秋季キャンプで猛アピールした3年目の豊田寛…勝負の2025年シーズンへの「危機感」と「決意」


◆ 紅白戦3試合で8打数5安打をマーク

 溢れんばかりの「危機感」と「決意」が新監督の目にも留まったのだろう。11月17日、高知県安芸市で行われていたタイガースの秋季キャンプを打ち上げた藤川球児監督は、目立った活躍をした、いわゆる「キャンプMVP」について「みんなの力で勝たないといけないので。大した話じゃないと思いますけどね」と口にした上で「危機感が結果に表れたと言う意味では豊田じゃないですかね」と3年目の外野手、豊田寛の名前を挙げた。

「秋季練習から新しく来た小谷野(打撃)コーチと打撃を磨いてすごく変化が生まれて。彼の打撃の質がすごく上がってきていて。今シーズン、ファームでも良かったんですけどそれがまた良くなった」

 指揮官が振り返ったように、キャンプ中に実施された紅白戦3試合すべてで「H」ランプを灯し計8打数5安打をマークするなど、猛アピールに成功した。

 打ち上げを前に監督と話し合った各担当コーチが目立った選手として挙げた名前は誰1人重なることがなかったそうだ。その意味ではMVPは不在。キャンプには佐藤輝明、中野拓夢のレギュラーを張る実績組に加えて井上広大や前川右京といった次代の中軸を任せたい有望株も参加した。この面々も個々の課題に愚直に取り組んで成果を見せたことは間違いないが置かれた立場や来季へ駆ける意気込みがそのまま分かりやすい数字となって表れたのが豊田だった。

 3年目を終えたばかりだが、社会人を経て入団しており来季は28歳シーズンと決して若くはない。今季は6月に昇格してプロ初安打を記録したものの、7月下旬に2軍降格して以降は出番がなかった。

 4年目となる2025年シーズンがいかに重要かはこの秋の躍動を見れば分かる。新監督を迎えての新体制で会心のスタートダッシュを決めた豊田本人も「良い形で最初アピールできたと思うので。来年が勝負。しっかり(春季キャンプインの)2月1日からアピールしていけたら」とおごることなく“再加速”を見据える。

 藤川監督は注目度の高いタイガースという球団でユニホームを着ることの特殊環境を踏まえ豊田への期待を言葉に表した。

「彼は年齢が少し上ですから危機感からくる成長、特にタイガースの場合、それが重要。若い成長というのはピックアッされがちですけど、すぐ止まってしまうんで。でも苦労して努力してつかんだ選手というのは外さないんです。もしかしたら豊田はそれに当たるのかもしれないですね」

 危機感というエンジンを積んだ豊田がサクセスロードを猛進すれば、周りにいる若手への相乗効果も計り知れない。新生タイガースのキーマンになり得る存在だ。

文=遠藤礼(スポーツニッポン・タイガース担当)

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