菅野智之の復活、きっかけは昨冬の「てんぷらとワインの会食」…元エースの執念が投手陣を再建
G復権 慎時代<1>
巨人が4年ぶりのリーグ優勝を果たした。就任1年目の阿部慎之助監督の下、主力と若手、新戦力が融合し、栄冠をつかんだ。投手陣の再建や新戦力の活躍など、大混戦のペナントレースを制した要因を探る。(記録は28日現在)
「特別扱いはしない。走り込んできてほしい」。昨年12月、天ぷらとワインを楽しむ会食の中、杉内投手チーフコーチが菅野に語りかけた。春季キャンプは競争が待っている。自己ワーストの4勝でシーズンを終えたベテランに、いっそうの体作りを求めたのだった。
杉内コーチ自身、キャリア終盤は股関節痛に悩まされ、走り込みが思うようにできなかった。強固な下半身は投球フォームの安定に不可欠。スライダーの曲がり始めが早くなってしまうなど、球のキレに陰りを感じる歯がゆい記憶があった。
34歳の菅野も危機感を持っていた。けがで出遅れ、登板数は自己最少の14。「このままでは野球人生が終わってしまう」。オフに約1か月、米ハワイでの自主トレーニングで体をいじめ抜いた。ウェートトレに加え、200メートルダッシュ10本といったメニューを取り入れるなど走り込む量も増やした。迎えた2月の春季キャンプは初日からブルペン入り。球筋や力強く走る姿を目の当たりにし、杉内コーチは「2桁勝利は間違いない」と直感したという。
昨季からフォームの修正を手助けしてきた久保巡回投手コーチにも信念があった。「菅野を変えれば、チームは変わる」。3度の最多勝など高い実績を持つ菅野にさえ向上の余地があることを示す。加えて、かつてのエースが復活へ執念を燃やす姿が、若い投手陣を刺激するに違いないと考えた。
戸郷や山崎伊ら若き先発陣たちは目の色を変え、春からレベルアップを図った。下半身を強化した菅野も、球を投げ下ろすような新フォームが徐々に固まってきた。球速は150キロ台を取り戻し、スライダーやフォークボールも夏場には全盛時と遜色ないキレが戻った。
「今年は、低いところにしっかり変化球を投げ切っている。(打者は)真っすぐに見えてしまうのかな」。広島の朝山打撃コーチが語る菅野評が復活を物語る。菅野は実感を込めた。「勝負事って苦しいし、しんどい。でもそれをはねのけた人が勝つ」。チーム防御率は昨季リーグ5位の3・39からトップの2・47に改善。その中心に菅野がいた。
09/30 06:00
読売新聞