中日を退団した“元首位打者”ビシエドは移籍を希望するNPBの他球団で再起できるのか…獲得興味を示す球団はゼロの厳しい現実

 中日は8日、ダヤン・ビシエド内野手(35)の今季限りでの退団を発表した。ビシエドは他球団でのプレー続行を希望しているが、現段階で獲得に興味を示すチームはない。中日で9年間プレーしたビシエドは2018年に首位打者と最多安打のタイトルを獲得し、日本人選手扱いとなっているが、今季はわずか15試合の出場に留まっていた。

 昨年オフからトレードを画策していたが…

 ビシエドは、10月6日の横浜DeNAとの最終戦のセレモニーにサプライズ登場して立浪監督と共に最後の勇姿をファンに披露した。中日一筋で9年間プレーし、日本人選手扱いとなっていたが、今季はわずか15試合の出場に留まり、球団は契約更新を行わず、8日、退団が発表された。
 各紙の報道によると、ビシエドは「まだまだ現役でやりたい。来年は違うチームでプレーしたい」と他球団でのプレーを熱望したという。
 だが、現段階で獲得に興味を示している球団はゼロだ。
 実は、今季からビシエドが日本人扱いとなり、巨人を自由契約となった一塁手の中田翔を獲得したため、水面下でビシエドのトレードを画策していた。複数年契約の残った年俸が、移籍先のチームの負担になるため、中日がその一部を肩代わりしてまで“不良債権”の処理にやっきになった。一時、ソフトバンクが興味を示したが、具体的な交渉まで話は進まなかった。またファンはSNSで「外国人選手の誤算が続いた広島が、7月末の移籍期限までにビシエド獲得に乗り出すのでは?」などの臆測を書き立てたが、実際は、中日側に対してアクションもなかった。
 今季外国人野手が戦力とならなかったのは、セ・リーグでは、広島と阪神。パ・リーグでは、西武、オリックス、楽天。昨季、横浜DeNAから契約の更新をされなかったネフタリ・ソトが、今季ロッテに移籍して打率.269、21本塁打、88打点とV字回復を見せた例もあり、セからパへと環境が変われば…の期待があるが、今のところパの球団も、2度のベストナイン&ゴールデングラブ賞を獲得しているビシエドに興味を示していない決定的な理由があるという。

 

 キューバからの亡命選手であるビシエドはメジャーリーグのホワイソックスで5年プレーした後に2016年から中日に入団。開幕から3試合連続本塁打を放つ衝撃のデビューを飾り、3年目の2018年には、打率.348で首位打者、178安打で最多安打のタイトルを獲得し、ベストナインにも選ばれた。2020年には調子を落としたが、2021年に交流戦で、打率4割を打つ活躍などを見せたため、立浪監督が就任したオフに3年総額1000万ドル(当時のレートで約11億3000万円)の複数年契約を結んだ。2022年には、打率.294を残したが、リーグ最多の20併殺をマークするなど好機に弱く、成績は下降線をたどり、今季は中田翔が入団したことも手伝い、1軍で15試合、9安打、1本塁打、2打点。ほとんどを2軍で過ごし、ファームでの成績は72試合で8本塁打、31打点、打率.300だった。
 立浪監督はビシエドについてこんな指摘をしていた。
「ビシエドの突っ込む悪い癖が直らない。本人もわかっているが直そうとしない。データで弱点は、ハッキリと出ていて、相手バッテリーはピンチでビシエドを迎えてもインコースにさえ投げることさえできれば打ち取れるんです。わかっている結果をベンチから見ている我々も辛いですよ」
 この弱点がいまだに修正されていないのだ。そして本塁打数も2023年に6本、今季は1、2軍合わせて9本と激減するなど、加齢に伴いパワーも落ちている。
 Bクラスに終わった各球団は、巻き返しをかけた戦力補強を検討し始めている段階。今後どんな動きが生まれるかわからないが、日本人扱いのビシエドが、たとえ大幅に年俸、条件面をダウンして“バーゲン”したとしても、熱望するNPBでの再起には厳しい現実が待ち受けているのかもしれない。

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