「本当に優勝したかった」プレミア12で銀メダルを外した中日・髙橋宏斗の真意
◆ 「このままだと、ボクは選ばれないかもしれません」
国際大会「ラグザス presents 第3回WBSCプレミア12」で銀メダルに終わった数日後の11月27日、先発の一角を担った中日・髙橋宏斗は愛知県内のゴルフ場にいた。所属球団の選手会ゴルフコンペに出席していた。
「表彰式が終わって、銀メダルを外したのはテレビで見ているファンの方も気付いたと思います。(巨人の)大勢さんと話していて『ぶら下げるのは何か違う気がする』という考えで一致して、首から掛けるのをやめました。ボクはそれだけ、この大会を大切だと思っていましたし、本当に優勝したかったんです」
両投手は昨年3月のWBC優勝メンバー。プレミア12を弾みに、再来年の次回WBCまで突っ走りたかった。
強化試合を含めて3試合に登板。21日の2次リーグ初戦、米国戦(東京ドーム)では先発して4イニング無失点に抑えた。8奪三振だった。
「4イニングなんですよね。もっと投げられたらよかったです。とはいえ、ストライクゾーンで勝負できましたし、多少なりとも自分の納得するボールを投げられた感覚がありました」
侍最年少でWBC優勝メンバーとなり、今回のプレミア12も最年少。飛ぶ鳥を落とす勢いかというと、本人は危機感であふれている。
「このままだと、ボクは選ばれないかもしれません。メジャー組もいます」
山本由伸や今永昇太、菊池雄星、大谷翔平やダルビッシュもいる。世界最高峰のリーグに身を投じる面々に割って入るために、どうなればいいか。自問自答が続く。
「ゾーン内でどれだけボールを動かすか、というのもひとつあると思うんです」
スプリットを見極められたら、カウントは不利になる。真っすぐに勢いがあり、カーブを有効利用できればペースを握れる。調子のいい時は打者がボールになるスプリットを振ってくれるだろう。課題は、見極められたとき。だから、ゾーン内でのボールの動きに着目しているという。
シーズンでは防御率1.38で最優秀防御率のタイトルに輝いた。2リーグ制以降は、球団最高記録。9月上旬まで防御率0点代だったのは強烈なインパクトを残した。
ユニホームを脱げば、高卒4年目の青年。ゴルフ場で着ていたウエアには何カ所にも「FUCK BUNKER」と書かれていた。
「バンカーなんて嫌だ!です。でも、入れちゃいました。何とか一発で出しましたよ」
晴れやかな笑顔で振り返る天真らんまんさはファンの心をつかむ。
「ボクなんてまだまです。NPBで1番にならないといけません」
圧倒するピッチングをどれだけ続けられるか。ステージは上がり続ける。周囲の期待は膨らみ続ける。髙橋宏斗はそれに応え続ける。
文=川本光憲(中日スポーツ・ドラゴンズ担当)
12/03 17:00
ベースボールキング