大乱調で試合をぶち壊し…「連続押し出し四球」を記録した投手列伝


 ソフトバンク・津森宥紀が8月28日のオリックス戦で、1点リードの7回二死満塁のピンチに2者連続押し出し四球のあと、森友哉にも死球を与え、3者連続押し出しで逆転を許した。この日がシーズン44試合目の登板で、防御率1点台と首位独走中のチームを支えていた右腕の信じられないような突然の乱調……。だが、世の中上には上がある。津森以前にも何度となくあった“連続押し出し記録”を振り返ってみよう。

 NPBワーストタイの4者連続押し出しを記録したのが、DeNA・濵口遥大だ。

 2018年7月1日の広島戦、濵口は1-1の3回、四死球と鈴木誠也の右越え二塁打で勝ち越され、なおも二死二、三塁のピンチ。アレックス・ラミレス監督は、次打者、サビエル・バティスタを申告敬遠で歩かせ、満塁策をとったが、これが裏目に出る。

 濵口は西川龍馬、会沢翼に連続四球を許し、1-4、さらに投手の岡田明丈にも四球のあと、田中広輔にも四球を与え、まさかの4者連続押し出しで3回途中6失点KOとなった。

 4者連続押し出しは1947年の阪急・溝部武夫(4月20日の大阪戦の3回に記録)以来71年ぶりの最多タイ記録で、2リーグ制以降初の珍事だった(複数の投手では、1944年に産業の3投手が5月16日の阪急戦で5者連続押し出し、1試合8押し出しを記録)。

 前年、新人で10勝を挙げ、チームのシーズン3位からの日本シリーズ進出に貢献した左腕も、2年目は開幕から8試合白星なしと不振続き。1-15と大敗した試合後に2軍降格が決まり、「力不足です。自分と戦っているようでは勝てない。ピッチングを見つめ直してレベルアップして戻ってきます」と反省しきりだった。


◆18球を投げて、ストライクはわずか2球だけ

 冒頭の津森と同様、リリーフとしてフル回転しているさなかに、3者連続押し出しを記録したのが、巨人時代の久保裕也だ。

 2014年8月24日の中日戦、“悲劇”は阿部慎之助、高橋由伸のタイムリーで0対3から1点差まで追い上げた直後の7回表に起きた。

 チームでも屈指の制球力を誇る久保だったが、7回2死二、三塁から4番・平田良介にカウント2-0と苦しくなり、敬遠気味に歩かせたのが負の連鎖の始まりだった。満塁から森野将彦とアンダーソン・エルナンデスにいずれもカウント3-1から連続押し出し四球を許し、谷繫元信にはストレートの四球で2-6。打者4人に対し、18球中ストライクはわずか2球という乱調ぶりで試合を壊した。

 追い上げムードからの自滅でチームの連勝も「3」で止まり、原辰徳監督は「プロとして恥ずかしい勝負をしたし、させた。それは反省したい」と険しい表情。一方、8月だけでこの日まで6連投を含む12試合に登板していた久保は「登板過多?ないです。追い上げムードだったので、チームに申し訳ないことをした。自分自身、恥ずかしいです」と責任を一身に背負っていた。

 巨人では久保以前にも、角三男が1979年6月3日の阪神戦で3者連続押し出し四球を記録している。

 5-5の7回からリリーフした角は、8回に連打を許したものの、二死後、榊原良男に対し、初球ストライクのあと、4球続けてボールで満塁に。そして、3番・掛布雅之にストレートの押し出し四球を許して勝ち越されると、マイク・ラインバックにも2ストライクから4球続けてボールで連続押し出し、竹之内雅美にもストレートの押し出し四球と乱れに乱れ、5-8とリードを広げられた。

 さらに次打者、レロイ・スタントンに対しても、カウント3-1と苦しくなり、日本タイの4者連続押し出しと思われたが、スタントンが次の5球目を打って、遊ゴロに倒れたので、辛くも救われた。

 それから35年後、前出の久保が3者連続押し出しを記録した際に「チームでは角以来」と再びその名が取り沙汰されることになった。


◆「1イニング4押し出し」という不名誉記録

 連続ではないが、1イニング4押し出しを記録したのが、ソフトバンク時代の五十嵐亮太だ。

 2014年9月25日の楽天戦、6-4と2点リードの7回一死一、二塁のピンチで森唯斗をリリーフした五十嵐だったが、カーブは抜け、直球も逆球を連発するなど、いつもの安定感とほど遠い状態。アンドリュー・ジョーンズにいきなり四球を許して満塁としたあと、嶋基宏、桝田慎太郎と2者連続四球で、あっという間に同点。さらに二死後、岩崎達郎西田哲朗と再び2者連続押し出し四球を演じ、無念の降板となった。

 1イニング4押し出しは、1954年の高橋・田村満(6月12日の西鉄戦の8回に記録)以来60年ぶり史上5人目の不名誉な記録だった。

 それから10年後の今年9月1日、「サンデーモーニング」(TBS系)にご意見番として出演した五十嵐氏は、津森が3者連続押し出しを演じた8月28日のオリックス戦について、「津森は回の途中からでしたけれども、僕は回の頭からのピッチングですから津森の方がマシです。楽天打線はボール球を振ってくれないし、追い込んでもファウルで粘られる。これ、どうにもならなかった。ただこういうことはシーズンではたまにあるので、津森も前向きに頑張ってもらいたい」と自身の体験を踏まえて激励している。


文=久保田龍雄(くぼた・たつお)

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