「ひとつのミスも許されない」オ軍が誇るサイヤング賞投手が大谷翔平に浴びた42号先頭打者アーチの1球を悔やむ…「42―42」はAロッド以来史上2人目の快挙

 ドジャースの大谷翔平(30)が28日(日本時間29日)の本拠地のオリオールズ戦に「1番・DH」で出場し、今季12勝をマークしているサイヤング賞投手のコービン・バーンズ(29)から3試合ぶりとなる42号の先頭打者アーチを放ち、3回、5回に2つの盗塁を決めて、史上2人目となる「42―42」を達成した。「1本塁打&複数盗塁」が今季3試合目。これも過去12人の記録に並び3位タイとなる記録だという。打たれたバーンズは「大谷へのひとつのミス」を悔やんだ。

 ボブルヘッド人形配布と愛犬デコピンの始球式の日に

 先着4万人に配られる大谷が愛犬デコピンを抱えたボブルヘッド人形を求めてドジャースタジアムの開場の4時間前から大行列ができていた。2000体のゴールドバージョンが混じっていることもマニア心をくすぐった。5万5290人の満員札止め。しかも、大谷と愛犬デコピンの始球式ショーが成功に終わり「ショウヘイ・オオタニ・ボブルヘッドデー」は、最高潮の盛り上がりを見せていた。だが、それもすべて大谷劇場の序章に過ぎなかった。
「1番・DH」で1回の打席に入った大谷がいきなり魅せた。バーンズがカウント1-2から投じた5球目。外角のボールゾーンギリギリのスライダー。大谷は泳いでほぼ片手で拾いあげる。打球はライトスタンドへ舞い上がり、最前列に飛び込む3試合ぶりの42号の先制ソロとなった。打球速度102.2マイル(約164キロ)、打球飛距離391フィート(約119メートル)、打球角度33度とのデータが出された先頭打者アーチは今季で4本目。マウンド上のバーンズは、ぴょんと飛び上がり、表情を一変させた。
 2021年にサイヤング賞、2022年に最多奪三振タイトル、10者連続奪三振のギネス記録まで持ち、今季も12勝をマークしているア・リーグを代表する右腕のバーンズは、その1球を「ミス」と表現した。
 ボルチモアサン紙によると自責点1で、7敗目を喫することになったバーンズは、試合後、こう悔しさをにじませたという。
「(ドジャースは)優れた打線だ。本当にミスはできない。初回の大谷への1つのミスと、3回のテオスカー(・ヘルナンデス)への1球がそうだった。それ以外のほとんどの場面で我々は低めにボールを抑え、相手の打者のコンタクトも弱かった。他のヒットは、どれも強打ではなかった。相手のコンタクトを抑えるためにできることをして、ゴロの打球を打たせることに成功していた。タフな打線に対してはそうした投球をしていかなければならない」
 大谷へのスライダーは、コースは良かったが、ボール2つ分高かった。3回にヘルナンデスに打たれた3ランもカーブが甘く入った。ゴロを打たせることを徹底していたサイヤング賞投手でさえ小さなコントロールミスが命とりになる。それが本塁打でリーグトップを独走し打点でも3点差で2位につけている大谷の凄みなのだろう。

 

大谷劇場はこれで終わりではなかった。
 前人未到の大記録へ向けて盗塁も2つ成功させた。ライト前ヒットで出塁した3回には、一死から二塁走者として三盗(重盗)を決めた。捕手の送球が左肩に当たりヒヤっとさせたがトレーナーが駆けつけることもなかった。5回には、併殺崩れで一塁走者として残り二盗を成功させた。これで「42―42」に到達した。
 MLB公式サイトによると、「42―42」は、1998年に42本塁打、46盗塁を記録したアレックス・ロドリゲス以来、史上2人目の快挙。「43-43」から、いよいよ史上初の領域に突入することになる。
 また「1本塁打&複数盗塁」は、これで今季3試合目。1900年以降で12人しか達成していない記録に並び、リッキー・ヘンダーソン(1986年に5度)、エリック・デイビス(1987年に4度)に次ぐ3位タイ記録となった。
 6-4勝利に貢献した大谷をロバーツ監督は「ショウヘイは彼のボブルヘッドナイトで本塁打を打ち、複数の盗塁を奪った。どんな大きな場面でも、彼はその機会で奮起してくれるようだ」と賞賛した。
 ロサンゼルスタイムズ紙は「ナ・リーグのMVPの最有力候補の大谷は、8月を2週間のスランプ(8月2日から19日まで7本塁打の一方でわずか打率.181)でスタートした後に大当たりで終えようとしている。この7試合で5度目となるマルチ安打で、1本塁打、1盗塁を記録するのは10試合目だった」と大谷の好調ぶりを称え、7回に打席に向かう際に満場のファンが「MVP!」と連呼していたことを伝えた。

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