ミラクル逆転V狙う岡田阪神の連勝をハマスタでストップさせた2つの誤算…西勇の背信と中継ぎ仕様へ切り替わっていなかった“秘密兵器”ビーズリーの「頭と体」

 阪神が20日、横浜スタジアムで行われた横浜DeNA戦に6-9で敗れ、連勝が5でストップした。巨人が広島に快勝したため、優勝マジックが「6」に減りゲーム差が「3」に開いた。1点差まで詰め寄る反撃は見せたが、先発の西勇輝(33)が3回を持たずに5失点、2イニングの中継ぎ起用した“ミラクル逆転V”への“秘密兵器”ジェレミー・ビーズリー(28)が筒香嘉智(32)に2ランを浴びるなどして3失点。2人の“背信”が誤算だった。22日からの甲子園での巨人との直接対決の2連戦までに、もうこれ以上ゲーム差を引き離されるわけにはいかない。

 「3回で終わりや。もう」

 岡田監督は自らハマスタの駐車場の記者が待ち受ける場所に足を進めた。  
 言葉数は少なかったが冷静に淡々と答えていた。
「3回で終わりや。もう」
 2つの誤算があった。
 ひとつは先発の西の背信投球だった。
 その立ち上がりに梶原に対していきなり2球続けてスッポ抜けた。初回は3人に切り抜けたが、ボールはキレずコントロールも悪い。調整ミスは明らかだった。
 2回に伊藤の2点タイムリーで先取点を渡し、3回には牧、佐野に連打されてオースティンにバックスクリーンの左へ3ランを浴びた。
「少し大振りになっていたのでコンパクトなスイングを心がけた。センターへのフライを意識したことが良い結果につながった」とはオースティンの談話。そういう意識のオースティンに甘いシュートを投じては餌食にされるのも無理はなかった。
 これで阪神がオースティンに打たれた本塁打は今季7本目。何らかの対策は急務だろう。西は、ワンナウトも取れずに5失点で降板し、冨田にスイッチした。その冨田が、三者凡退に切り抜け反撃のリズムを作った。
 4回に横浜DeNAの先発の森から前川、木浪、近本の集中打で4点を返して1点差に詰め寄った。なお二死二、三塁の勝ち越し機に中野がブレーキ。センターフライに倒れた。5連勝のチームの勢いがまたハマスタで爆発しかけたが、アウェーで逆転できないことが響いた。
「追い越されへんかったからのう。序盤で4人もピッチャーを使ったらもたんわ」
 岡田監督は4回から島本にスイッチしたが、先頭の森に四球を与えて続くプロ初打席の代打東妻に初ヒット、初タイムリーを打たれ、2点差となり、5回からは石井をマウンドに送り込んだ。ベンチ入り投手は9人。6回からはラストスパート用の“秘密兵器”ビーズリーを投入した。だが、そのビーズリーが2つ目の誤算だった。回跨ぎをさせたのだが、1イニング目と2イニング目が、まるで別人だった。

 

 

 6回先頭の森に二塁打を打たれたが、横浜DeNAベンチは代打京田にバントをさせずに強行策にきた。ビーズリーは鋭く落ちる縦スラで粘る京田、続く梶原を連続三振に斬って取った。さらに“虎の天敵”牧もそのウイニングショットでショートゴロに打ち取った。横浜DeNAが見せた隙が流れを変えかけた。
 だが、2イニング目に自滅した。突然、制球が乱れて佐野を歩かせ、続くオースティンは、一塁ゴロに打ち取ったが、宮崎に外角のカットボールをライト線に運ばれた。これで3点差。そして筒香にもカウント2-1からカットボールをライトスタンドへ持っていかれた。筒香は、前の2打席で冨田、石井のストレートに差し込まれて外野フライに倒れていた。そこにカットボールは絶好球だった。ストライクが取れるボールがカットボールだったのかもしれないが、空振りの取れる“勝負球”を続けるべきだった。中継ぎ、抑えの1イニング勝負の配球と先発の配球とは違う。ビーズリーは1年目は中継ぎ登板を経験しているが、今季は12試合すべてに先発起用。調整のリズムや頭の中を中継ぎ仕様に切り替えるのに時間が足りなかったのか。
 岡田監督には誤算だったに違いない。
 8回にも二死満塁の反撃機を作った。ここも中野に1本が出なかった。しかし、前川が9回にタイムリーを放ち、無抵抗では終わらなかった。前川は4安打2打点である。打線の勢いが消えたわけではない。
 連勝は5で止まったが、考え方によっては最後まで負けずに14連勝でゴールテープを切ることなど奇跡に近い。だが、8連勝なら現実的。ここから最後まで負けずに突っ走って、あとは運を天に任せるしかないだろう。
 才木、高橋をスタンバイさせている巨人との直接対決を前に絶対に負けられない今日の先発は10日の横浜DeNA戦で5回2失点で勝利投手となった“ベイキラー”の青柳。一方の横浜DeNAは、8月6日の中日戦以来となる左腕の濵口。マッチアップとしては悪くない。そして遠くマツダでは、広島がアドゥワ、巨人が横川。巨人は先発の谷間である。

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