「我々は大谷翔平に(死球を)ぶつけたりしていないぞ!」ド軍がパ軍に完敗したPS第2戦は放送禁止用語の罵り合い&ファン暴走の異常事態で“遺恨”が残る可能性も

 ナ・リーグのディビジョンシリーズ第2戦(日本時間7日・ドジャースタジアム)は、パドレス先発のダルビッシュ有(38)が7回1失点の好投を見せてドジャースの大谷翔平(30)をノーヒットに抑え10―2で圧勝。対戦成績を1勝1敗の五分に戻した。死球をきっかけにした激しい罵り合いや劣勢に苛立つド軍のファンがボールやビール缶を投げ込む暴走で7回に9分間試合が中断する異例の大荒れゲームとなった。緊急ミーティングを開きチームを引き締めた4番のマニー・マチャド(32)が「我々は最高の選手である大谷にぶつけたりしていないぞ!」と発言するなど、場所をサンディエゴに移す第3戦に向けて両軍に遺恨が残る可能性が出てきた。

 ボールとビール缶が投げ込まれる暴挙

 異常とも言える大荒れのゲームになった。
 不穏な空気がドジャースタジアムを包んだのは6回だ。
 ドジャース先発のジャック・フラハティが先頭のフェルナンド・タティスJr.の左の太腿に死球をぶつけた。フラハティはタティスに1回に先制アーチを浴び、3回にもレフト線二塁打を打たれていた。
 フラハティはすぐに謝罪したが、タティスは彼の顔は見ず、視線を前に向けたまま一塁に歩いた。ESPNによると、試合後にタティスは「故意に自分にぶつけたとは思わなかった。まだ試合は3-1の接戦だった」と語ったが、4番でチームリーダーのマチャドは同意しなかった。
「彼(タティス)をアウトにできないからといってぶつけちゃダメだ」
 そして第1戦で同点3ランを打たれた大谷を例に出した。
「彼らはこの試合で最高の選手を持っている。大谷翔平だ。我々は大谷にぶつけようとしていないぞ。彼を打ち取ろうとするんだ。だからぶつけちゃダメだ」
 一方のフラハティは、1-3の得点差で、8打者連続で凡退させている状況で、タティスに故意にぶつけることは「意味をなさない」と説明した。
「そう見えたことはわかるが、誰かにぶつける状況じゃない、3、4、5番と続くところだよ?ただ、1回に犯した同じミス(本塁打)をして真ん中に投げるつもりがなかっただけだ」
 だが、続くジュリクソン・プロファーが捕手ウィル・スミスに何やら文句を言ったことで、また場内に緊張感が漂い、デーブ・ロバーツ監督が思わずベンチを飛び出そうとしたほどだった。
 プロファーには三塁側へ鮮やかなセーフティバントを決められ、無死一、二塁で怒りを隠していなかった4番のマチャドを迎えた。
 フラハティは、マチャドを空振りの三振に斬って取った。ここでロバーツ監督は左腕のアンソニー・バンダに交替させたが、マウンドを降りる際に、フラハティがマチャドを「座ってろ!この野郎!」と放送禁止用語で罵倒した。
「本当に気合が入っていたんだ。プレーオフでの大きなポイントだった。そこでは、こういうことは起こる」
 マチャドも激しく応戦していた。
「これは戦いだよね?彼もチームのために戦っている。そして私もチームのためにヒットを打とうとしている」
 さらに一触即発の緊迫状態が続く。
 今度はマチャドがドジャースベンチにボールを放り込んだのだ。
フラハティは「トスじゃない。投げつけたんだ」と文句を言い、マチャドはボールボーイにボールを渡すために投げ入れただけだと言い訳をした。

 

 

 そして7回のドジャースの攻撃を前にマウンド上でダルビッシュが投球練習を行っている最中に、前代未聞の“暴走”をドジャースファンが起こす。劣勢に苛立つファンがレフトのプロファーにボールを投げつけたのだ。プロファーが審判団にクレームをつけて、ファンと口論になると、もう1球ボールが投げ込まれた。
 マイク・シルト監督が駆けつけて全野手がプロファーのもとに集結。ダルビッシュまで歩み寄り、場内が騒然となった。警備員が“犯人”を連行したが、今度はビール缶が数個投げ込まれた。
「場内にものを投げ込まないで下さい。即退場となります」
 異例の警告アナウンスが繰り返され、試合後にダルビッシュも「あんなことを経験したことがなかった」と振り返った異常事態である。
 伏線は、1回にムーキー・ベッツのレフトへの本塁打性の当たりをプロファーがスタンドにグラブを差し出してスーパーキャッチした場面にあった。プロファーは、そこで捕球を邪魔しようとしたファンと口論になっていた。
「それが私の願いの一つだった。本塁打を奪いたかったんだ。そして、プレーオフの試合でそれをやったんだ」
 プロファーは超ファインプレーを自画自賛したが、このプレーが騒動の伏線になった。外野に警備員が20人も配備されて約9分間試合が中断された。
 再開後にダルビッシュは、この騒動に動揺することもなく、走者を出しながらも、この回を無失点に抑えた。7回1失点の好投。3度対戦した大谷を、空振りの三振、一塁ゴロ、投手ゴロと封じ込んだ。
 実は7回終了後にマチャドが選手を集めて緊急ミーティングを開いていた。
 ESPNが報道したもので、タティスは、こう明かした。
「あのような瞬間にはチームとして団結しなければならないんだ。プロファーがボールを投げつけられるのを見た。彼には怒る権利があるが、我々には果たさねばならないことがあることを彼も理解している」
 そしてマチャドが開いた緊急ミーティングについて「私たちはグループとしてどういう存在なのか。そして私たちがどれだけクレイジーに変貌することができるのかを思い知らされた」と振り返った。
 マチャドの緊急ミーティングでパドレス打線に火がついた。8回にジャクソン・メリル、ザンダー・ボガーツが連続ホームラン、9回にもカイル・ヒガシオカ、そしてタティスにこの日2本目の一発が飛び出して10-2のスコアでドジャースに一矢を報い、対戦成績を1勝1敗の五分とした。
 試合後にロバーツ監督も、この異常事態について苦言を呈した。
「私はここで1000試合以上を見てきたが、こんな光景は今まで見たことがない。ファンの興奮はわかるが絶対に起きてはいけないことだ」

 

 

 一方のシルト監督は「敵意にあふれている環境だ」と警告を発した。
「敵意を持っている大観衆の前に現れた大勢の男たちが、物を投げつけられて言ったんだ。『オレたちは自分たちのプレーで勝負する』と。私たちは引き下がるつもりはない」
 遺恨が残る可能性のある両軍は、1日を挟み、8日(日本時間9日)の第3戦から戦いの場をパドレスの本拠地のサンディエゴに移す。
 ただシルト監督は「私たちはゲームを向上させる。(ドジャースと)一緒にビジネスを大切にするつもりだ」と、スポーツマンシップにのっとった戦いを行うことを宣言した。ただフラハティと激しく罵り合い、大谷の名前まで出したマチャドは.「試合では、たくさんの感情が渦巻く。特にポストシーズンでは、そういう感情がさらに渦巻くが、それがこの作品の美しさなんだ。これで終わりではない」と激しい戦いが続くことを予告している。

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