巨人の外国人助っ人、想定外のシーズン途中加入…パワーより精度・柔軟性で救世主に

G復権 慎時代<3>

 新チームの船出は想定外から始まった。開幕を3日後に控えた3月26日、米大リーグ通算178本塁打の実績を持つ新外国人オドーアの退団が発表された。オープン戦の不振を受けて二軍での調整を伝えたところ、「受け入れられない」と退団の申し出があったためだ。

ヘルナンデスは交流戦から合流し、勝負強い打撃で救世主となった

 阿部監督は当初、打線の上位に門脇らアベレージヒッターを並べ、5番に万能タイプ、6、7番に長距離打者を置く構想を描いた。オドーアを獲得したのはそのためだ。外国人不在で開幕を迎えた打線は、序盤から得点力不足に悩まされることになる。

 そんな中、5月28日から始まった交流戦で救世主が現れた。ヘルナンデスだ。デビューから8戦連続安打と高い順応性を発揮。6月4日のロッテ戦で生まれたリーグタイ記録の9者連続安打も、2番ヘルナンデスから始まっている。18得点を挙げた打線は、ここから徐々に目を覚ましていった。

 球団幹部は「スカウティングは劇的に変わった」と、近年の方針転換を明かす。補強の主流はこれまで、日本人選手にないパワーを持つメジャー実績豊富な長距離砲だった。しかし、科学的アプローチによる日本の投手のレベルアップはめざましい。球威は増し、球種が多くなった変化球はキレも向上。このため、一発を打てるかよりも、打撃の精度や柔軟性を重視する。

 その象徴がヘルナンデスだ。メジャー通算14試合で0本塁打と大リーグでの実績は乏しいが、3Aでここ数年3割近い打率を残していた。バットに当てる技術を備え、変化球を見極められる。二塁打が多く逆方向にも打て、守備力もある。メジャーに上がれず、日本での成功に意欲的なハングリー精神もあった。数年前から獲得候補にリストアップ。オドーア入団後も代理人とのパイプを保ち続けており、シーズン途中のスムーズな獲得につなげた。

 後半戦から加わったモンテスもそうだ。メジャー通算1本塁打ながら、昨季と今季途中まで3Aでの打率が3割を超え、出塁率は4割あった。当初は内野手の故障に備えた補強だったが、8月にヘルナンデスが左手首の骨折で離脱すると、首脳陣に「どこでもやります」とほとんど経験がなかった外野に回り、対応力の高い打撃で打線を支えた。

 ヘルナンデスのユニホームは、離脱後の全試合でベンチに飾られた。スタッフは「チームを救ってくれた彼に対する皆の敬意」と話す。次々と穴を埋め、存在感を放った外国人野手。日本の投高打低というトレンドに合わせた補強戦略が実を結んだ。

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