝負師」と命名したメンタルの強さを、脈打たせている選手たちももちろんいる。西口監督も「やはりピッチャーですね」と笑う。
「誰とはこの場では言わないけど、メンタルが強そうなピッチャーが多い」
 チーム全体が不振にあえぐ状況で10勝をマークし、187個で最多奪三振のタイトルも獲得した右腕・今井達也(26)や、同じく10勝をあげたルーキー左腕・武内夏暉(23)らを指していると見られる一方で、気になる選手もいる。
 2014年のドラフト1位で群馬・前橋育英高から入団し、西口氏が現役を引退し、球団本部編成部に所属した2016年から空き番になっていた「13」を2019年から受け継ぎ、エースを拝命しながら未曾有の不振に陥った高橋の存在だ。
 春季キャンプで右肩の張りを訴え、出遅れた今シーズンの高橋は、四死球をかわきりに失点と黒星を重ねる登板が続いた。最終的には0勝11敗と、1960年の大津守(近鉄)以来、64年ぶりにリーグワースト記録の開幕11連敗に並んだ。
 西口監督は苦笑しながら、昨シーズンまで3年連続2桁勝利をあげて、先発ローテーションの中心を担ってきた高橋へ次のように言及している。
「今年の髙橋光成の成績は、もちろん満足できるものではなかったと思います。特にひとつも勝てなかったのは、本人にも(メンタル的に)弱い部分があったと思うので、そこは乗り越えてもらって、来年は本当にやってもらわないと。光成だけで借金が……ねえ。そこは言わなくてもわかっていると思うので。やってもらいます」
 自身がそうだったように、メンタルを鍛える第一歩が日々の練習となる。15日からはさっそく、西武は新体制下での秋季練習を所沢市内でスタートさせる。
「細かいことは当日に会ってから、選手たちに話をしたい。いまこの場で言えるのは、今シーズンはこういう順位であり、成績だった点を踏まえて、秋季練習や秋季キャンプをしっかりとやってもらいます。もうそれだけですね」
 最後の「やってもらいます」の部分で、新指揮官は笑顔を浮かべながら意図的に語気を強めた。1994年のドラフト3位で立正大から入団し、引退後は先述した球団本部編成部をかわきりに二軍および一軍の投手コーチ、二軍監督をへて、一軍で采配を振るう西武での31年目のシーズンの到来を、西口新監督はいまから心待ちにしている。
(文責・藤江直人/スポーツライター)

ジャンルで探す