泣き所だった救援陣が最大の強みに…3連投避け負担軽減、救援防御率がリーグ1位に改善

G復権 慎時代<2>

 台風10号が接近した8月30日の甲子園球場。阪神戦が中止となり、阿部監督はグラウンドでの練習前に救援陣を集めた。「投手陣の粘りのおかげでここまで来られている。残りの試合、全部が大事になってくる。覚悟を持ってやってほしい」

9月12日の広島戦で初の「回またぎ」で試合を締めた大勢

 この時点で首位には立っていたが、2位広島とはわずか0・5ゲーム差で阪神とは5差の大混戦。指揮官の 叱咤しった は、フル回転への号令だ。大勢は「どんどん投げる場面が増える。3連投、回またぎもある」と理解した。

 2週間後、守護神にその時が来た。9月12日の広島戦。3点リードの八回二死一、二塁から登板してピンチを脱すると、そのまま九回も任され、三者凡退に仕留めた。大勢は今季初の回またぎで快投。マツダスタジアムでの首位攻防戦を3連勝で締めくくり、リーグ制覇への道筋を付けた。

 昨季の救援防御率3・81は12球団ワースト。20試合以上登板した救援投手12人のうち7人に3連投があった。「最重要課題」とする救援陣再建のカギは、いかに一人ひとりの負担を軽減して息切れを防ぎ、終盤の勝負所に備えるかだった。春先から阿部監督は3連投をさせない方針を表明。杉内投手チーフコーチも「3連投は最後」と割り切り、長いシーズンを見据えた投手起用を貫いていく。

 抑えの大勢が右肩の違和感で離脱し、台所事情が苦しくなった5、6月も、代役のバルドナードやケラー、高梨、船迫、新人の西舘らを巧みに回した。3連投は5月28~30日のソフトバンク戦で登板した高梨の1度だけ。2連投の翌日はベンチ外とする運用を続けた。

 徹底した配慮は、8月12日の阪神戦が象徴的だ。前日、ヘルナンデスが守備で左手首を骨折して離脱。攻撃力が落ちて接戦となる可能性がありながら、2連投していた大勢をベンチ外とした。ベンチ外なら試合展開に神経を使わず、登板に備えて肩を作る必要もない。心身ともに負担が減る。ケラーは「首脳陣がうまく管理してくれたことが、終盤に向けて、気持ちだけではなく、肉体的な準備を可能にした」と感謝する。

 大勢は長期離脱を余儀なくされた昨季、27登板、14セーブにとどまったが、今季は後半戦でわずか1失点と、最後まで好調を維持。「大勢までつなげば、という安心感がある」と語った船迫は、火消し役として何度もピンチをしのいできた。

 今季の救援防御率はリーグ1位の2・26と劇的に改善した。リーグ優勝決定までの敗戦58試合のうち、逆転負けはわずか17試合で、昨季の30試合からほぼ半減。泣き所だった救援陣が最大の強みに変わった。(記録は9月28日現在)

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